2019.11.29

商業捕鯨が31年ぶりに再開。新しいくじら料理との出会い / OSAKAくじらフェス2019

今年7月、約31年ぶりに商業捕鯨が再開され、「くじら肉」が新たな食材として注目されつつあります。

飲食店関係者、食材の流通関係者の方々などにくじら肉の美味しさを体験してもらうべく、2019年11月に「OSAKAくじらフェス2019」が開催されました。

意外なくじら肉のメリットや、店舗の目玉となる一品へと昇格させる調理バリエーションとは?また、特別に共同船舶株式会社 代表取締役社長である森 英司氏に、捕鯨について、くじらについて、水産資源全般についてインタビューした内容もお届けします。


目次

1.  捕鯨の歴史って?くじら肉ってどんな特徴があるの?

2.  店の目玉となる一品へ!意外なくじら肉の魅力と調理法

3.  捕鯨の最前線でクジラと向き合ってきたからわかる、捕鯨についての話

■捕鯨の歴史って?くじら肉ってどんな特徴があるの?

日本では、古くは縄文時代から、クジラは貴重な海の幸でした。「クジラ一頭捕れば、七浦潤う」と言われるほどで、肉だけでなく内蔵やヒゲ板、骨まで余すことなく有効活用してきました。

しかし戦後、漁業技術の発達、漁業の商業化などで乱獲した歴史があり、1988年から商業捕鯨は中断。そのこともあり、くじら肉の流通が激減。かつては、給食にも用いられるほどのありふれた食材だったくじら肉の状況は打って変わり、口にする機会が減りました。

そして今年7月、約31年ぶりに商業捕鯨が再開され、「くじら肉」が新たな食材として注目されつつあります。
若い世代には、馴染みの薄い食材ですが、注目の理由の一つは、高い栄養素にあります。
牛、豚、鶏と比較して、高タンパク、低カロリー、さらに鉄分や抗酸化物質である「バレニン」を多く含んでおり、非常に魅力的な食材でもあるのです。

■店の目玉となる一品へ!意外なくじら肉の魅力と調理法

イベントでは、これまでの伝統的なくじら料理である竜田揚げやくじら汁に加え、ジビエ料理やカフェ料理など、新しいアプローチのくじら料理が振る舞われました。

まずは、料理実演として特別出展されていた「むらさき/どおぞの」の、はりしゃぶ鍋
大阪が発祥とされる鍋料理ですが、かつお節と、昆布でとった出汁で、脂の乗ったくじら肉を薄切りにして加えており、鯨の脂が出汁に溶け合います。
お腹の皮と、くじら肉、水菜とシンプルな鍋ですが、くじら肉を初めて食べる方でも、抵抗なく食べられる上に、満足感のある味わいです。

もう一つの特別出展が、くじら料理専門店「くじらのお宿一乃谷」のくじらのサイコロステーキ
臭みやクドさは感じられず、野性味のある食感は、まさに海のジビエ。高タンパクでさっぱりとした赤身は、若い世代にも受け入れられる味となっていました。

他には、伝統的なくじら料理としては、ロースト、竜田揚げ、刺身、握り、鯨汁、さらしくじらが紹介されていました。

意外なくじら料理として紹介されていたのは、ソーセージ、カルボナーラ、チーズ唐揚げ、ポトフ、ロコモコ、キーマカレー、ポキ丼、チヂミ、薬膳鍋

 

くじら肉の調理のポイントを聞くと、くじら肉自体の食感がしっかりあるので、調理においては薄くする、または柔らかくする処理を上手に行うことが、秘訣のようです。
皮部分は食感を生かしたアレンジが、脂身部分からはコクも有りながらさっぱりとしただしが出るため、様々な料理に活用できます。くじら肉全体として、少量でも満足感がある食材として、その活用方法は無限大ともいえるかもしれません。


■ 捕鯨調査の最前線でクジラと向き合ってきたからわかる、商業捕鯨についての話

はたして捕鯨をする必要があるのか。我々日本人はクジラを食べる必要があるのか。
今回捕鯨と向き合い続けてきた共同船舶株式会社 代表取締役社長である森 英司氏に率直に伺ってみました。

―本日取材ご協力いただきありがとうございます。まずは今回のイベントの趣旨についてお話頂けますでしょうか。

森氏:
商業捕鯨が再開にいたり、200海里において持続管理型の捕鯨が認められました。
捕鯨と一言で言いましても、クジラの種類の中で漁が許されているクジラというものがあります。もちろんその中でも、捕獲の頭数が決まっています。
年間で187頭捕鯨することが定められており、比較的頭数が十分とされている、ニタリクジラというクジラがいます。ニタリクジラは実は鯨種の食材としてマイナーに捉えられていることもあり、ニタリクジラの肉を食べたことがないという方も多いのです。
ですので、ニタリクジラの肉を実際に見て、触れて、食べて、食材としての魅力を知ってもらおうということで、このくじらフェスイベントを開催いたしました。

今回様々な料理として鯨料理を提供させていただいておりますが、すべてニタリクジラの肉になります。

―くじら肉もクジラの種類によって違いがあるのですね。

森氏:
そうですね、クジラの種類ごとに、様々な味わいがあります。
調査ではサンプルとして、ミンククジラを捕鯨していたわけですが、副産物としてくじら肉が取れました。くじら肉というと、ミンククジラの肉という印象の方が多いかもしれません。
ミンククジラでも、南極、北西太平洋では、味が違います。

―調査捕鯨は、どのように行われていたのでしょうか。

森氏:
捕鯨に関する調査研究の学術的機関がありまして、そこからうちが業務委託を受ける形で、実際のクジラを捕獲して、調査をするという調査捕鯨を取り組んできました。

クジラの漁は、見つけて、種類を確認して、追っかけて、捕獲する流れとなります。種類を確認しないと捕れないですから。そういう見分けを海の上から目視して行うわけですが、それには熟練した経験が必要です。

商業捕鯨が行われていた32年前以前、戦後にあたる時期ですが、現在のように牛や豚が手に入らなかった時代がありました。そこで、日本国民の重要なタンパク源としてクジラが着目されました。当時は、特に制限なども設けられていなかったため、日本だけではないですが、乱獲してしまったのです。

そこで、IWC(国際捕鯨委員会)が一度捕鯨を止め、調査をして、健全な捕鯨を行えるように世界中に働きかけました。これが、商業捕鯨が調査捕鯨に変わった目的です。
まずは、頭数データをとり、資源管理していきながら捕鯨を行う流れができました。

―捕鯨に関してネガティブな印象を持っている人も多いと思いますが、いかがでしょうか。

森氏:
昔はくじら肉は本当に一般的な食材でしたから、私も肉といえば、くじら肉でした。家庭のカレーに、当たり前のようにくじら肉が入っていましたから。
当時は、国内で20万トンものくじら肉があったのですが、先程の商業捕鯨が禁止とされ、クジラに変わって牛や豚、鶏が普及していきました。

時代も変わり、メディアで反捕鯨団体の活動などが報道されたりなどで、捕鯨自体が違法なんじゃないかという印象を持たれている方もいらっしゃったりするのではないかと思います。
商業捕鯨が再開するということにあたり、そのあたりの情報についても、しっかり発信していきたいと思ってます。

―先程、頭数制限のなかでの商業捕鯨という話がございました。

森氏:
海産資源という捉え方で言えば、クジラは最も調査研究されている生物だと言えます。頭数が確保されている種に限り、383頭まで、と取り決めがあり、非常に慎重に捕獲が行われています。また、この規定は5年毎に見直し、その後も捕獲していい種類、頭数を決めていくことになります。
これはクジラに限った話ではなく、漁業全体として、そういった持続可能なものにしていこうという動きがあります。

―捕鯨を継続していく必要性、またクジラを食べる意味のようなものはどういったものなのでしょうか。

森氏:
まず、クジラだけでなく、人間は他の動植物を殺し食べてと、他の生き物の命を頂きながら、生きています。
たとえ牛や豚、鶏という飼育が可能な動物だからと言っても、彼らも屠殺され食べられるとは思っていないわけですから。
また、牛一頭育てるのには、ものすごい量の餌が必要です。
もし牛肉だけがあればいいと牛肉だけを求めれば、牧畜のために自然を破壊していかなければいけないことになります。

海の恵みも人間には必要ですし、食の多様性の一つの選択肢として、くじら肉を食するというのも大切な意味があると私は思っています。自然と人間が共存していくなかで、食物への多様なアプローチがあるというのは大切なことです。
マグロだけ、鮭だけ、と特定の種類だけを捕るとなると、生態系を著しく損なってしまうことになります。また特定の種を保護しすぎれば、それはそれで違う問題がおこります。
猪が増えすぎて山が荒れるとか、農産物が食べられるとか、猪被害がでます。そういうことが起こってしまいます。

また、日本人としては、古来より重要な食料資源として利用してきた伝統や文化があります。
これが途絶えてしまうと、その先の未来に継承できなくなってしまいます。
例えば、我々がおこなっている、クジラを獲り、さばき、保存流通させていくということについても技術やノウハウがあり、それは人伝えでしか継承することが難しいことも多く存在します。

クジラについては、資源管理型捕鯨という新しい捕鯨で取り組んでいきます。せっかくの海の恵みをぜひ美味しく召し上がって頂きたい。それがクジラを捕る者としての願いです。

―くじら肉がこれからどれほど受け入れられていくのかは注目ですね。

森氏:
商業捕鯨がゴールではなく、スタートですから、今後くじら肉を目にする機会というのを作っていきたいですね。
くじら肉しかなかったという過去の時代から、いまは牛、豚、鶏と選択肢も増えています。
くじら肉の消費は、昔の方は馴染みがある食材ということもありますから、やはり年配者さんが多いんですね。
これから若い方に、くじら肉の存在を知ってもらう、実際に食べてもらう、そのような機会を作らないといけないです。
私達だけでは当然できないことなので、加工業者さんや、飲食店さんと一緒に取り組んでいきたいですね。

■食の多様性の一つの選択肢として、くじら肉

これまであまり触れる機会がなかったくじらという食材だが、商業捕鯨が再開されたことでこれまでよりも比較的身近な食材となっていく可能性もある。

古くから日本文化に根付いてきたくじら肉という食材を、お店の食材の一つとして検討されてみてはいかがだろうか?

お問い合わせ先
OSAKAくじらフェス2019事務局
Tel:03-6277-5256
Mail:pr@intention.co.jp

(取材/文:市原 孝志、撮影:松井 泰憲)