2019.07.26

LACERBA(ラチェルバ)/agnel d’or(アニエルドール)/RiVi(リヴィ) 新進気鋭の3人シェフに聞く「料理コラボイベント」の思い ‹後編›

今大阪で注目のレストラン「LACERBA(ラチェルバ)」「agnel d’or(アニエルドール)」「RiVi(リヴィ)」。2019年7月中旬、この3レストランのシェフによる料理コラボイベント「Foodion presents Osaka new wave LACERBA × agnel d’or × RiVi」が開催されました。

そのコラボイベント直前に開催したシェフ対談の前編では、コラボイベントのきっかけや3人の出会い、コラボの動機についてお伺いしました。後編では、お客様と自分たちの関係性について、イベントのテーマについてお届けします。

■イベントを介して他者によって自分が支配されてしまうことから脱却する

LACERBA(ラチェルバ)藤田シェフ(以下、L/藤田シェフ):

最近ずっとSNSにまつわり思ってたことがあるんです。
突然ですが、サルトルって知ってますか?サルトルの実存主義で対他存在というのがあるんですよ。レストランにおいて自分は料理人になるわけなんですが、対他存在はお客さんになります。

僕らは自由に料理しているように見えるかもしれないですけど、大阪の立地や気風、価格帯を考慮し、お客さんに合わせ微調整しながら店舗運営をしなければいけないんですね。その一方、対他存在であるお客さんはSNSなどで自由に僕の料理写真を表現している。僕は写真も好きなので、自分の本当に表現したいのはそうじゃないと思うこともあります。

それで先程のサルトルの話に戻りますと、そういった対他存在であるお客さんが自由であればあるほど、そちらから見る「僕」が僕自身になってくるんですよ。例えば、藤田シェフの料理はこうだね、こういう人だねとお客さんからと評価されたり思われたりします。ただ本当の自分はそうでなかったりするわけです。僕は前の店ではトラットリア、つまり地方料理・郷土料理をやっていたのですが、当時完全に「地方料理の料理人、郷土料理の料理人だ」と定義づけられていた。でも実際は、イタリア修業時代はミシュランの星付きレストランを回ったりもしていて、 それが僕という料理人の全てというわけではないんですよね。何年も大阪で飲食業をやってると、少しずつ自分の中での他有化が進んできているような気がしてたんです。

そういった「店」と言う存在イメージが段々と大きくなってきたので、一回コラボイベントして店から離れてみようと決めました。いち料理人としてこんなことできたら面白い、ということをやりたいのです。これが僕のコラボイベントをする結構大きな理由なんです。他人による他有化で自分が支配されてしまうっていうことは、料理人だけでなく結構どの人にも当てはまると思います。

agnel d’or(アニエルドール)藤田シェフ(以下、a/藤田シェフ):

むちゃくちゃそれわかります。

RiVi(リヴィ)山田シェフ(以下、山田シェフ):

毎日あります。自分の位置を迷うときもある。

L/ 藤田シェフ:
毎日そうですよ。それで我慢できなくなって、これではいけない、と思いました。

東京みたいにメディアが発達してる場所だったらメディアを介して自分のやりたいこと、世界観を発信できる。それが常に繰り返されることで、お客さんに自分の考えが伝わっていくと思うんですが、どうしても大阪ではそれが弱い。いつまでたってもなかなか伝わらないジレンマがあります。情報というと自由なお客さんがSNSで発信してるだけで、こちらはなかなか発信できないというジレンマがあります。だからこういうコラボはある程度重要だと思っています。

 

LACERBA(ラチェルバ)藤田シェフ

■今回のコラボイベントのテーマは「自由」であること

編集部:
ちなみに今回テーマ感を持って挑まれたんですか?

L/ 藤田シェフ:
と言いつつね、テーマはないですよ(笑)

一同:(笑)

L/ 藤田シェフ:
僕は、どちらかというと先ほど話をしたクリエイターを見たい、刺激を受けたいという方の目的もあるから、オブザーバー的な立場でもある。どちらかというと僕のやりたいことよりもすべきことをやったという感じで、でもいつもよりは楽しんでできてる感じです。自分の料理というより結果の方を楽しみにしているんです。終わった後の見た感を楽しみにしている。

山田シェフ:
やっぱちがうなあって。思考が一個上と言いますか。

a/ 藤田シェフ:
なんやろ。悩んで悩んで10年位悩んだらこんなかんじになるのかな。

一同:(笑)

編集部:
僧侶みたいな感じですね。

L/ 藤田シェフ:
前の店はやりたいようにやれていたからね。と言うのもミシュランもなかったし、他人から評価される食べログだってみんなやってる訳じゃなかった。どちらかと言えば料理人が好き放題やれてた時代。お客さんにも喧嘩を売るじゃないけど、お客さんに注意ができていた。

a/ 藤田シェフ:
そうですね。先輩シェフらの世代と話したら、毎回同じような感覚になるんですよ。やっぱすげーなって。今もすごいなと。ぼくの師匠の加古シェフと話しをしていても、観点や角度が違うのか、僕らと違って切り口がたくさんあるんですよね。全員話は違うのに、聞いた後の納得感が僕らの世代の話とぜんぜん違う。

L/ 藤田シェフ:
僕ら料理作りに来たんじゃなくて話だけしに来たみたいやな。

一同:(笑)

a/ 藤田シェフ:
話聞くのめっちゃ好きなんですよ。
憧れなんですよね。どうやったらこんな話できるんだろう、って。

編集部:
さっき対談前のコース打ち合わせで、ラチェルバ藤田シェフがコースの流れを気にされていましたよね。調整役に入っているようにも見えました。
何に重点を置いて変更されたんですか?

L/ 藤田シェフ:
最初アミューズの盛り合わせ一人2品ずつ作って、いきなり前菜がスタートするような感じだったんですけど、流れていくイメージじゃなくて突然始まる感じがしたんです。スタートの盛り合わせが華やかなので、もう少しグラデーションがあったほうがきれいな流れやストーリー性が出ると思ったので僕の前菜の内容を変更しました。

編集部:
なるほどです。締めくくりに差し掛かってきましたが、なにか今日のお客様にメッセージはありますか?

L/ 藤田シェフ:
今回は僕らが舞台でお客様が観客なので「こう感じて下さい」というのはないんです。「こう見て下さい」もないです。演劇にそういったものがないと同じですね。「どう感じるかは自由」という感じです。

編集部:
おもしろいですね。
食材についても聞きたいです。事前打ち合わせの段階で食材が被らないように皆さん配慮されているかとお見受けしました。

山田シェフ:
多少かぶっていますよ、みんな料理人ですし。ただ、阿吽というか、「こう来たらこう行くやろ」というのを察し合って準備しましたね。

L/ 藤田シェフ:
僕はやはり2人が自由な姿を見たくて。変に縛られることなくしてほしいので食材も自由にしました。

山田シェフ:
びっくりするぐらい自由にさせてもらえましたね。

一同:(笑)

編集部:
他のシェフの時は、ルール決めがあったりするんですか?

山田シェフ:
2人の時は、あれ使いますこれ使います、という打ち合わせで済みますね。テーマは決めますね。

 

RiVi(リヴィ)山田シェフ

編集部:
今までやったテーマは具体的に何がありますか?

山田シェフ:
イタリア縛りとか、地方縛りとか。

a/ 藤田シェフ:
地方料理だけをやろうというテーマでコラボイベントしたことはありますね。地方料理を組み替えて提供するというテーマ感でした。

山田シェフ:
今回は自由ですね。コンセプトなし。
前提として誰とコラボイベントするにしても「好き」とか「尊敬」がないとやらないですね。そうでないとやる意味もないので。そもそも根底にそれがあるので、そんなにコンセプトなしでも困ったことはないです。

編集部:
山田シェフ、今日のお客様に一言お願いします。

山田シェフ:
自由に感じて下さい。その言葉の通りです。

a/ 藤田シェフ:
そうですね。

agnel d’or(アニエルドール)藤田シェフとRiVi(リヴィ)山田シェフ

■料理人と暖かく見守ってくれるお客様との関係性

編集部:
話が変わりますが、今回のイベントは一瞬で満席になりましたよね。告知はFacebookだけですか?

山田シェフ:
そうです。あとは、個人的にお得意さんに声を少しかけた程度です。

a/ 藤田シェフ:
僕もそうですね。3店の共通のお客様も多かったみたいですね。

山田シェフ:
常にそういうイベントって待ってくださっているのですかね?

a/ 藤田シェフ:
どうなんでしょう。

山田シェフ:
あれだけ早く予約いただけたということはそういうことなのかなと。

LACERBA(ラチェルバ)agnel d’or(アニエルドール)RiVi(リヴィ)シェフ対談風景

編集部:
Foodionでもイベント広報するのかな?と思いきや、瞬時に埋まったので、なんの心配もいらなかったですね。

一同:(笑)

山田シェフ:
率先して予約してくれたお客さん方々には、楽しんでほしいです。

a/ 藤田シェフ:
そもそもコラボイベントって料理というよりも僕らに興味がある人が来てくれるんですよね。作り手に興味がないと来ない。美味しいもの食べたいというよりも僕らが何するのか見たいと。

編集部:
暖かく見守ってくださっているお客様層ですね。そういったお客様ってどうやって仲良くなるものなのでしょうか。

山田シェフ:
意識したことない(笑)

a/ 藤田シェフ:
でもまずは入り口は料理ですね。ただそういう人たちって、美味しい美味しくないというよりも面白い面白くないという観点で見てくださっているような気がしますね。

山田シェフ:
僕も同じです。

L/ 藤田シェフ:
アニエルドール藤田シェフの料理を食べて、「あ、絶対好き!」と思いました。お人柄がすぐ分かりました。

a/ 藤田シェフ:
料理は本当に人柄出ますよね。

リヴィ山田シェフ:
だから僕の料理好きな人が現れると、僕もその人のこと好き、ということが多いです。

a/ 藤田シェフ:
それはある。料理って食べ物は食べ物ですが、ある意味作品みたいなところがあります。だから芸術と通ずるところもあるのかなと。誰かの作品が好きだ、ということってあるじゃないですか。視覚的な点や味も評価に入りますが。僕の場合は、その方のデザイン性とか考え方が好きなことが多いですね。

agnel d’or(アニエルドール)藤田シェフ

■料理にまじめにしてもらった

編集部:
言葉にできない共感があるということですね。

山田シェフ:
ありましたね。

L/ 藤田シェフ:
いや、でも「ほんまの俺は違う」ということもあるけどな。

一同:(笑)

L/ 藤田シェフ:
やっぱ料理やる時は、こういう自分でいないと無理、という人もいるからね。
今話を聞いていて思ったんだけど、昔はめっちゃ性格悪くて、生活めちゃくちゃで、でも腕は抜群みたいな人っていたと思うんですよ。でも「俺が作る」みたいなシェフってだんだん減ってきている気がするな。昔の常連さんは、そういう人の店に通っていた。

山田シェフ:
僕らの世代ってそういう人いないですね。

L/ 藤田シェフ:
俺も感じるんだけど、今のレストランってキチンとやっていかないとできないからね。

a/ 藤田シェフ:
自分でいうのもなんですが、まじめですよ。

L/ 藤田シェフ:
俺も料理に真面目にしてもらったようなもんだな。

山田シェフ:
(笑)みんなそうかもしれないです。僕も料理がなかったら絶対しょうもない人間です。

a/ 藤田シェフ:
僕も同じですね。のめり込むものが料理ってことなんでしょうね。

L/ 藤田シェフ:
時間拘束されてよかったなという感じですね。

山田シェフ:
(笑)考え方によってはそうかもですね。

a/ 藤田シェフ:
料理がなかったら相当なボンクラです。

山田シェフ:
基本しんどいことは嫌ですからね。

a/ 藤田シェフ:
ただなぜか料理だけは頑張れる。

山田シェフ:
僕も。なんでやろね。

a/ 藤田シェフ:
料理にハマったんでしょうね。

編集部:
この後のみなさんの料理が楽しみです。ありがとうございました。

 

▶新進気鋭の3人シェフに聞く「料理コラボイベント」の思い ‹前編›

 

【コラボイベント関連コンテンツはこちら】

▶イベント新作料理の作り方──LACERBA(ラチェルバ)藤田シェフ

イベント新作料理の作り方──RiVi(リヴィ)山田シェフ

イベント新作料理の作り方──agnel d’or(アニエルドール)藤田シェフ

Foodion presents Osaka new wave LACERBA × agnel d’or × RiViコース全品紹介


■agnel d’or(アニエルドール)
お問い合わせ:06-4981-1974
アクセス:大阪府大阪市西区西本町2-4-4 阿波座住宅三栄ビル1F
営業時間:ランチ 12:00 – 13:15(L.O) / ディナー 18:00 – 20:00(L.O)
定休日:月曜日 / 火曜日のランチ

■LACERBA(ラチェルバ)
お問い合わせ:06-6136-8089
アクセス:大阪府大阪市北区堂島浜1丁目2−1
営業時間:【平日・土】ディナー 17:00~23:00 (L.O.20:30) / 【火~土】ランチ 12:00~14:30
定休日:日曜日

■RiVi(リヴィ)
お問い合わせ:06-6136-6830
アクセス:大阪市西区京町堀1-16-28 W京町堀ビル1F
営業時間:13時~20時(L.O.)
定休日:不定休

 

文:菊地由華
編集:Foodion編集部
動画撮影:TransTone Co.Ltd.