2019.12.10

魅力を伝えきれていない「もったいない飲食店」が多すぎる。丨株式会社TableCheck 谷口優

「世界中のレストランとカスタマーの最良の懸け橋になる」を掲げ、レストラン予約ポータルサイト「TableCheck」や飲食店向けの予約顧客管理システム「TableSolution」を開発・運営する株式会社TableCheck。創業者である谷口氏は、どんな発想から自社サービスの立ち上げに踏み切ったのか。また、飲食店におけるIT導入の具体的なメリットや、グローバルな視点で考えるこれからの飲食業界についてなど、谷口氏の思いを語っていただいた。

株式会社TableCheck(テーブルチェック)代表取締役 谷口 優
株式会社TableCheck(テーブルチェック)代表取締役 谷口 優  飲食店の空席状況をリアルタイムで検索・予約できるサイト&アプリ「TableCheck」、飲食店向けの予約・顧客管理システム「TableSolution」は国内外で高い評価を受け、世界規模での導入が進んでいる。

■「飲食店×IT」は、最高の相性のよさ

——日本でのサービス提供を皮切りに、韓国、シンガポール、インドネシアなど、海外23カ国でユーザーを拡大している「TableSolution」そして「TableCheck」ですが、どんな発想から生まれたサービスなのでしょうか?

谷口氏:
以前、クレジットカード決済の代行企業で働いていた時、ホテル業界のネット予約化が進んでいく様子を見ていて、これは必ずレストラン予約にも普及するだろうと思ったことが、今のサービスにつながっています。24時間受付、多言語対応、省人化など、ネット予約には様々な利点があります。なかでも個人的に最も大きなメリットだと思うのが、予約時のクレジットカード情報登録によるキャンセル料の回収です。従来のレストラン予約ではキャンセルがあってもキャンセル料を回収できませんでしたが、ネット予約化することで回収が可能になりました。飲食店にとっては最も大きなメリットのひとつです。

株式会社TableCheck(テーブルチェック)代表取締役 谷口 優
——ホテル予約はもちろん、さまざまな分野でネット予約が導入されている現在ですが、飲食業界での普及に注目した理由はどんな点にあったのでしょうか。

谷口氏:
飲食店に限らず、これからは何でもネット予約する時代になっていきます。ネット予約は美容院やカフェなどにも導入が進んで、最近では大手のカフェチェーンに当社のシステムが採用されました。最初に飲食業界に注目した理由は、私自身が食べることが好きだったから。サラリーマン時代には業務の合間に、ずっとレストラン口コミサイトに書き込んでいたぐらい食べることが好きなんです。「ずっとレストランや料理のことを考えて毎日を過ごしたいなぁ」と思ったことがTableCheckの始まりですね。

——好きなことを仕事につなげた発想は、とてもシンプルなものだったのですね。いろんな飲食店がある中でも、TableCheckはホテルレストランなどハイエンドなお店への導入率が高くなっていますが、その理由について教えてください。

谷口氏:
高級店だけでなく、一般的なお店でもTableCheckの導入を目指していますが、最初に高級店に目を付けたのは営業戦略上の理由です。新規の提案先にサービスを説明する際、過去の導入事例などを挙げることがあります。そんな時、ブランド力のあるお店を事例に挙げると、やっぱり信用度が違ってきます。「あの高級店でも使っているなら、うちでも使ってみようか」となるお店は少なくありません。そういう意味で、信頼の裏付けとなるような高級店への導入に注力してきました。

株式会社TableCheck(テーブルチェック)代表取締役 谷口 優
——レストラン検索のポータルサイトである「TableCheck」だけでなく、予約顧客管理システム「TableSolution」も高い評価を得ていらっしゃいます。飲食店がシステムを利用するメリットについて教えてください。

谷口氏:
これまでの紙台帳を使った管理では、顧客情報の共有がうまくできなかったり、伝達ミスなどの問題がありました。お客様からうかがったアレルギーの有無などの情報共有が図れず、トラブルの原因となるリスクもあります。こうした問題を解決できるだけでも、IT化のメリットです。さらには、多言語対応によってインバウンド需要の取り込みにつながったり、キャンセル料の回収もできるなど、さまざまな効果を得ることができます。

——やはりキャンセル料がきちんと回収できる点は、本当に大きなメリットといえそうですね。

谷口氏:
キャンセルポリシーなどの利用規約に同意したうえで予約するお客様ばかりになるため、キャンセルの確率もぐんと減らすことができます。電話予約と違って、ネット予約であれば文字で規約を明確に記載することで、確実に情報を伝えることができ、不要なトラブルを回避できる点も利点です。

株式会社TableCheck(テーブルチェック)代表取締役 谷口 優

■スマホが使えれば、IT化は誰にでもできる簡単なこと

——多くのメリットがあるネット予約ですが、飲食業界での導入率はまだまだ高いとは言えません。どのような課題があるとお考えですか?

谷口氏:
1つは、ITを取り入れることへの抵抗感があると思います。どうしてもデジタルなものが苦手な店主の方には、私たちも無理にはお勧めしません。ですが、日常的にスマホを使っている方であれば、スムーズなシステムの導入と運営が可能です。お店にとっても、お客様にとってもメリットの多いネット予約が普及するように、私たちもさらに新しい機能を考えたり、もっと便利なサービスを実現していく必要があると思っています。

——具体的には、どんなサービスを実現することができるでしょうか。

谷口氏:
レストランを探しているお客様に対しては、個人の嗜好性や好みにマッチした情報を提供する1to1レストラン発見サービスが挙げられます。現在、主流となっているレストラン検索サイトは、掲載店が支払う広告費による収益を目的としたビジネスモデルです。そのため、検索結果の上位に表示されるのは、多額の広告費を払っている飲食店になりますが、その情報をユーザーが求めているとは限りません。一方で、私たちが目指しているのは、レストランとユーザーの最適なマッチングを図るプラットフォームの構築です。個人の好みや過去の利用履歴などのその人の行動データをもとに、ユーザーが本当に必要としているレストラン情報を表示させるような仕組み・サービスを開発中です。

株式会社TableCheck(テーブルチェック)代表取締役 谷口 優
——社内には海外出身のエンジニアも多く、非常にグローバルな雰囲気です。また、事業の海外展開にも注力されていますが、どういった戦略を立てていらっしゃるのでしょうか。

谷口氏:
人口減少が進む国内だけでは、どんどんマーケットは小さくなっていきます。これからは世界に向けてビジネスを仕掛けていく必要があると思い、創業当初から社内の公用語は英語に、TableSolutionも多言語対応にし、グローバル展開することを決めていました。日本の食文化のレベルは世界でもトップクラスです。食に関わるビジネスであれば、世界でも十分に通用すると考えています。

残念ながら、日本からはGAFA(ガーファ。Google、Amazon.com、Facebook、Appleの米国の主要なIT企業)のようなテックカンパニーが生まれていません。かつては世界の時価総額トップ50に、いくつもの企業が名を連ねていた日本ですが、今はトヨタ自動車だけという状況です。このままでは、世界における日本の存在感がどんどんなくなっていってしまいます。世界に通用するテックカンパニーを目指して、さらなる事業展開を手掛けていきたいと考えています。

株式会社TableCheck(テーブルチェック)代表取締役 谷口 優

■グローバルな視点を持てば見えなかった世界が見えるはず

——飲食業界でもインバウンド需要の取り込みなど、海外を意識することが必要となっていますが、アドバイスできるとしたらどんなことが言えますか?

谷口氏:
まずは先入観を捨てることです。これまでは日本人を相手に商売をしてきた飲食業界ですが、英語での接客対応や案内を積極的に進めている店舗が着実に成果を残していらっしゃいます。客単価を見てみても、日本人よりもはるかにインバウンドのお客様のほうが高くなっています。中国をはじめとしたアジア圏の人が、何万円もするワインをどんどん消費しているような時代です。

そういう意味では、飲食店が生き残っていくためには海外ゲストの受け入れ、インバウンド対策は必須と言えるでしょう。ネット予約を導入すれば、英語や中国語など多言語対応も簡単にできる上、時差に関係なく24時間いつでも予約受付が可能です。しかもキャンセル対策でカード情報の登録を必須にすれば、確実性の高い予約だけを集めることもできます。もちろんお客様にとっても利便性が高まり、良いことばかりです。こうしたいろんな利点を提供できるという点が、私たちITサービスを手掛ける企業の価値。もっともっと飲食業界に向けてお手伝いできることはたくさんあると思っています。

株式会社TableCheck(テーブルチェック)代表取締役 谷口 優
——飲食業界に限らず、IT分野で目標にしているサービスや技術、企業はありますか?

谷口氏:
やはりGoogleのサービスは群を抜いていると思います。Googleで検索するだけで、世界中のレストランの店名や写真、口コミ情報を瞬時に知ることができます。「Googleマイビジネス」に登録しておくだけで、広告費用なんか払わなくても自分の店をたくさんの人に知ってもらえて、Web上の情報もどんどん増えていくわけですから、利用しない手はないと思います。今の広告収入を前提とした日本の情報サイトではなく、本当にユーザーが必要とする情報が正しく手に入るサービスこそが、これから生き残っていくでしょう。

——日本の飲食店が、グローバル化するマーケットの中で生き残っていくには、どんなことが必要だと思いますか?

谷口氏:
まずは英語で情報を発信することでしょう。今、外国人観光客から評価されている日本の飲食店は、間違いなく英語対応をしています。英語による情報提供が充実している店舗ほど、集客に優れていることは明らかです。日本には海外から評価されそうな飲食店が実に多くあります。にもかかわらず多言語対応していない現状に対して、本当にもったいなさを感じます。海外と比べて日本の食は、サービスも含めて明らかに高いレベルにあります。日本のように、どこのお店に行っても素晴らしい料理とサービスを楽しめる国なんてありません。ですから飲食業界のみなさんは、自信を持って海外のお客様を迎え入れてほしいですね。それができるだけで、今までとは全く違う世界が広がっていくと思います。


編集後記

「24時間自動予約受付による取りこぼしの防止」「便利な顧客管理」「ドタキャンの防止」など、飲食店にとっていろんなメリットをもたらすネット予約サービス。導入に抵抗を感じる飲食店オーナーも多いと思うが、ITに詳しくない飲食業界の方々を想定して、手軽に導入できるサービスがすでに始まっている。さらにその先には、インバウンド需要をはじめとしたグローバルへの対応が飲食業界には求められている。事実、いち早く英語などの多言語対応に着手した飲食店が、着実に成果を残しつつある。世界に誇れる日本の食文化だけに、海外に向けて情報を発信するだけでも、高い評価が得られるのだ。

谷口氏のコメントの中でも特に印象に残ったのが「もったいない」という言葉。自らの魅力を発信できていない飲食店の多さは、業界全体の課題と言えるだろう。2020年には、さらに増えるインバウンド需要。日本の飲食業界が成長するうえで、大きな分岐点になる予感がする。

場所提供:スタートアップカフェ大阪(関西大学梅田キャンパス「KANDAI Me RISE」内)

(聞き手・編集:菊地由華、書き手:上田洋平、写真:岡 隆司)