在日イタリア商工会議所主催の第10回全国イタリア料理コンクール「The Authentic Italian Competition 2019」。
今年の決勝テーマは、≪Pasta! Pasta!! Pasta!!! ~パスタ一品勝負~≫。
2019年11月25日、応募総勢61人の中から8人のシェフが、決勝ラウンドの熱き戦いに挑みました。
Foodionは、本大会の特別メディアパートナーに着任し、当日は、メディア皆様の投票による「ジャーナリスト賞」をメディア代表として授与させていただきました。
そのコンクール結果と各入賞シェフ、及び、こだわりのパスタをご紹介します。
皆さんは、「Italian Sounding(イタリアン・サウンディング)」と呼ばれる商品をご存知でしょうか。これは、イタリアを思い起こさせる地理的名称、画像、商標を使用して販売されている、実際は伊に帰属しない製品を指します。
世界中でイタリアン・サウンディングが、本来の伊製品の市場シェアを奪っている、この事態を阻止するべく、在外イタリア商工会議所連盟が、イタリア国内外のイタリア商工会議所の協力のもと、True Italian Taste(=真のイタリアの味)プロジェクトを始めました。これは、本物のイタリア食材の価値を高め、保護する活動を指し、本コンクールもこの一貫となっています。つまり、日本における、本場イタリア郷土料理の知識向上と、普及を担う料理人を称えるコンクールなのです。
本年度のテーマはパスタです。全ての選手は、プラチナスポンサーである日清フーズ株式会社の「DE CECCO(ディチェコ)」のパスタを使用し、料理を作ります。
審査項目は、1.盛り付け2.味3.パスタの特性を活かせているか4.創造性5.伝統イタリア料理の尊重、以上5つです。
審査員は、フィレンツェのフォーシーズンズホテル「Il Palagio(イル・パラージョ)」エグゼクティブシェフ/F&Bディレクターであるヴィート・モッリーカシェフ、丸の内「HEINZ BECK(ハインツベック)」エグゼクティブシェフのカルミネ・アマランテシェフ、西麻布「リストランテ・アルポルト」オーナーシェフ片岡護シェフ、南青山「アクアパッツァ」日高良実シェフ、大阪「ポンテヴェッキオ」山根大助シェフなど豪華なメンバーが揃いました。
栄えある優勝は、大貫シェフ。 1位に加え、JOOP オリーブオイル賞もダブルで授賞を受賞されました。
優勝者への副賞として、アリタリア航空よりイタリア往復航空券、ルッカイタリア料理学院5日間体験入学コース(イタリア、トスカーナ州)がプレゼントされました。さらには、特別審査員であるフォーシーズンズホテル・フィレンツェ「Il Palagio((イル・パラージョ))」エグゼクティブシェフ、F&B ディレクターのヴィート・モッリーカ氏より、サプライズスペシャルプレゼントとして、イタリア・フォーシーズンズの宿泊及びレストランへのご招待が寄与されました。
編集部:おめでとうございます。今回のパスタで決勝戦に挑んだ理由をお聞かせください。
大貫シェフ:フィレンツェの有名なトラットリアで食べたカラスミのパスタがヒントになっています。実はカラスミは、フィレンツェと由縁はないようなのですが、このカラスミパスタはフィレンツェを訪れる観光客に大人気だそうです。
そもそもイタリア料理は、クチーナ・リッカ(CUCINA RICCA)=「貴族の料理」と、クチーナ・ポーヴェラ(CUCINA POVERA)=「貧乏人の料理=マンマの味、今で言う郷土料理にあたるもの」という2種類に分かれます。
僕は、この観光客に愛されているカラスミパスタも、長い歴史を経ると、一つの郷土料理になりうる存在だと思いました。というのも、生まれは何であれ、美味しいものであったからこそ、今日まで受け継がれてきたのだと思うからです。そこから、こんな郷土料理の形も将来はあってもいいいのでは、という思いました。
大貫シェフ:そして、イタリア料理の魅力の一つは、乾燥食品の多様性だと思います。その一つであるカラスミの味は、日本のたらこに似ています。たらこも日本で人気のある食材ですよね。そのためたらこを連想するカラスミは、今大会に向いていると思いました。
本大会出場に際し、大会名のauthemtic(=正統派の、真の)という単語をうけ、ただ何かを合わせるだけではなく、日本人にもイタリア人にも愛されるもの提供したいと思いました。
他の食材として、イカを使用しましたが、これも日本もイタリア人も共通で好きな食材だからです。
編集部:調理のポイントはどこになりますでしょうか。
大貫シェフ:カラスミの味を感じてほしかったため、野菜の自然な甘みが出た湯でパスタを湯がき、塩気はほとんどカラスミ由来のもので補いました。
編集部:パスタと言えばオリーブオイルですが、バターを使ってらっしゃいましたね。これはなぜでしょうか。
大貫シェフ:香りを豊かにするためです。審査員からはバターを使用した点を褒めていただけました。
編集部:どうして今回ご出場を決められたのですか。何か今回大会に出て、学びはありましたでしょうか。
大貫シェフ:実は、飲食業界で働き始めてこのようなコンクールは初めて出場しましたが、やったことがないことにチャレンジしていこうと思ったことがきっかけでした。
結果、出場して本当に良かったと思っています。それは、結果がどうということではなく、コンテストで出すための料理もお店で出す料理も、食べてくださる人の事を考えて作ることには、変わりがないからです。審査員の方が好むものを考えるプロセスは、普段の営業にも十分活かせます。今回の料理から得たヒントを、またお店に来てくださるお客様への料理に生かして行きます。
【大貫 成規シェフのプロフィール】1981年、神奈川県出身。お客様に一番近い仕事を求め、料理の道へ進む。外苑前ラ・パタータにて修行を開始し、土屋シェフのもと6年間研鑽を積み、その後、イタリア各地で修業、全土を巡り見分を広めた。2014年【FLATTORIA】入社。
2位は、木村シェフでした。木村シェフは、当日来ていた多くのメディア取材班が投票によって決める、ジャーナリスト賞も同時授賞されました。実は、木村シェフは、普段からFoodionアプリもご活用いただいており、今回の授賞を編集部としても嬉しく思っています。(木村シェフのアカウントはこちら)
編集部:おめでとうございます。今回の一品を選ばれた理由を教えて下さい。
木村シェフ:ヴェネチアのカーニバルの賑やかさと、夕日をイメージしました。僕はイタリアの歴史や伝統を知り料理に活かすことを普段から大切にしています。
編集部:料理のポイントを教えて下さい。
木村シェフ:2色のパスタソースには、5種類の魚節を、パスタ湯には、利尻昆布を使用し、2種類の旨味を使いました。2種類のソースは単体でも、混ぜても、美味しく召し上がっていただけるように思考を凝らしました。
編集部:今回はどうしてご出場なされたのでしょうか。
木村シェフ:2016年から在日イタリア商工会議所による「イタリアレストラン品質認証マーク(※)」の認定を受けており、本大会の案内を受けました。ただ、2017年は予選敗退、2018年は決勝戦出場も入賞なしでしたので、本年度も再出場しました。今年は、自分の今出せる全力で一番いいものをお届けできたと思っています。
【木村忠敬シェフのプロフィール】16 歳で初めてイタリア料理店でのアルバイトをスタートさせる。27 歳の時、イタリアンレストランの修行を経て独立。8回のイタリアへの料理修行を経て、現在に至る。
第3位は、2人授賞です。まず、埼玉「OPPLA’!DA GTALIA」木田 佳孝シェフのパスタをご紹介します。
【木田 佳孝シェフのプロフィール】Salvatore Cuomo や XEX 日本橋、UPMARTET PIZZA&CAFÉ を経て現在に至る。
続いて、神戸「BOTTEGA BLUE」大島隆司シェフのパスタはこちら。見た目が鮮やかな、タコのラグーのパスタでした。
【大島隆司シェフのプロフィール】名古屋のレストランテ、ジラソーレからスタートして、名古屋~大阪の人気イタリアンレストランで働く。ブレーシアやボローニア、アルベロベッロなどイタリア各地で料理修行を経験。現在はキッチンソムリエでも講師を担当している。
DECCO賞を受賞した、新井シェフのパスタをご紹介します。帆立と昆布の味をパスタにギュッと込めた一品です。
【新井亮シェフのプロフィール】カ アンジェリ リストランテ アベーテ、レストランテ マキャベリを経て現在に至る。
【小林 正明シェフのプロフィール】大阪・阿倍野エコールキュリエール卒業。da GIORGIO(Ristorante da Lino 卒。
【伊藤貴浩シェフのプロフィール】イタリア料理 ブコ ディムーロで調理を学ぶ。ピッツェリア リストランテ トスカーナを経て現在に至る。
【入江聡シェフのプロフィール】東京調理師専門学校卒業後、2005 年ウェスティンホテル東京入社。2013 年京王プラザホテル入社。フレンチ&イタリアン「ディオ フリシェット」でシェフを担当。
・主催:在日イタリア商工会議所
・協賛:日清フーズ株式会社、アリタリア-イタリア航空
・協力:ルッカイタリア料理学院、モンド・デル・ヴィーノ
・後援:イタリア大使館、イタリア経済開発省、在外イタリア商工会議所連盟、日本イタリア料理協会(A.C.C.I.)世界イタリア料理週間(Settimana della Cucina Italiana nel Mondo)
文・:菊地由華、写真:長坂佳宣