2019.09.04

食品ロス最前線!イノベーターが語る持続可能な解決方法のヒント|SKSJ 2019レポート

8月8日、9日に株式会社シグマクシスとNextMarket Insights社が共同開催したイベント「スマートキッチン・サミット・ジャパン(以下、SKSJ 2019。)

「食&料理×テクノロジー」をテーマに、フードテック企業、キッチンメーカー、サービスプロバイダー、料理家、起業家、投資家、デザイナー、ビジネスクリエーターといった幅広い分野の有識者のプレゼンテーション、パネルディスカッションを通じ、日本のキッチンの未来を考えるイベントです。今年で3回目で、50名を超える登壇者が2日間「食」とテクノロジーの未来を語り合いました。

レポート前編は、様々なアプローチでフードロスの解決を目指すイノベーターの方が語る「持続可能なフードロス解決方法について 」。

株式会社ホンショクの代表取締役である平井巧氏、株式会社コークッキングの代表取締役・川越一磨氏、ユナイテッドピープル株式会社の代表取締役・関根健次氏、モデレーターとして株式会社シグマクシスのディレクターである田中宏隆氏によるパネルセッションをレポートします。

【パネリスト】
平井巧 (ひらいさとし)
1979年生まれ。新潟大学理学部数学科卒業。株式会社honshoku代表、一般社団法人フードサルベージ代表理事、東京農業 大学非常勤講師。食のクリエイティブチーム株式会 社ホンショクでは、「食卓に愉快な風を。」をキーワードに、食に関するコンテンツ制作、商品開発、プロモーション企画を行う。
川越一磨(かわごえかずま)
1991年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒。 株式会社コークッキング代表取締役CEO。和食料理店で料理人修行、株式会社サッポロライオンで飲食店の店舗運営を経て、日本初のフードロスに特化したシェアリングサービス「TABETE」の事業化に取り組む。一般社団法人日本スローフード協会の理事も勤める。
関根健次(せきねけんじ)
1976年生まれ。ベロイト大学経済学部卒(米国)。ユナイテッドピープル株式会社 代表取締役、一般社団法人国際平和映像祭 代表理事、ピースデー・ジャパン 共同代表。大学の卒業旅行で偶然訪れた紛争地で世界の現実と出会い、後に平和実現 が人生のミッションとなる。2009年から映画配給事業を開始。映画の市民上映会サイトcinemoの運営も行う。著書に「ユナイテッドピープル」がある。
【モデレーター】
田中 宏隆(たなかひろたか)
スマートキッチンサミット主催者。シグマクシスにおけるマルチサイド・プラットフォームチームのチームリーダー。国内大手家電メーカー、外資系コンサルティングファームを経て、2017年よりシグマクシスに参画。食・料理という領域における日本として進むべき道を明らかにし、新たな産業への進化を目指す。

 

【質問1】どのようにフードロスにアプローチしているのか?

田中
こちらの御三方は、それぞれ異なる領域で、フードロスにアプローチを取られています。それぞれどのようなアプローチしているのか、簡単に自己紹介や会社紹介をしていただきたいと思います。

平井
僕は、株式会社ホンショクという食のプロデュース業をしています。いろいろなフードロスを目の当たりにしてきた中で今、僕たちがひとつ思っていることは、生活者の意識を変えることが大事なのかなということです。
活動の中で得た、生活者の意識などについての情報を企業に提供したり、企業と一緒に考えていく中で生まれたものを、また生活者にフィードバックするということをしています。

平井
その中で、ひとつのコンテンツとしては「サルベージ・パーティー」というものがあります。略して「サルパ」。30人程が集まって開催する簡単なイベントです。家で持て余している食材や、このままでは捨ててしまうような食材を1品、2品持ち寄って、プロの料理人がその場でレシピやメニューを考えて、ライブクッキングをします。そしてできた料理をみんなでシェアして食べるという、ただそれだけのイベントなのですが、そこで大事なことは、ただ美味しい体験をするだけではなく、自分で料理をやってみたり、プロの料理人の頭の中をのぞいてみたりすることなのです。

「サルベージ・パーティ」HPより

人それぞれ、視点は違うのですが、食材を使い切るテクニックとか、改めて「こんな食材が余りやすいな」とか、フードロスに対して自分ができることを見つけてもらう、ということに取り組んでいます。

もうひとつ、「もっと踏み込んでフードロスを知りたい」という方もいらっしゃるので、東京農業大学の世田谷キャンパスを舞台に、今、フードロスの学校というものを企画・運営しています。

関根
弊社、ユナイテッドピープルは、SDGsに関わる映画ばかりを現在までに50本程製作・配給をしている会社です。その中でもフードロスは大変重要なテーマであると考えています。

人間が毎日食べる食べ物が、世界の3分の1も捨てられてしまっている、この大変な問題を解決したいと思っています。

僕自身は、人間が作り出した問題は、人間自身が解決できると信じています。

ユナイテッドピープルは、様々なセクターの人たちに映画をお届けしながら、意識を変え、行動を変え、そして世界の問題を解決するということにチャレンジをしています。様々なコミュニティで、これまでに数百回、上映会を開催しています。例えばカフェやレストラン、学校やタウンホールなどで上映会を行っており、ここでもやはり新しい出会いや発見、行動してみようという思いが生まれます。

具体的に何をやってるかというと「0円キッチン」という映画を、数年前に日本にお届けしました。

映画「0円キッチン」(C)Mischief Films

映画『0円キッチン』は、食品ロス解決のためにヨーロッパを巡ったロードムービーでした。

日本では、劇場公開に関連し、フードロスの問題を楽しく美味しく解決しようということで、オーストリア人の監督が作った映画の上映会、クッキングイベント、フードロスのイベントを組み合わせたのですが、実はその映画監督が、そこで出会った日本人と結婚しました(笑)

その結果、今そのオーストリア人の監督と、新しい映画を作っています。

まだ食べられるのにも関わらず捨ててしまうのは、やはりもったいない。そういった「もったいない精神」が、古来から日本にはあります。生きているものである命を、捨てることはもったいないというテーマの映画です。この映画「もったいないキッチン」は、来年の夏か秋に公開予定です。

映画のエピソードをひとつだけご紹介します。

目隠しをして暗闇で精進料理をいただく2人の男女の写真 (C)Mischief Films

この写真は精進料理です。もったいないの原点は、精進料理にあるのではないかと考えています。これは、目隠しをして暗闇で精進料理をいただく、「暗闇ごはん(ディナーインザダーク)」というものです。ビジュアルで見えるから、捨ててしまうのです。

例えば、みなさんは茄子のヘタを捨てていませんか?ここでは茄子のヘタを食べています。目隠しをすると、美味しくいただけるんですね。こういった意識の変容によって、「まだ食べられるものも活用できる」というアイディアを広げていこうとしています。映画では、このようなアイディアを20個程、ストーリーとして紹介する予定です。完成をぜひ楽しみにしていただきたいと思います。

ぜひみなさんのところでも、こういった映画の上映会にチャレンジしていただきたいと思います。

川越
僕は「TABETE」というサービスを運営しています。これはフードロスの課題に「フードシェアリング」のカタチでアプローチするサービスです。まだ安全に美味しく食べられるのにも関わらず捨てられてしまう危機にある食事をレスキューする、マッチングのプラットフォームです。

仕組みについてですが、いわゆる中食や、レストラン・弁当屋さん・パン屋さんなどの外食で売り切りたいものや、売れ残ってしまったものなどを、我々のプラットフォームにアップしていただきます。

最近Twitterなどで「うちの店で予約のドタキャンがありました。誰か助けてください!」というような投稿を見かけることもあると思います。こんなときは、TABETEを通じて「こういうものを出品しています。何時から何時までの間に取りに来てください」というヘルプ要請を出すことができます。

TABETEユーザーがアプリ上で店舗をお気に入り登録している場合、この「ヘルプ要請」がアプリ通知という形でユーザーに届きます。通知を受け取ったら事前決済を済ませて、あとはお店に取りに行くだけです。ですので本当に純粋に単純なマッチングのプラットフォームとなります。ただ、フードロスに特化しているところが我々の特徴かなと思います。


「TABETE」広報資料より

田中
最近は、地方自治体や市町村でも、コラボレーションしていますよね。

川越
そうなんです。たとえば、石川県・金沢エリアの約20店舗で使えるようになりました。

僕はかつて飲食店で働いていました。山梨県でこども食堂をしたりレストランをしたり、都内で銀座ライオンというビアホールの社員として勤務する中で、実際に捨てている側の人間だったので「食品ロスという課題をなんとかしなきゃいけない」とは常に思っていました。

 

【質問2】2019年前半のフードロスに対する人々の理解に変化や加速はあるか?

田中
5月31日に食品ロス削減推進法が交付されて、界隈では追い風だと言われています。

そちらも含めて、特にこの半年間で、フードロスに対する人々の理解に変化や加速など、何かお気付きのことはありますか?

川越
自治体などの取組みは、加速傾向にあるかなと思います。

自治体が目指していることの一つに、ごみの減量があります。ごみの量を減らすというポイントですが、食品は水分含有量がとても高いため、焼却コストもとても高いのです。ですので、ごみを減らすことに加えて、SDGsがあり、フードロス削減推進法がありという合わせ技で、感度が高くなっているなという印象はあります。

関根
やはり映画も、上映会をしたいという行政のニーズが高まっています。

10月16日が世界食料デーということから10月を世界食料月間とし、国連食糧農業機関(FAO)を含めたさまざまなNGOが連携し、食べ物のことやフードロスのことを考える機会をつくっています。そちらに合わせ、行政からの問い合わせが増えています。

平井
僕の場合、行政もそうですが、学校からの、特に小学校や中学校からの問合せが多く、子供たちから直接連絡が来ることもあります。

田中
子供たちからですか?

平井
授業で「教室でサルベージ・パーティをやりたいんだけど」とかです。
子供たちはみんな「SDGs、SDGs」と17のコードを丸暗記しています。

田中
すごいですね。

会場内でSDGsの17個を、全部そらで言える方はいらっしゃいますか?(笑)すみません、私もまだ言えないかもしれないのですが。やはり、そういったことなのでしょうね。昔、僕たちがゲームの呪文などを覚えていたように、今の子供たちはSDGsを覚えるということなのでしょうね。

平井
そうですね。

「彼らが10年後に消費者の中心になるんだな」と考えると、やはりそういうサービスや会社が選ばれていくのでしょうね。

【質問3】大手企業のフードロスへの動きや変化は?

田中
大手企業などは動きや変化のようなものはありますか?

川越
この場で話すのは少し難しいところもあるのですが、中立的に見ていると、食品メーカーさんはテクノロジーなどには非常に感度が高くて、どんどん新しいフードテックのようなところにチャレンジしている印象があります。ただ、フードロスという文脈で言うと、実はそれ程取組みをしていないのかもという感触があります。これ、僕はきちんと「少し言いづらいです」と言っておきますよ(笑)ですが、そういった食品メーカーさんなどからも、かなり問い合わせをいただいています。

田中
しかしやはり動き出しているということなのですね。

川越
そうです。新規事業開発プラス、フードロス対策というような流れはあると思います。

【質問4】フードロスに持続的に取り組んでいくために必要なことは?

田中
フードロスは「フードロスしなきゃ!」となると、やはり苦しいですよね。改めてフードロスに持続的に取り組んでいくためには、どういったことが本当に必要なのでしょうか。

平井
「フードロスってどうやったら解決するんですか?」とストレートな質問をされることが多いのですが、僕も答えは知りません。クリティカルな答えはわかりません。人それぞれ答えが違うため、おそらくそこに答えはありません。

一方で、だからこそ、一人ひとりが自分で食に対する価値観を持って考え続けなければならないですし、それは時代によって変わってくると思います。さらに大切なことは、自分と考えが違う人が目の前に出てきた時にバッシングするのはでなく、それをどのようにして許容するか、ちゃんと話し合いができるかということです。

関根
サルベージパーティでも話題に登ることがありますか?

平井
ありますね。こうした活動の中で、宴会など、食べ残しが目の前に出てくるシーンによく遭遇します。そういった時に「お前がいると食べ残しができない」などと言われるのですが、お腹がいっぱいで、僕も食べられないんですよね。そこで、食べ残すことがいいことなのか悪いことなのか、体を壊してまで食べることはいいことなのかどうかということでも、一人ひとり価値観が違うと思います。

田中
それは「そもそも、オーダーしすぎなければ良いのに」と思いますよね。

平井
思いますね。

田中
やはり意識がそこまで遡りますよね。

平井
そうですね。そのような時、自分の価値観を探るために何が大事かというと、自分で食に対する責任感を持つということなのかなと思います。先程、関根さんも少しおっしゃっていましたが。

関根
フードロスの問題は大きいですが、その重たさに引っ張られずに「美味しい、楽しい」というところに目を向けるとよいのではないかと思います。
「もったいないキッチン」の日本全国ツアーの中の重要かつ美味しいエピソードをひとつ、ご紹介したいと思います。鹿児島県枕崎市という鰹節づくりで有名な場所で、金七商店さんという伝統的な鰹節メーカーさんが作る、「クラシック音楽のモーツァルトを聴かせて熟成させる、クラシック節」に出会いました。

こんなにも命への尊敬の念を懐き向き合っていることに感動しました。この精神が実は重要なのではないかなと思います。

なぜかというと、私たちはパッケージ化され、商品化されたものを買えるから、古いからいいじゃないかと捨てています。一方、鰹節はすごいなと思ったのですが「命を奪ったものをいただく」という感覚がありました。

例えば、頭は飼料にして、内臓は塩辛にして、もちろん身は鰹節にして、すべてをいただき、熟成の際はクラシックを聴かせています。こういったことがヒントではないかなと思います。今、僕自身が鰹節マニアになっていて、自宅で毎日削って、鰹節ごはんを食べていますが、これが非常に美味しいです。

田中
いいですね。既製品をお金で買うだけでなく、生産の裏側やその想いを知ることで、売り手も作り手も買い手も一緒だよと実感できるいいサイクルだなという感じがします。川越さんはいかがですか?

川越
そうですね。僕は、美味しく楽しく食べるというところに、ストーリーがついていると、可能性が少し上がるかなと考えています。食べる時のストーリーを、どのようにして自分の中で見つけるかということです。

クラシック節の話にも通ずるところがあると思いますが、例えば友達の生産者から送ってもらった野菜なら、なんとかして食べようとし、捨てるのは申し訳ないなと感じるのではないでしょうか。一方、スーパーで買った場合は、同じ野菜でもなぜか少し雑に扱ったりすることもあるのでは。

それはやはり、誰かからきちんと買ったとか、誰かからもらったとか、そういった「生産者が実際にいる」という感覚が、サプライチェーンが長すぎて見えなくなっているという点が根源的にあると思っています。その中で「いかにして自分でストーリーを持って食べるか」ということが重要かなと思っています。

【質問5】日本と海外のフードロスへのアプローチの違いは?

田中
今回は海外からの参加者や登壇者にもお集まりいただいてるように、フードロスはグローバルでの問題になっています。たまに海外で「日本のフードロスのアプローチと、海外の違いはなんだ」と聞かれるのですが、日本と海外のフードロスへのアプローチの違い、また日本ならではの良さや弱点などはありますでしょうか?

平井
僕は東京農業大学で教えてもいるのですが、日本は国土が狭いので、自然のフィードバックが早いと先生方がよく言っていました。例えば、山の手入れです。漁師が山の手入れをするのは、川を綺麗にすることで、海が綺麗になるからですが、その結果がすぐに出ます。日本はかなり早いんです。もちろん長い年月がかかるのですが、他の国に比べると早いので、循環に取り組む時に日本はすごくいいモデルになるし、やりやすいと言っていました。

田中
なるほど、おもしろいですね。関根さんはいかがですか?

関根
日本にはもったいない精神がある一方、「こんなものを出しては申し訳ない」「形が綺麗に揃っていなければ」というきちきち感が、少し厳しすぎるかなとは感じています。

「もったいないキッチン」「ゼロ円キッチン」の映画監督であるダーヴィド・グロスはビール造りをしています。カレはパン屋さんで売れ残ったパンを預かってきて、それを元にしてビールを作るのですが、日本との違いは毎日売れ残るパンが違うので、毎日味が違うことです。「少しレーズンの味がする日、それって楽しい」で済む感覚と「毎日味が違うんだけど」とクレームをする感覚は、だいぶ異なります。日本はもう少しゆるく行こうよと思っています。

田中
賞味期限も含めてそうですね、厳しいですものね。川越さんはいかがですか?

川越
昨日までバンコクにいたのですが、バンコクのグローバル企業のホテルや、関連企業のフードロスへの取り組みはかなり進んでいて、コンサルががっつりと入っていたりするようです。おそらく日本には、そういった流れはほとんどありませんよね。そういった取り組みは、ハングリー精神があり、新しいことを最短で取り入れようという思いがある国ほど、進んでいます。

日本はとても豊かな国であるからこそ、ある意味では飽和していて新しいことをするのにハードルが高すぎると感じます。そういったところはどんどん進めていくスピード感を持った方がよりよくなっていくのではないでしょうか。これが大きな違いだなと思いました。

田中
こちらの御三方の領域は、メディアとレストランと消費者と、いい意味で重なるところもあり、重ならないところもあるため、お話をお伺いしていると常に新しいインサイトが得られて興味深いです。

本当に今日はお忙しい中ご登壇いただき、ありがとうございました。

編集後記

世界中で食品ロスへの取り組みは待ったなしだ。ただ一方で、ちまたでは「食品ロスという言葉が先行し、実際にどのように取り組めばいいかわからない」という声も未だよく聞く。本セッションでは、そんな迷える私達がフードロスについて考え、アクションするきっかけを提供する、食品ロスのイノベーターからの意見が聞けた。彼らが言うには、日本には「もったいない精神」が古来あり、豊かな自然のおかげで自然のフィードバックが早いときている。実は日本は、解決の好事例を生むのに恰好の潜在性を秘めていると言えるのかもしれない。

文・編集:菊地由華
写真:長坂佳宣