2019.11.15

ルレ・エ・シャトー 海洋保護に向けた「vision for the sea」発表レポート[後編]

2019年10月ルレ・エ・シャトー(※1)が世界中で提唱している海洋資源保護活動「vision for the sea(ヴィジョン・フォー・ザ・シー)」。

これを日本でも精力的に発信、活動していこうと、ルレ・エ・シャトー本部代表のフィリップ・ゴンベール氏、副会長であるオリヴィエ・ローランジェ氏(※1)が来日し大阪で講演を行った。

その模様をお伝えした前編に続き、ルレ・エ・シャトー日本支部副会長を務める山口浩氏、シーフードレガシー社の代表 花岡 和佳男氏、オリヴィエ・ローランジェ氏の3名によるパネルディスカッションの様子をお届けする。

※1:ルレ・エ・シャトー
1954年にフランスで発足された、一流のホテル、レストランで構成される世界的な非営利会員組織。創設当時より、厳格な審査をクリアしたホテルとレストランのみに加盟を認めている。世界62ヶ国、約580のホテルとレストランが加盟している。

シーフードレガシー代表取締役社長花岡 和佳男氏、神戸北野ホテル総支配人・総料理長山口浩氏、Olivier Roellinger(オリヴィエ・ロランジェ)写真左:花岡 和佳男
株式会社シーフードレガシー代表取締役社長。同社は、持続する豊かな海の実現を目指し、日本のビジネス環境に適った国際基準の地域解決策をデザインする、サステナブル・シーフードを専門とするコンサルティング・ファーム。
写真中央:山口浩
滞在しながら洗練された美食を楽しめる都市型オーベルジュ「神戸北野ホテル」総支配人・総料理長。ルレ・エ・シャトー日本支部副会長。>>山口さんの単独インタビューはこちら
写真右:Olivier Roellinger(オリヴィエ・ロランジェ)
ブルターニュ出身のロランジェ氏は最初地元カンカルにて海の幸を料理で表現するレストランを開業、ミシュランの三つ星目下疎くしているが、2008年に星を返上してからは賞を通じた社会活動を様々に展開している。>>オリヴィエ・ロランジェさんの単独インタビューはこちら

かけ離れすぎている未来の理想と今の現状を近づけるための指針

山口氏:
みなさま、本日はこの会場に集まっていただきまして、どうもありがとうございます。

オリヴィエさんが20年前から始めていた、サステナビリティに取り組むこのプロジェクトに対して、日本支部として動くようになったのは、10年程前です。「この問題を真剣に考えてみてはどうか」と本部から投げかけていただいたことがきっかけでした。

神戸北野ホテル総支配人・総料理長山口浩氏写真

山口氏:
現在の日本の漁業と世界の標準的な漁業は、大変かけ離れています。

そのギャップを埋めていくことが非常に困難であるがゆえに、我々も、私も一人の料理人として、それを後回しにしてきたという状況でした。

多くの料理人から話を聞きましたが、ある日、金沢で寿司屋を営む男性が「僕はもう1年の半分はオーストラリアで仕事をする」と言い始めました。それは何故かと尋ねますと「市場に魚がいない」と言うのです。

この他にもいろいろな方と一緒に、活け締めのビデオを作ったりさせていただきましたが、本日も出席されている漁師の藤本さんなどからもお話をお聞きして、漁業の成立自体が急速に難しくなっていっていることがわかりました。

そういった状況のなかで、我々料理人として、そしてルレ・エ・シャトーの日本支部として、花岡さんと一緒に1年程かけて、今、みなさまのお手元にあります行動基準を作成しました。

神戸北野ホテル総支配人・総料理長山口浩氏

山口氏:
この行動基準には、かけ離れすぎている未来の理想的な状況と現状を、どのようににすれば近づけていけるのかということについて書かれています。

ある意味で緩い行動基準なのですが、サステナビリティという考え方が多くの人々の意識の中に浸透し、根付いていけば、海洋国である日本は間違いなく海の先進国になりえます。そのきっかけを作るのが、料理人のひとつの役割ではないかと日本支部で話し、今日もメンバーであるシェフや旅館の女将にも参加していただいています。

ルレ・エ・シャトーの日本支部としてひとつの大きなムーブメントを作っていきたいと考え、こういったセミナーを開催し、オリヴィエさんと花岡さんに来ていただいたという次第です。

シーフードレガシー代表取締役社長花岡 和佳男氏写真

欧米と日本の比較ではなく、日本で始まったことに目を向ける

花岡氏:
ありがとうございます。本当にその通りですね。
欧米ではサステナビリティを求める活動は、15年前もしくは20年前から始まっています。

オリヴィエさんもその先駆けの1人として活躍されていますが、15年もしくは20年の時を経て、日本ではようやく始まっているという現状があります。

そのため、欧米と日本の現状を比べるのではなく、日本で始まったことに目を向けたい。その加速度は、欧州で始まった時のものと比べてみると、相当な勢いで進んでいると私は実感しています。

やはり一人ひとりではなく、みんなで一緒に頑張るというのが大切なのであって、ネットワークを通じて全員で取り組まれているルレ・エ・シャトーの活動には大きな意義があると思います。

山口氏:
今までオリヴィエさんが行ってきた活動は、どちらかといえばアカデミックな活動です。

サステナビリティは、SDGs(※3)との関わりが深くなっていきますし、当然そうならなければなりません。SDGsは日本政府からも1兆円の予算がついています。

ソーシャルグランシェフという形で料理人が、世界、そしてもちろん日本にどのように文化的に貢献できるかということが、ひとつのアクションコードの根幹になるのではないかと考えています。

※3:SDGs
2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標

花岡氏:
では、早速ですが、そのアクションコードをご紹介いただいてもよろしいでしょうか。

神戸北野ホテル総支配人・総料理長山口浩氏写真

我々には社会に文化的に貢献できる可能があることを、まず行動指標で伝えたい

山口氏:
はい。

1. 科学的根拠に基づいた管理計画を実施し、測定可能で独立した透明性のある進歩を遂げている漁業者および養殖業者、積極的な調達によりサポートする。

2. 製品の厳格なトレーサビリティを確立し、地域と季節に応じて漁獲・収穫を行い、その方法と産地に関する情報を開示している小規模、および職人的な漁業者・養殖業者からの調達を優先する。

3. 問題解決に向けたソリューションを見つけるための対話を選択することにより、コミュニティの調和を維持。特定のサプライヤーからの調達を停止するのではなく、進歩に向けたあらゆる要望をサポートする。

4. それぞれの地域独自の伝統やアイデンティティを尊重する一方で、海洋資源の無責任な利用を徹底的に抑制(産卵を済ませた成魚のみを調達し、無駄を削減するなど)。

5. お客様、学生、未来のシェフに海の現状を詳しく伝える。海を守るために行動を起こしている漁師や海産物養殖業者の取り組みを認知する。

6. 組織に属していない専門家をゲストに招き、ルレ・エ・シャトー日本支部メンバー向けのワークショップを開催。海、漁業、養殖業者に関するメンバーの知識を深めるとともに、自らが選択した調達方法が、海の生態系に与える影響を分析、理解、改善する。

これらをアクションコードとして掲げたのは、冒頭にも申し上げましたように、我々に可能であることを、まず行動指標としてあげることによって、共鳴してくれる方を増やそうという目的によるものです。

先日、オリヴィエさんと明石浦漁港に行ったのですが、我々の想像する以上に、個々で漁業というものを守ろうとしていました。

しかし漁師個人の力だけでは難しかったり、少し空回りしていたりする部分があるため、実現できていないところがあります。ただオリヴィエさんはそこに大変大きな可能性を感じられたということです。

我々の知らない日本の姿が地方には多くあるのだろうと、実感も含めて感じています。

シーフードレガシー代表取締役社長花岡 和佳男氏、神戸北野ホテル総支配人・総料理長山口浩氏、Olivier Roellinger(オリヴィエ・ロランジェ)対談風景写真

明石の漁港見学によって得た手応え

花岡氏:
オリヴィエさんにも伺いたいと思うのですが、個人個人で頑張っていても全体として改善できない現状を見て、海外の漁業と比べ、どのようにしたら改善していくことができるのか、他の仲間との共通意識を生むことができるのか、その辺りをお聞かせいただけますでしょうか。

オリヴィエ氏:
先程も少し申し上げましたが、明石の漁港は、大変に印象深い場所でした。

それはどのようなことだったかというと、それぞれの人々の中にまさに意識の高まりが感じられたのです。漁師という小さな単位は職人的な仕事をしています。それは私たち料理人も同じことで、ある意味、レストラン業界は職人の集まりであるといえます。そのため、私にとって非常に身近に感じられる部分がありました。

明石の漁港だけでなく、日本の他の漁港においても行われていることだと思いますが、漁港本来の役割と責任を果たしていると感じました。それはどのようなことかというと、殺した魚をできるだけ価値を落とさずに、より高く売るということです。それによって漁師が必要以上に獲らなくて済むようになります。
例えば100匹売って、10,000円稼ぐのと、10匹売って10,000円稼ぐことができるのであれば、後者は海洋資源へのダメージを10分の1にする事ができます。

消費者は「魚が高いと困る」と言うかもしれませんが、魚を安く売るためには、やはりより多くを捕らなければいけません。その為により遠く深い海で、まだ小さい魚を獲るようになってしまいます。消費者が魚を安く買うことを望み続ければ、将来的に魚がいなくなってしまうのです。

明石での体験によって、職人的な漁業モデルこそが本来のあり方であると同時に、将来的なビジネスモデルの手本にもなりうるのだと考えさせられました。

シーフードレガシー代表取締役社長花岡 和佳男氏写真

花岡氏:
ありがとうございます。

僕も頻繁に海外に出張に行きますが「日本の魚って美味しいのに安いな」と強く思います。
おっしゃる通り、薄利多売、大量生産、大量消費モデルだからこそ、遠く深くの海まで魚を獲りにいかなければならないという悪循環になっています。そのために、地域の漁業者や漁業従事者の数自体が減っているという、負のスパイラルの中にいると感じています。

しかし海外の多くの地域とは異なり、日本では、沿岸小規模漁業者が全体の7割から8割を占めている上、本当に多様な漁法が存在しています。

そこにはやはりストーリーがあり、地域に密着している点、そして納得できる点も多くあるため、そういったものをどのように残していくかがこれからの日本ができる、そしてやるべきサステナビリティの追求方法なのではないかと感じています。

山口さんは明石浦でいろいろな方々と具体的なお話しをされたとのことですが、サステナビリティの取り組みについて、どのようなアプローチを取ればよいのか、生産者や漁業者のお考えやお声をご紹介いただけますでしょうか。

神戸北野ホテル総支配人・総料理長山口浩氏

自分たちの浜の未来をどのようにしたいのか

山口氏:
漁師の方々が、実際に魚が減っているということを言えない状況にあるんだなというのがひとつありました。さらにそこに、サステナビリティというのがくると、どう感じるかというと「また規制かよ」という考え方になるのです。

サステナビリティは規制につながるものではなく、漁師の方々の生活をよくしたいとか、資源を守りたいという思いによるものなのですが、そこが少しわかりにくいのかなと実感しました。

自分たちを阻害するものではなく、自分たちの力になる取り組みであることを伝え、第三者や料理人が手を組み、行政や大手企業の力を貸してもらえるような状況をつくっていくべきだなと感じました。

花岡氏:
それも本当にその通りだなと思います。
今回発表されたアクションコードもそうですが、この魚は扱わないと決めてしまうのではなく、悪化した資源状態をどのように良くしていくか、という考えをもとにする進め方は日本に合っているし、生産者を否定するのではなく、サポートとするというところにつながっていくと思います。

先程、私のプレゼンテーションで漁業法改正についてお話ししましたが、漁業法は法律なので規制を入れないといけません。ただ現段階では、この規制の対象となるのは大企業のみです。ひとつの法律で多様な沿岸の小規模漁業者をコントロールすることは難しい状態です。
だからこそ、今はチャンスなのです。

各地の沿岸漁業者の方々が、自分たちの浜の未来をどのようにしたいのか、どのような漁業にしたいのか、ビジョンを描き、多様なステークホルダーと共に考えていくべきです。
政府からのトップダウンではなくボトムアップ、逆のアプローチをしていくことが、今非常に大事なところなのではないでしょうか。
今回のアクションコードはその動きにバチッと当てはまっているなと感じました。

神戸北野ホテル総支配人・総料理長山口浩氏写真

 

山口氏:
後先になってしまいますが、今年の5月、世界の60ヶ国が加盟しているルレ・エ・シャトーの世界料理人協議会にこのアクションコードを持っていきました。

自然を守るサステナビリティと、料理人が美味しいものをつくるだけでなく、文化を守る社会的な働きもしなければならないということの、2本の柱で発表をして承認をいただきました。

そして日本支部のみなさんの了解を得て、今回の第1回目のサステナビリティのカンファレンスの活動につながりました。

こうしたいろいろな成功事例を、スター漁師の方々がたくさん作っています。そしてすべての漁師の方々が自分もスターになるんだと、サステナビリティが広がるように、今日も各支部、今回は北は北海道から南は沖縄まで、我々のプロパティの方々に参加していただいています。

日本の海を守るということは、今まさに始まったところですが、地元に帰って啓蒙し、意欲的に活動していただきたいというのが、ルレ・エ・シャトーの日本支部としての考え方です。

Olivier Roellinger(オリヴィエ・ロランジェ)写真

地球に生きるすべての人たちがよりよく食べること、それを可能にすることへの責任

花岡氏:
ありがとうございます。
こういったプラットフォームで、海に特化したアクションコードが記者のみなさまに発表されるのは、おそらくこの場が日本で初めてです。

最後に、おふたりから一言ずついただけますでしょうか。

オリヴィエ氏:
今、ここにいることを大変嬉しく思っています。ただ嬉しいのではなく、若い世代のこと、そして他の料理人のことを考えて、大変嬉しいと感じています。

私たち、ルレ・エ・シャトーに加盟している料理人だけで何かができるとは思いません。ただ私たちは、世界のベストなレストランに所属しています。その料理人たちが何か声を上げれば、小さいことではありますが、一石を投じることになるのではないかと思います。
私たち一人ひとりがそういった意識を持つことにより、大地、そして自然の悪循環の反対、良い方向へ回っていくような環境がつくられるのではないかと思います。

特に今回大事だなと思ったのは、工業的な社会、利益を何よりも重視するという考え方を捨てなければならないということです。
自然は、いつでも私たち人類に生きる糧を与えてきました。地球に生きるすべての人たちがよりよく食べること、それを可能にすることが最終的な目標です。この目標のために、私たち料理人が持っている責任は大きいと考えています。

最後に、アリストテレスの愛についての定義に触れて、この話を終わりにしたいと思います。料理を提供するということは、相手の生命を1日でも、少しでも長引かせるということだと思います。「愛は、他者に対してよきことを望むことだ」というアリストテレスの考えによると、料理人のしていることは、一種の愛情を示す行為ではないでしょうか。

哲学者のアンリ・ベルクソンの言葉に「未来はただ単に別の場所からやってくるものではなく、私たち全員が共に作り上げるものである」という言葉があります。

シーフードレガシー代表取締役社長花岡 和佳男氏、神戸北野ホテル総支配人・総料理長山口浩氏、Olivier Roellinger(オリヴィエ・ロランジェ)登壇写真

花岡氏:
ありがとうございます。オリヴィエさんのご意見は深いですね。

確かに僕たちははつい目先のことばかりに考えてしまいがちだけど、海は人類平等にアクセスできる場所であり、本来は未来の世代からの借り物であり、豊かな状態で未来の世代に返さなければならないという考え方は、僕も非常にしっくりくるところです。

山口氏:
今日、みなさまが大阪でサステナビリティというテーマに興味を持っていただき、多くのマスコミの方、そしてみなさまに参加していただいたことに、本当に心から御礼申し上げます。
実は、日本でのこの活動の始まりは、我々が考えているよりも、世界から大変注目されています。

オリヴィエさんは、ルレ・エ・シャトーの副会長なのですが、実はフリップ・ゴンベール会長にも来ていただいています。会長・副会長が同時にこういった催し物に来るということは、ほとんどありません。それだけ非常に興味を持っていただいているということです。
ゴンベールさんは喋ると長いので、短くしてもらえますでしょうか。(笑)

Olivier Roellinger(オリヴィエ・ロランジェ)とフィリップ・ゴンベール氏

ゴンベール氏:
今回、このような場に立ち会うことができて、大変に嬉しく思います。

ルレ・エ・シャトーの日本支部が30周年を迎えて、このような大きなチャレンジをしたということに感動しました。何週間か前にオリヴィエと話していたのですが、このマニュフェストを日本で発表するに至るまでの道のりは、やはり相当なものであったということでした。

その時、懐疑的という言葉は言い過ぎかもしれませんが、もちろん他の国でもそうですけれど、日本の特殊な状況にあるなかで、ここまで実現できることを、私たち自身も確信はしていませんでした。それだけの困難があっただけに、ここにまで辿り着いた、それも大阪でということに大変感銘を受けています。

私がこのようなことを考えるようになったのは、オリヴィエがいつも教えてくれたからです。オリヴィエが私に話すまでは、海洋資源についてそこまで意識をもっていませんでした。

先程、オリヴィエの話にあったように、森林破壊は目に見えるけれども、海の破壊は目に見えない、というようなことなどを考えていく上で、ルレ・エ・シャトー日本支部、料理人のみなさま、専門家の方々、ジャーナリストのみなさまと一緒にこのような場を分かち合うことができたことを本当に光栄に思っています。

>>関連記事:ルレ・エ・シャトー 海洋保護に向けた「vision for the sea」発表レポート[前編]

>>関連記事:日本の食におけるサスティナブルのあり方丨ルレ・エ・シャトー副会長 Olivier Roellinger(オリヴィエ・ローランジェ)

>>関連記事:究極の地産地消レストランから学ぶ日本の海洋資源の守り方丨Single Thread(シングル スレッド)Kyle Connaughton(カイル・コノートン)

シーフードレガシー代表取締役社長花岡 和佳男氏、Olivier Roellinger(オリヴィエ・ロランジェ)、フィリップゴンベール氏、神戸北野ホテル総支配人・総料理長山口浩氏が並んだ写真


編集後記

日本は世界でも三本の指に入る、海洋国家であり、水産資源消費国家だ。高級料亭でなくとも、毎日の日常の中で普通に魚介類を食する。今回行われたイベントは日本国民全員に関係のある話題である。
調べれば調べるほど、知れば知るほど海洋資源の危機は対岸の火事などではなく、目前に差し迫ったものだと気付かされる。

以前私の母親が、「私の子どもの頃に食べた鰰(ハタハタ)はこんなにも大きかったのよ。」と話してくれたのを思い出した。この30、40年で数千年、数百年変化しなかった海の環境が大きく変化している。

しかしこのような現状になってしまったことを、捕るのが悪い、売るのが悪い、買うのが悪いと罵り合うフェーズはもう過ぎている。現在の消費のペースが続けば、2050年までに海洋の食用魚は絶滅するという試算もある。
明らかに一般消費者レベルで食生活を変えなければいけない時期に来ているが、日本社会にその危機感は薄い。
スーパーの鮮魚コーナーから魚がいなくならないと危機意識が芽生えないのであれば、本当にそうなってしまった時には、水産資源が回復できない状態になっているのではないかと危惧せずにはいられない。

海洋生態系は、混獲、沿岸開発、汚染、マイクロプラスチックを始めとしたゴミ問題、温暖化気候変動など、あまりにも多くの複合的な課題が山積しているが、まずはそれらを正しく知ること。身近な人と共有すること。一人ひとりの意識付けが未来の改善に向かう原動力になるのではないか。

ただ悲観するだけではなく、ルレ・エ・シャトーの料理人たちのように、一歩を踏み出すことで、孫、ひ孫と、先に続く子どもたちにも美味しい魚を食べれる未来を残してあげたい。そう願わずにはいられない。

 

主 催:大阪観光局
共催:ルレ・エ・シャトー
協力:大阪ガス株式会社、関西食文化研究会、大阪商工会議所

(文:市原 孝志、写真:松井 泰憲)