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2019.03.28 / 特集コンテンツ

ケーキは美学の新たな展開であり創造である

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BoboLEE氏は、もともとデザイナー出身。その経験はケーキ作りに惜しみなく生かされています。BoboLEE Cakeの店舗に足を踏み入れた瞬間、ケーキを食べに来たというよりも、美術作品に陶酔するような感覚になる人も多いとか。この独創的な世界感が彼を有名にした理由の一つでしょう。

彼はどうやって、この独創的なケーキにたどり着いたのでしょうか。キャリアチェンジのためのル・コルドン・ブルーでの「学び直し」がどのように彼を変えたのか、聞きました。

Point1. 芸術の美しさと食べ物の美しさは共通している
Point2. 学校で学んだベースに自身のオリジナリティを加え、初めて作品として成り立つ
Point3. 流行や時代の変化に流されず、諦めずにやり続けることが成功に繋がる

一枚の写真に惹かれ、デザイナーからパティシエに転身

■はじめはインテリアデザイナーだったそうですが。

僕は大学で美術を学び、卒業後は北京でインテリアデザインやイベント会場のデザインをしていました。仕事のヒントになる、他デザイナーの作品写真を日頃意識的に見ていました。

ある時、偶然マギー・オースティン(注1)の作ったケーキをインターネット上で見つけて驚嘆したんです。「こんなに美しいケーキが世の中にあるんだ」と。一瞬で彼女の作品の虜になってしまいましたね。

注1:マギー・オースティン(Maggie Austin)ーーアメリカ・ワシントンD.C.を拠点に活動するケーキ職人。元々はバレリーナであったが、怪我でバレエから離れ、2010年「Maggie Austin Cake」ブランドを立ち上げた。華やかなシュガーフラワーを飾ったウェディングケーキがシンボルマークで、ハリウッドのセレブから絶大な人気を集めている。

■35歳でデザイナーからパティシエになろうと決めたそうですが、なぜこんなに大きなキャリアチェンジをしたのですか?

僕はマギー・オースティンの作品を食べ物としてではなく、芸術作品として見ています。美術専門の僕にとって、食べ物と芸術には多くの共通点があります。僕はもともと何かを作るのが好きなので、芸術の美しさと食べ物の美しさを自分の手で組み合わせることができたら理想的だと思い、キャリアチェンジに踏み切りました。


ストロベリー・バーベナ−−BoboLEE Cake

キッチンデビューはル・コルドン・ブルー・ジャパンで

■ル・コルドン・ブルーを選んだきっかけは?

当初はマギー・オースティンに教わりたく、インターンを申し込んでいました。インターン生にはかなり高いレベルの製菓知識が必要だったので、短期間で菓子作りの基礎をしっかりと学べる学校を調べました。(注2)ル・コルドン・ブルーの評判は前から知っていましたが、当時まだ中国校がなく、日本校に中国語通訳付きコースがあることを知りました。ここなら自分にぴったりだと直感しましたね。

(注2)中国語通訳付きフランス菓子本科講座は3カ月ごとに開講。その他英語や、日本語で受講できる講座も充実。詳しくはル・コルドン・ブルー日本校まで。

■カリキュラムやクラスメートはいかがでしたか?

当時、菓子ディプロムは2クラスあり、合計で21人いました。僕のクラスは実家が飲食店という人や、ベーカリーを経営している人など、全部で12人ぐらい。授業は、実演と実習に分かれています。実演授業では、先生が菓子作りのプロセス全般をデモンストレーションで講義し、実際に菓子を作りながら要点を説明してくれます。内容をしっかりメモしておかないと、実習ができません。
実演の授業では、二十数名の生徒が一緒に授業を受け、それから午前と午後のクラスに分かれてキッチンで実習します。僕たちのクラスは朝8時半にキッチンに入るので、7時には起床しなければいけませんでした。電車に乗って、8時には学校に着きます。10分遅刻すると教室に入れてもらえません。とても厳しいのですが、生徒にしっかりとした学習態度を培ってもらうことが目的だと思います。お昼の休憩時間もとても短く、授業全体が無駄なく組まれていました。


ル・コルドン・ブルー在学時BoboLEEの作品

スパイスとの出会い、自分のカラーを確立

■首席でル・コルドン・ブルーを卒業したそうですが、卒業制作の作品を教えてもらえますか?

マギー・オースティンの作品を卒業制作のデザインの参考にしました。彼女はバレエダンサー出身で、バレエスカートのフリルをデザインの一部に取り入れたフラワーケーキがシンボルです。僕はシンプルで洗練されたデザインが好きで、それは今の作品にも通じています。
卒業制作で最も評価されるのは、作品のデザインではなく、味だと思います。僕はホワイトチョコレートフランボワーズを作りました。今の店でも売っています。他店とひと味違うのは、僕のケーキにスパイス(バジル)が入っていることです。

■確かにケーキにバジルとはあまり聞きませんね。

そうですね。

学校で習うレシピは最も基本的なものですので、卒業作品はそこに自分でアイディアを加え、発展させていきます。卒業制作のレシピは全員、事前にシェフにチェックしてもらいますが、初めはレシピに個性がない、と指摘されました。そこで本を色々読むうちにスパイスがいいのではないかと考えました。

スパイスは料理でよく使用されますが、菓子作りではなかなか見かけません。僕はスパイスとケーキの可能性を試してみたのです。

卒業審査時にシェフに材料を聞かれ、驚かれたことを覚えています。

その結果、今も僕の様々なケーキにスパイスを生かしています。例えば、山椒、胡椒、ローズマリーなど、なかなかレアな組み合わせでしょう(笑)。以前にデビット・ベッカムのディナーパーティを担当したときにも、「中国らしさを取り入れて」という彼の要望に応え、四川花椒とジャスミンをケーキに使いました。


デビット・ベッカムのディナーパーティにて

■ル・コルドン・ブルー・日本校で得た最大の収穫はなんですか?

学校で学んだ「仕事へ妥協しない、真面目さや細部へのこだわり」が、現在の店作りにとても役に立ちました。たとえば、僕は毎日お店に来ると、まずケーキのコーティングをチェックします。ケーキの表見に泡が立っていないか、こうした細部へのこだわりから一日が始まります。これは非常に大事なことです。他のパティスリーに行っても、こうした細かい部分を入念にチェックします。ケーキの見た目は、お客さんが得られる最初の情報です。見た目に引き寄せられて初めて、ケーキに関心を持ってもらい、味わってもらうことができるからです。

マギー・オースティンのインターン生からBoboLEE Cakeの立ち上げまで

■ル・コルドン・ブルー・ジャパンを卒業してからどうされましたか?

マギー・オースティンからインターン受入れに当たり、フォンダンフラワーの作品を写真で送るように言われていました。ル・コルドン・ブルーで菓子の基礎を学んだことに加え、フォンダンフラワーの作り方はネット動画を見て独学で勉強しました。そして、卒業後、見よう見真似で作った2輪の花の写真を彼女に送りました。「いつ来れますか?」と返信があった時は、もう嬉しかったですね。そこからアメリカへ行って三ヶ月間インターンをしました。

クライアントから注文が入ると、スタジオでマギーと一緒にケーキを作り、マギーの元で様々な実務を学びました。

■アメリカから戻ってすぐ起業されたのでしょうか。

アメリカでのインターンシップ終了後、すぐに2014年に上海でケーキスタジオをオープンしました。

スタジオをオープンした時が一番しんどかったです。留学先から帰ってすぐの起業だったので、お金もなければ知名度もありませんでした。当然、売れ行きもイマイチでした。

スタジオではフォンダンフラワーのウェディングケーキを看板商品にしよう、と最初から決めていました。もちろん上海でもフォンダンフラワーケーキを売っているのは僕だけではありません。ですが、友達がSNSで「これほど美しくハイクォリティなケーキを作っているのはBoboLEEしかいない」と発信してくれたのです。これを機に瞬く間に評判が広がり、国内の主なファッション誌から取材が殺到しました。個人店で広告予算がまったくなかった僕にとっては、とても有ありがたかったです。


プチ柚子ケーキ−−BoboLEE Cake

■人気が出てきたスタジオを閉め、店舗オープンまでの道のりは計画されていたのですか。

いえいえ、全くです。実は、このスタジオを閉めて今の路面店をオープンしたのは、とあるお客さんのおかげなんです。スタジオの賃貸契約が切れ、お店を閉めようかと悩んだ時、「こんなに綺麗でおいしいのにもったいない!」ととあるお客さんの言ってくれたのです。この一言が、なんとかこの仕事を続けたい、という僕の意欲を後押ししてくれました。

今の路面店は、もともと不動産管理会社の倉庫でした。中も外もボロボロで、床は泥と石ころだらけでしたね。でも、入り口にある樹齢百歳近い大きな三本のくすの木が魅力的で、ここを借りようと決めました。
開店準備中は、そんなに大きなビジョンは描いていませんでした。ただただスタジオで請け負っていた仕事をそのまま続けながら、友達とお茶を飲みながら談笑するスペースを持てたらいいな、なんて思っていました。しかし、オープン初日に予想をはるかに上回るお客様が来店されたのです、これには僕が一番ビックリしました。一日中ケーキを作り続けていて、まったくお店が回らなかったですね(笑)。

スタジオをオープンしてから早5年経ちました。今はスタッフも雇うことができ、だいぶ落ち着きましたね。普段は僕が商品開発を担当し、スタッフに製造を任せています。

■商品開発以外の取り組みは?

今は時間のあるときに菓子教室もやっています。主にフォンダンフラワー教室ですね。ほかの菓子教室と違う点は、ただ菓子の造花を作るのではなく、芸術性を追求していること。たとえば、他の人たちは本物そっくりにフォンダンフラワーを作りますが、僕は自分の芸術スタイル、創造力をそこに表現しています。

フランスのケーキは美学を追求しています。そのためデザインとフランス菓子には共通点があります。菓子の味を整えることは、そんなに難しくありません。ですが、優れたデザインを作ろうとすると難しくなります。ケーキに自分の個性を持たせ、人々を引きつける必要があるからです。


ウェディングケーキ−−BoboLEE Cake

何歳になっても初心を忘れず、菓子作りの道を歩み続ける

■夢について教えてください。

とにかく自分の好きなことをやり続けたいです。他店舗展開でお金を稼いだとしても、お菓子作りの教室にエネルギーを注ぎたいのです。教室を通してもっと多くの人にフォンダンフラワーケーキの美しさを体験してもらうことが、長期で実現したい夢ですね。何歳になっても挑戦し続けたいです。

これからは、上海や深セン、北京などでもっと出店したいと考えています。

■どうすれば初心を忘れずにいられますか?

やはり諦めないで続けることです。ル・コルドン・ブルーの卒業生の多くは、お店やスタジオを経営しています。僕と同じく、無名のうちは売れませんから資金上の問題に直面します。僕が今日までやってこられたのは、自分のコンセプトをしっかり持ち、こだわりを大事にし、流行に流されなかったからです。モノ作りが好きな性格だからかも知れません。一途にただいいものを作りたい、その一心で諦めず、地道に作って食べてもらいましたね。

■ご自分のケーキを通して食べ手にどんなメッセージを伝えたいですか?

最初の頃はお客さんが自分のケーキについてどう思っているか気になっていました。お客さんに電話をしてケーキがどうだったか聞いてみたいと思ったことが何度もありました。開店したばかりの頃、一口食べて帰ってしまったお客さんに、どうしてなのか、不味かったのか聞いてみたいと思ったこともあります。でも段々と気にならなくなりました。考え抜いたて作ったケーキの中にある素直で誠実な味は、わかる人にはわかりますし、好きな人は自ずと好きになってくれます。僕は全力で自分のするべきことをしていればいいと気づいたのです。

ル・コルドン・ブルーでの「学び直し」

「わかる人にはわかりますし、好きな人は自ずと好きになってくれます。僕は全力で自分のするべきことをしていればいいんです。」この言葉から、初心を忘れず自分の夢を大切にしている彼の姿勢が伺えますね。何歳になっても学び直しに遅すぎる、ということはないのですね。


聞き手、文:王文嘉、写真提供:BoboLEE Cake
提供:ル・コルドン・ブルー・ジャパン