2019.07.24

新進気鋭の3人シェフに聞く「料理コラボイベント」の思い ‹前編›

今大阪で注目のレストラン「LACERBA(ラチェルバ)」「agnel d’or(アニエルドール)」「RiVi(リヴィ)」。2019年7月中旬、この3レストランのシェフによる料理コラボイベント「Foodion presents Osaka new wave LACERBA × agnel d’or × RiVi」が開催されました。

昨今ガストロノミー業界においてコラボイベントが盛んです。店舗とは違った空間作りや料理が話題性を呼ぶことが多い一方で、期間限定イベントということもあり一般的にはあまり知られないクローズドなイベントになっているのが実態です。

通常営業とは何が違うのか?なぜそのようなイベントを開催するのか?などの素朴な疑問も含め、今回コラボ直前に御三方からお話を頂きました。前編・後編でお届けします。

■コラボイベントのきっかけ

編集部:
今日はコラボイベント直前にお時間頂きありがとうございます。まずなぜお三方集まることになったのか、簡単に教えていただければと思います。

RiVi(リヴィ)山田シェフ(以下、山田シェフ):
そもそもはラチェルバ藤田シェフが声をかけてくださったからですね。2018年の年末でしたね。ラチェルバ藤田シェフが営業後、リヴィにふらっと遊びに来て頂いた後に、アニエルドールさんに訪問したところ…

LACERBA(ラチェルバ)藤田シェフ(以下、L/藤田シェフ):
アニエルドールに行ったら藤田さんがいなかった。

agnel d’or(アニエルドール)藤田シェフ(以下、a/藤田シェフ):
その日は早く帰らなくてはいけなくて。次の日に「昨日ラチェルバの藤田シェフが寄られてましたよ」とスタッフから聞きました。その瞬間、驚きました。加えてスタッフから「コラボイベントしようって言ってくれてましたよ。」と激白がありまして。「早く言うてや、すぐ戻ったのに!」という気持ちでした。

一同:(笑)

a/ 藤田シェフ:
半信半疑でした。

山田シェフ:
その後に僕からアニエルドール藤田シェフにコラボイベントしないか、と誘いました。

a/ 藤田シェフ:
そうそう。そこで藤田シェフとつながって3人でコラボイベントをすることとなりました。その方がおもしろいかなと。

L/ 藤田シェフ:
シェフ2人のコラボイベントはみんなやってるから、意外性がないかなと。3人ですることはあまりないから、一回やったらおもしろいかなって。

■3人のシェフの出会い

編集部:
そもそもお三方はお知り合いだったんですか?

L/ 藤田シェフ:
実はアニエルドール藤田シェフとは一緒に働いていたことがあります。

a/ 藤田シェフ:
そうなんです。一瞬ですが。

編集部:
いつ頃ですか?

a/ 藤田シェフ:
僕がフランスに行く前なので25歳ぐらいの時ですかね。フランスに行く資金を貯めるためにちょっとだけウエディングでアルバイトしてたんですね。その時たまたま藤田シェフに出会いました。

L/ 藤田シェフ:
僕は副料理長として働いていました。そんな長い間じゃないですけど。

a/ 藤田シェフ:
俺は一瞬でその職場をやめたんです。ただその時、藤田シェフは僕のことをそれなりの料理人だと見抜いてくれました。いちアルバイトなのに「もう君はそんなくだらんことしなくていいから、高度なことやりなさい」と仕事を任せてくれたんです。

山田シェフ:
すぐわかったんですか?

L/ 藤田シェフ:
料理の腕というよりも人間的に見抜いたね。まだ荒々しかったというか、スカスカで雑い部分もあったけど、みんな若い時はそんなもんやし、それぐらいのほうが伸びていったりする。

a/ 藤田シェフ:
一番鼻息荒いときですね(笑)フランス行く前は、自分はなんでもできると思っていましたね。それでフランス行って鼻が折れた(笑)

L/ 藤田シェフ:
その職場で働いているスタッフについてお互いに感じることを話した際に、人に対しての見抜き方がわかっているなと思いました。その後その職場を辞めてからは全然消息は知りませんでしたが、お店オープンしてアニエルドール藤田シェフの存在を知りました。

a/ 藤田シェフ:
ラチェルバさんになる前のタヴェルナ・デッレ・トレ・ルマーケさんの時に、一回「韓菜酒家ほうば」の新井さんと食べに来てくれましたよね。

L/ 藤田シェフ:
とある接待でした。どこ行きたいかを尋ねられてすぐにアニエルドール行きたいって答えましたね。

山田シェフ:
お二人はそういう経緯みたいです。僕は出身がイタリアンですからラチェルバ藤田さんは、もう雲の上のてっぺんのような存在でした。

a/ 藤田シェフ:
でも変な話、僕ら世代からしたらトレ・ルマーケさんと言えば、僕らがぺーぺーの時に独立されて一気に有名になった大先輩です。今でこそ僕らがオーナーシェフになったから先輩方々と交流させてもらっていますが、でも僕らってあくまで下から上がってきた存在なので恐れ多いです。

山田シェフ:
やっぱそうなんですよ。そんな簡単に近づけないイメージなんですよ(笑)

L/ 藤田シェフ:
人によってちゃうけど、僕は個人的には独立したらもう横並び。みんなオーナーなんやし、変な上下関係は無しやと思ってる。

a/ 藤田シェフ:
それは嬉しいですね。僕の場合、上下っていうよりも憧れが強いんすよ。だから藤田シェフもそうですし、「ラシーム」の高田シェフ、「HAJIME」の米田シェフ。その世代って僕らより一個上の世代で、憧れはすさまじいです。

L/ 藤田シェフ:
憧れも今や貴重で、憧れを持っていない若い子たちも増えてきています。若い子たちに誰を尊敬するのと問うと、だれの名前も出てこない。その上、僕らのもう一個上の世代とかのシェフを全然知らなかったりするんですよ。僕が若い時はそういう世代の人に憧れてかっこいいなって思ってがんばれたけれど、今の若い子らの多くは憧れをもってないみたい。

a/ 藤田シェフ:
それはちょいちょい感じるところがありますよね。

L/ 藤田シェフ:
そういうキラキラとした目を持ってる子が少ない。下手したら独立をせっかく果たしたのに目の輝きをすぐ失ってしまうシェフ達も多いですからね。

a/ 藤田シェフ:
僕なんかキラキラしかしてないです!

一同:(笑)

■「憧れること」は一つの才能

編集部:
では今日はとても貴重な機会なんですね。

山田シェフ:
本当にそうですよ。

a/ 藤田シェフ:
僕にとっては、上の世代の人はもう神ですからね(笑)

とある機会に一度だけ「オテル・ドゥ・ミクニ」の三國清三さんをお目にかかる機会があったんですよ。もうほんま震えました。神ですよ。オーラがすごすぎて、やばかったです。

山田シェフ:
なんなのでしょうかね、あの貫禄は(笑)

a/ 藤田シェフ:
しかもめちゃくちゃかっこいいんですよ。にじみ出るオーラが半端ないです。

リヴィ山田シェフ:
アニエルドール藤田シェフと二人でしゃべる時にいつもそういう話になるんですよ。どうやったら、あんな風になれるんだろうなあって。

a/ 藤田シェフ:
自信ちゃいますかね。僕らの世代に一番足らんものはそこですよ。圧倒的に自信が足らない。

L/ 藤田シェフ:
いやでもさ、後からついてくると思うよ。

a/ 藤田シェフ:
独立してもう早6年でしょ?山田シェフなんかもう独立して7,8年ですよね。いつになったら自信つくんやろう(笑)

山田シェフ:
全然わからないです(笑)

L/ 藤田シェフ:
でも憧れを持つこと自体が一つの才能やと思う。俺は学校に教えに行っていた時があって、その時に黒板に「憧れ」って字を書いて話をしてん。「憧れ」は、りっしんべんに童と書く。子供の時のそういうキラキラした気持ちはどうしても大人になったらみんな忘れてしまう。それを大人になっても持っているのは、すごく原動力になる。俺は「憧れを持ち続ける」っていう事自体ひとつの才能だから、君らはいつまでもその言葉を忘れず頑張りなさいって一回教えてん。

山田シェフ:
原動力ですね。灯台みたいな感じです。

a/ 藤田シェフ:
先輩らが前走る姿に追いつきたいんですよ。とにかく追いつきたい。
それと共に、先輩らがこの歳になった時にどの位置立っていたのかが気になります。独立した歳もあると思いますが。僕と山田シェフは38歳で同い年なのですが、先輩たちが38歳ぐらいの時ってどうやったんだろう、って。

L/ 藤田シェフ:
ポンテべッキオの山根シェフは40代のころに既に「モードディポンテベッキオ」をオープンさせてたし、 100人以上の人々の前で講演もしていました。それを真似できるか、と言われたらできないね(笑)

山田シェフ:
その連続なんかなあ。

L/ 藤田シェフ:
昭和のあの世代の方々は大成するのも早かった 。

山田シェフ:
そういう意味で、ただ上の世代と同じことやっててもダメなんじゃないかと思う所もあるんですよ。

L/ 藤田シェフ:
早く駆け抜けられた時代というのもあったのかもね。景気とか、全部含めて。

山田シェフ:
そういう面もあるかもしれないですね。

■コラボイベントをしたいのは、友達がほしいから

編集部:
ポンテベッキオ山根シェフが若いころは、あまり頻繁には行われていませんでしたよね。

a/ 藤田シェフ:
そうですね。いつからやりはじめたんですかね?

山田シェフ:
僕が独立したぐらいだから10年くらいですかね。
でも「〇〇の会」みたいなのはあったじゃないですか。それこそ地方料理人会とかビストロ会とか。

L/ 藤田シェフ:
大阪多かったですね。東京よりもしかしたら多かったかもしれません。

編集部:

最近なぜコラボイベントが行われているのでしょうか。

山田シェフ:
僕は籠っているのが嫌なんですよ(笑)刺激というか、感化される部分があります。コラボイベントやることによってすごい考えますし、それで膨らむ世界がありますし、自分の成長のためですね。

a/ 藤田シェフ:
僕は何なんですかね。ただただ友達が欲しいから(笑)

一同:(笑)

a/ 藤田シェフ:
僕がフランスから帰ってきて独立した時、誰一人調理師の友達がいなかったんですよ。唯一の繋がりは師匠である神戸の加古シェフのみ。
知り合いすらいないから、とりあえず店でやりたいことやろうと始めたら、意外と同業者がお客さんとして来てくれて輪がどんどん広がっていきました。
とりあえず友達がほしかった(笑)

L/ 藤田シェフ:
出身は大阪でしたっけ?

a/ 藤田シェフ:
大阪です。でも大阪ではほとんど働いたことなかったんです。藤田シェフと一緒に働いたのも兵庫県芦屋。でも実は僕駆け出しの頃ちょっと八尾で働いてたんですよ。

山田シェフ:
僕が八尾出身ですから、その話題で一気に仲良くなりました。

a/ 藤田シェフ:
そこから一回飲食業をやめようと思う時期がありましたが、アカンと思ってまた戻って、それから寿司屋で働き、また洋食の世界に戻りました。まともにフレンチで働いたのは加古シェフのとこが初めてですね。

山田シェフ:
そこから藤田シェフが人間関係を広げているのってやっぱりすごいですね。

a/ 藤田シェフ:
ある程度親しくなるのも、考え方が似ていないとなかなか難しいです。そういう人たちを探してるところもある。だから山田シェフが僕の店の近所でお店をやってくれてほんと嬉しかったですね。

初めてリヴィさんの料理を食べた時、山田シェフすごいな!と率直に思いました。そこから交流が始まりましたね。
そこから僕の周囲の人みんなに、リヴィすごいぞと言いふらしています(笑)お客さんにオススメのお店聞かれたら、とりあえずリヴィさんをおすすめしていますね。

山田シェフ:
本当に感謝です。

 

■若いクリエイターへの期待

編集部:
話を戻しますが、今回お互いにお声がけされたのはやはりコラボイベントすることになにか意味があるからだと思います。いかがですか?

L/ 藤田シェフ:
藤田くんがさっき友達探してるって言ってましたけど、僕はどちらかというと友達いらない派なんです(笑)自己完結してるタイプの人間です。
その代わり、映画や本も含めてアートやクリエイター作品のような刺激は好きなんですよ。それも重鎮みたいな完成された人たちではなくて、これから出てきそうな人がいい。発掘ではないですけど、若い感性が好きなんです。そういう観点で2人を見ているのが楽しいんですよね。

山田シェフ:
なんですかそれ、嬉しい(笑)

L/ 藤田シェフ:
若いクリエイターとして見ているんです。先日「大阪はそういったクリエイターが少ない、だから東京のほうが楽しそうだね」という話をしていました。2人は数少ない大阪でのクリエイターです。自分たちでイノベーションしたりクリエイトしたりする人達が増えたら大阪がもっと楽しい街になるのにな、と思いながら日々生きているって感じですね。
今回はせっかく料理という仕事をお互いやっていて触れ合えたら楽しいだろうなって思って声かけました。

>>後編に続く

 

【コラボイベント関連コンテンツはこちら】

▶イベント新作料理の作り方──LACERBA(ラチェルバ)藤田シェフ

イベント新作料理の作り方──RiVi(リヴィ)山田シェフ

イベント新作料理の作り方──agnel d’or(アニエルドール)藤田シェフ

Foodion presents Osaka new wave LACERBA × agnel d’or × RiViコース全品紹介

 


■agnel d’or(アニエルドール)
お問い合わせ:06-4981-1974
アクセス:大阪府大阪市西区西本町2-4-4 阿波座住宅三栄ビル1F
営業時間:ランチ 12:00 – 13:15(L.O) / ディナー 18:00 – 20:00(L.O)
定休日:月曜日 / 火曜日のランチ

■LACERBA(ラチェルバ)
お問い合わせ:06-6136-8089
アクセス:大阪府大阪市北区堂島浜1丁目2−1
営業時間:【平日・土】ディナー 17:00~23:00 (L.O.20:30) / 【火~土】ランチ 12:00~14:30
定休日:日曜日

■RiVi(リヴィ)
お問い合わせ:06-6136-6830
アクセス:大阪市西区京町堀1-16-28 W京町堀ビル1F
営業時間:13時~20時(L.O.)
定休日:不定休

 

文:菊地由華
編集:Foodion編集部
動画撮影:TransTone Co.Ltd.