2019.11.27

インバウンド対策と業務効率化から考える今後の飲食業界の働き方丨HAJIME 米田肇 ✕佰食屋 中村朱美

来年にオリンピックを控え、「インバウンド」海外ゲストのさらなる増加が予想される一方で、飲食業界の「人手不足」は、深刻な課題となっている。
2019年秋に、飲食業界における二大課題である「人手不足」と「インバウンド対策」をテーマに、飲食業界支援サービスを手掛ける「TableCheck」代表・谷口 優氏と「クックビズ」代表・藪ノ 賢次氏がイベントを開催した。また業界にイノベーションをもたらす二人のゲストスピーカーとして、「佰食屋」を手掛ける株式会社minitts 代表 中村朱美氏、三つ星レストラン「HAJIME」オーナーシェフ米田 肇氏が招かれ、飲食業界の「これからの働き方」について、4名でのディスカッションが行われた。
飲食業界に勤務する100名が参加したイベント内容をお届けする。

ディスカッションオープニングスライド

スピーカー紹介

株式会社TableCheck(テーブルチェック)代表取締役 谷口 優 飲食店の空席状況をリアルタイムで検索・予約できるサイト&アプリ「TableCheck」、飲食店向けの予約・顧客管理システム「TableSolution」を提供。国内外で高い評価を受け、世界規模での導入が進んでいる。>>谷口氏単独インタビューはこちら

クックビズ株式会社 代表取締役 藪ノ 賢次 飲食・フード産業に特化した人材サービスを提供。飲食業界が抱える人材不足という課題に対し、人材サービスの提供を通じて、多種多様な人材が 活躍できる社会を創造し、『食に関わるすべての人の成長を実現する。』の実現を目指した事業を展開する。

「HAJIME」オーナーシェフ米田 肇 大学卒業後エンジニアを経て、料理人となった異色の経歴を持つ。独立後、わずか1年5か月というミシュラン史上最速で三つ星を獲得。合わせてアジアのレストランベスト50に選ばれ続けるなど、海外からも高い支持を集めている。>>米田氏単独インタビューはこちら

株式会社minitts 代表取締役 中村朱美 1日100食限定をコンセプトに、 美味しいものを手軽な値段で食べられるお店「佰食屋」を開業。著書に「売上を、減らそう。たどりついたのは業績至上主義からの解放」がある。次世代のマネジメントスタイルとして飲食業界以外からも高い注目を集めている。


イベント主催企業の飲食支援サービス紹介

まずはじめに、飲食業界の課題解決に取り組む「TableCheck」「クックビズ」の2社が提供しているサービスをご紹介したい。

TableCheck 代表取締役の谷口氏

■業務効率化とインバウンドの重要性(TableCheck 代表取締役の谷口氏)

谷口氏:提供しているプロダクトは、レストランを予約したいお客さま向けの「TableCheck」、そしてその予約を管理したい飲食店向けの「TableSolution」の二つです。現時点で21カ国、5000店舗弱くらいのお店にご利用いただいております。
日本の人口がどんどん減少して高齢化が進んでいく中、当然ですけども、海外の胃袋を取っていかないと外食産業は先細ってしまいます。
すでにインドや中国のように日本を凌駕している国もある中で、今後日本の市場規模が大きくなることはないと考えると、外国人の胃袋を取っていくしかないわけです。また日本人の傾向としては外食が減り、中食の割合が上がってきていますが、外国人の外食における消費支出は伸びています。

当社ではこうした現状や飲食店のニーズに応えるために、予約・顧客管理システムを提供しています。 例えば、24時間365日リアルタイムの空席情報に基づいて予約ができたり、多言語対応していたりなどです。 これまで人手を介する非効率な管理によって発生していた課題を、テクノロジー活用で解決できるように取り組んでいます。 結果、弊社のミッションである「DINING CONNECTED 世界中のレストランとカスタマーを繫ぐ最良の架け橋」になれればと考えています。

クックビズ株式会社CEOの藪ノ氏

■関西のインバウンドと人材不足対策(クックビズ株式会社CEOの藪ノ氏)

藪ノ氏:弊社では、飲食店向けの人材関連サービスを提供しております。弊社のミッションは「食に関わるすべての人の成長を実現する」ということで、単に人材サービスを提供するということではなく、クライアントの企業や店舗の成長にコミットしていくことを目指しています。

まずインバウンドについてですが、昨年は年間で3000万人以上の方が日本に来られました。これは過去最高の数字です。その中で、関西には1142万人ほどの方が来られているということで、全体の三分の一くらいを占めています。

人材不足への対策については今後人手不足はさらに悪化していくことが予想されるのですが、現時点でも最近の傾向としては受け身の求職者が多く、お店の方から積極的に情報発信をしていかないとなかなか採用には結びつかないという状況です。
弊社の「ダイレクトプラス」というサービスでは、皆さまから求職者に直接声を掛けることができます。同じようなスカウトサービスは弊社だけでなく各社が用意しているので、ぜひ活用していただければと思います。

「HAJIME」オーナーシェフの米田肇シェフ、「佰食屋」代表取締役の中村朱美氏を迎えてのパネルディスカッション

続いて、先の2名と本イベントのゲストスピーカーである米田肇氏、中村朱美氏、4名のパネルディスカッションが1時間半近く熱い議論が交わされた。

ディスカッション登壇者写真

■最近のインバウンドによる海外ゲスト事情について

司会:まずはこちら「最近の関西のインバウンドで感じることは?」からお聞かせ頂けますでしょうか。

米田氏:当レストランHAJIMEの場合、海外からのお客様が8〜9割で、そのなかでも香港のゲストが1日の4テーブルくらいを占めています。定員18名のお店ですが、4テーブルだとだいたい10名くらいですね。今年は政治の情勢などで香港からのキャンセルが相次ぎ、かなり影響がありました。
ですから「インバウンド」と大きなモノで括るのではなく、それぞれの国・地域の政治システムや経済システム、実際に行われていることも考えた上で、個別にPR戦略を立てていく必要がある なと感じています。

また、その国で料理ランキング賞の発表会があれば出かけていき、向こうの料理人と一緒に料理するようなこともやっています。日本からSNSでどんなに発信しても効果は限定的なので、こちらから海外へ行ってアピールすることは重要です。

「HAJIME」オーナーシェフ米田 肇氏

中村氏:佰食屋の場合は韓国ゲストが多いです。7年前にたまたま韓国人のお客さまが来られ、それならということで「こんにちは」とか「ありがとう」といった簡単な単語だけ韓国語で言えるようにしたんです。そうしたら韓国のお客さまに喜んでいただけて、それを繰り返しているうちに、韓国の食べログのようなサイトで京都のレストランランキングで1位になったと聞きました。

ただ、韓国のお客さまが増えたとき、そこでお店の雰囲気をガラッと変えなかったのが結果として良かったと思います。日韓の情勢もあり今は外国人観光客の方が一割くらいですが、また韓国の情勢が戻ってきたら、全体で三割くらいの比率に落ち着くのではないでしょうか。

司会:現時点で日本人のお客さまで繁盛しているようなお店に対して、インバウンドに関するアドバイスはありますか?

藪ノ氏:人手不足もそうなんですが、人手不足になってから人材募集すると定着率が悪くなるんですね。やはり困っていない、国内のお客様で困っていない状況で次の施策を考えるような、余裕のあるときにこそインバウンド対策をやっていただきたいです。

たとえば外国人の場合は数年に一回しか日本に来ないため特別な思い出を作りたいお客様も多いと思います。そのような方向けのコースメニューを、若干高くても設定することができるのではないでしょうか。そのような形で、いわゆる質の良い外国人のお客さまを取り込んでみるということを、余裕があるうちにやるといいのではないかと思います。

「TableCheck」代表・谷口 優氏と「クックビズ」代表・藪ノ 賢次氏

司会:ありがとうございます。谷口さんに伺いますが、東京と関西のインバウンドで違いを感じられることはありますか?

谷口氏:僕は関西の事情は詳しくないので東京のお話をすると、数年前お鮨屋さんにお話しに行くと「外国人なんていりません」なんていうことをおっしゃっていたんですけど、これがここ3〜4年くらいでだいぶ変わってきました。
結局、どのお店も外国人に対して先入観があったんです。でもフタを開けてみたら非常にいいお客さまだね、へたしたら日本人のお客さまよりマナーが良いね、客単価も高いねということになりました

僕が思うのは、繁盛している店とかトリップアドバイザーでランキングが高いお店は、シンプルに英語版のメニューがあったりとか、店主がカタコトでもいいから英語で接客したりとか、大した会話力じゃなくても「どこから来たんですか」みたいなシンプルな接客をしているところが多いということです。ただそれだけでも、やっぱりお客さまは「おもてなしされてる」と感じるのではないでしょうか。

三つ星レストラン「HAJIME」オーナーシェフ米田 肇氏

■海外ゲストとのコミュニケーション

司会:米田さんのところでは接客は英語でされていますか?

米田氏:2008年にお店をオープンして、海外からのゲストが入り始めたのが2013年くらいからです。そこまでは日本人でほとんど埋まっていて英語が必要ありませんでした。でもそこから海外のゲストが増えていって、50〜60%くらいまで増えたら否応なしに英語を勉強しないといけません。結果スタッフは自分で勉強し始めて、今は普通に話してます。

司会:中村さんも英語を使うことは多いですか?

中村氏:少しでも英語ができるとコミュニケーションは取りやすいと思います。
ただやっぱり、母国語で話しかけてあげることが、心の距離を縮めるポイントになるなと感じていますね。だからこそうちの店では、韓国の方がいらっしゃれば「いらっしゃいませ」を「オソセヨ」と言います。
そういう感じで最初にひと言かけて、あとはメニューの説明を呪文のように定型文で覚えたものを話します。周りからあの人韓国語喋れるの!?っていう視線が気持ちいいんです(笑)
ひとこと「オソセヨ」って言うだけでニコッとして振り向いてくれて、それが絶対口コミにも効果があるので、皆さんもぜひ、韓国語でも中国語でも、香港でもなんでもいいのでやってほしいと思います。

「クックビズ」代表・藪ノ 賢次氏

■人材採用とマネジメント

司会:藪ノさんは中途採用を紹介されている立場として、飲食店の人材採用についてどのように見ておられますか?

藪ノ氏:これまでは「離職防止」の施策を何もしてないお店が多かったと思ってます。要は退職に対して交渉しないということです。ところが最近では様子が少し変わってきています。
私どもの仕事は退職・離職をした方を次の職場に導くことですが、既存のお店の引き止めにあった、引き止めにあたって条件を見直していただいたということで、内定を辞退されるケースが増えています。

司会:現在サービスを利用されている企業さんやお店では、どういった人手不足対策をされていますか?

藪ノ氏:今まではいい商品を作る、いい食材を仕入れる、いい接客をする、後はどこに店舗を出店するかという不動産の部分が経営者の頭の大きなウェイトを占めていたんですが、これが変わり始めています。

クライアントの人事部長とか人事責任者から「うちはこういった条件でこういった店舗展開していくので、こんな人材が欲しい」という情報提供の電話が鳴り止まないんですね。ここ1、2年くらいの大きな変化です。

今までのように採用・募集すれば来るという時代から、なにかPRしないと来ないという時代になってきたということでしょう。我々のようなエージェントに対してどんどん情報を出していって、「そうした情報があるからうちに来てほしい」というスタンスになりつつあります。

司会:中村さんのところは特殊な採用をされているそうですね。

「佰食屋」を手掛ける株式会社minitts 代表 中村朱美氏

中村氏:うちはハローワークしか使わないんです。アルバイトもハローワークで採用しているので、求人にお金を使ったことがほぼないという状況ですね。
あと、うちでは働いている方がほとんど辞めないので採用自体をあまりしていません。
以前ハローワークで一週間募集を掲載したら、10人ぐらい応募がありまして…ちょっと多すぎるので、途中で掲載をやめました。

なぜそんなに求人に反応があるのかというと、うちではランチしかやってないからというのが大きいと思います。また働く時間も自分で選択できたりと、フレキシブルなスタイルのおかげで、働く内容以上に働く環境への満足度がすごく高いですし、入ったら快適すぎて誰も辞めないという状況です。
仕事内容はいったん置いて、環境をまず整えることに注力してきたことで、求人にお金がかからなくなったというケースだと思います。

司会:藪ノさんは中村さんの採用手法についていかがでしょうか。

藪ノ氏:とてもすばらしいと思います。基本的に人材採用というのは、差別化するか、人材不足の中を徹底的に戦い抜くしかなくて、人事不足だと言いながら戦わず、差別化もしないお店は選ばれません。なので中村さんが取られている戦略はとても素晴らしいと思います。
ただ、商売として成り立つのかな?というか、これでちゃんと収益が出ているというのが不思議ではありますけど。

中村氏:よく言われます!笑
うちでは毎日100食と決めていて、しかも一定のお客さまをお断りするのが前提になっています。つまり毎日150人のお客さまを集めておいて、50人を断るというビジネスタイプを貫いているんです。

5人の従業員で100人のお客さまを回すということをずっと維持できれば、うちは黒字です。
一方で200人のお客さまを目標にして従業員を10人にしたらどうなるかというと、毎日200人は集められないんです。
なので常に100人をクリアできるということ、そのために一定のお客さまを断る状況を作るということが、経営を安定させる一番の状況だと私は思っています。
「利益を先延ばしする」という考えで、トレンドを作らず、一気にパイを食いつぶさず、ちゃんと長く続く飲食店というのを念頭に置いて、50年、100年と続けられるビジネスタイプを貫こうと思っています。

「TableCheck」代表・谷口 優氏

■働き方の多様化、ビジネスモデルの多様化

司会氏:谷口さんは中村さんのビジネスモデルに対してどう思われますか?

谷口氏:僕の場合はグローバルに通用するテクノロジーカンパニーを作っていきたい、より多くの人にサービスを提供したいという思いが強いので、そういう欲って出ないのかなと…。

中村氏:私はあまり元々欲がないというのもあるんですが、ビジネスを大きくすることより、輝かせたくなるんですね。そのために一番大事な要素は希少価値だと思っています。フェラーリとかもそうだと思うんですけど、欲しい思う人の数よりちょっとだけ少なく製造するような。
私は、希少価値をビジネスとして作り出すことが大事だと思っていて、だからこそあえて上限を決め、これ以上売らないというような価値を維持する必要があると思っています。

司会:米田さんはどのように思われますか?

三つ星レストラン「HAJIME」オーナーシェフ米田 肇氏写真

米田氏:いいと思います。基本的には自分自身が求めるものによって、いろいろな仕事のスタイルがあったらいいと思うんですよね。すごくお金が欲しいというふうに、お金をプライオリティの第一位に持ってくる人がいたり、自分の成長を一番上に持ってくる人もいますよね。周りのみんなが幸せになることが自分の幸せというような働き方を選ぶ人もいます。

いろいろな働き方があっていいと思うんですけど、今の政府の方針というのは均一化なんですよね。みんな一緒にして、同じ仕事のやり方をさせようとしている。

司会:Facebookでも、今の働き方改革に異論を唱えておられました。

米田氏:僕は学校でそんなに点数が良くなかったんですけど、僕の友人でゲームセンターばかり行って塾にも行かないのに、ずっとオール5の子がいたんです。
その子は学校でしか勉強しなかったんですけど、じゃあ僕が同じようにやったら同じ点数が取れるかといったら、取れないわけです。

でも社会に出ていきなり労働時間がビシって決まっていて、能力の高い人間はこの8時間の労働時間で成長できるかもしれないけど、そうじゃない人間はもうちょっと仕事をしたいとかあるわけです。
全部を均一化してしまうと、能力がない人間はもうそのまま勉強するなといわれているような気がしますから。そこが難しいところかなと思いますね。

司会:中村さんのところで働き方について行われている工夫などはありますでしょうか。

「佰食屋」を手掛ける株式会社minitts 代表 中村朱美氏と三つ星レストラン「HAJIME」オーナーシェフ米田 肇氏

中村氏:うちは障害者の方もいらっしゃいますし、70歳以上のおばあちゃんも3人いらっしゃいますが、基本的に同じ時間、全員同じ仕事をしてもらうというスタンスです。

ただ業務効率を徹底的に良くしたり、業務の指導を簡単にできるようにしているのはポイントかもしれません。うちのお店にはメニューが3品しかないんですよ。ひたすら定食を3メニュー、毎日ずっと出し続けるというスタイルです。

3つだけのメニューを一日100人出すというのを永遠に繰り返していると、誰でも覚えるんですよ。メニューも覚えるし説明も覚えるし、やりかたも覚える。70歳のおばあちゃんにだってできるようになる。だからこそうちではメニューが3品なんです。
ただし3品のクオリティはミシュランのレストランにも負けないレベルにしたいという気持ちです。数を絞ることで、クオリティが高いものを誰もが再現できるようにしています。

■テクノロジーができること、できないこと

司会:最後のテーマ、飲食店の業務効率化についてです。米田さんはいろいろなインタビューに登壇されていて、テクノロジーに対してすごく前向きなお考えをお話しされています。そのあたり、今はどういったところに関心があって取り組んでおられるのかをお伺いします。

米田氏:基本、飲食業で起こるミスは人間の失敗なんです。その日の体調や精神の状態によって、今日はしんどいからやりたくないとか、そういうのが仕事のクオリティに影響してしまいます。そこをできるだけ、コンピューターやロボットに代用していければと思っていますね。一応そういうことを大手の研究所に提案したりもしているので、もう10年くらいしたら、いろんな技術が厨房に入ってくると思います。そういうことに今後も協力していきたいです。

司会:あるインタビュー記事の中で、Googleみたいなクリエイティブな集団を目指しているとおっしゃられていました。米田さんが考える「クリエイティブな集団」というのは、飲食業界にとってどんな存在でしょうか?

米田氏:大前提として、飲食業っていうのはすごくいい仕事だと思っています。美味しいものを作って、みんなを元気にするという意味ですごくいいんですけど、ただ根本的なベースのシステムが労働集約型産業といわれる、いわゆる手を使ってやる産業なんですよね。

徹底してやろうとすると営業時間外の準備も多くなるし、営業時間が一緒でも、掃除をきちんとしなければいけない。そういう部分を、もう少し短縮していかなければいけないと思います。そして営業している内容をもっと良くして、金額もアップして、みんなの給料や労働環境も良くしていきたい。

基本的に今までの飲食業というのは、人口が増えていく中で発展してきた産業なんですよね。今後は人口が減っていくので、前と同じような方法では経営はうまくいきません。新しい能力であったりとか、そこに何かを加えることが重要になってくると思います。

司会:中村さんの著書で、ロボットにもできる仕事を人間がするからこそ生まれる改善があるいうものがありました。たとえばどのような改善が考られますか?

「佰食屋」を手掛ける株式会社minitts 代表 中村朱美氏

中村氏:オーダーをとったりとか、配膳したりというのは最終的にはロボットでもできると思うんです。でも私が、あえて人間でやりたいと思う理由は、人間ならお客さまの行動とか顔色とかを観察できるからなんです。

いろいろなことを観察できるのは、やっぱり人間ならではだと思います。お客さまがお箸を落とされたら、声をかけられる前にお持ちできますし、ご飯を食べたあとにカバンをゴソゴソされたら「薬を飲まれるな」ってわかるのでお水を持っていきます。
でもきっとAIでは、登録してあげないとそこまでできないと思うんですね。飲食店という、まさにお客さまと直接接する仕事の場合、人間が直接行うサービスは、暖かみとか愛情とか、また来てもらうきっかけとかを作りやすいんじゃないかなと思います。

司会:本日は長時間様々なお話をして頂きありがとうございました。

 

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イベント会場の様子写真


編集後記

働き方改革が叫ばれる昨今、飲食業界においても例外ではない。飲食業界の労働環境の印象といえば長らく、低賃金、重労働、長時間労働とされ、専門学校を卒業しても他業種に進む人も多く、不人気業種とされていた。

サービス業、特に飲食業界内で通念としてあったのは「お客様は神様」といった顧客至上主義だ。
お客様第一を掲げるのは商売として間違った考えではないし、素晴らしい理念だと思うものの、それが行過ぎるとしわ寄せがそこで働く従業員が被ることになり、疲弊して辞めてしまう。猛烈に働き、生活の向上を求めた時代から、お金以外の共感する事が必要になった時代にこれまでの価値観がそぐわないものになってしまった。
働き方を改めなければならないと多くの飲食経営者は気づいており、その具体的施策を模索し始めている。さらに日本の人口が下げ止まらず、インバウンドによる海外ゲストが増える中でどのように対応していくかといった外部環境変化も伴う大転換期だ。

今回のイベントで登壇した「HAJIME」米田 肇氏、「佰食屋」中村 朱美氏は、これまでとは違った働き方を実現している次世代の経営者であるが、2人はあまりにも対極に位置している存在だ。
「HAJIME」は3つ星レストランとしてハイクオリティな料理を提供するレストラン。かたや「佰食屋」はメニューが3つという町の定食屋さん。客単価も6万以上と、1000円程度とまさに対極だ。

飲食業界とひとくくりに言っても、様々な業態、料理ジャンル。個人店からチェーン店までスタイルも様々。
「HAJIME」や「佰食屋」は特殊性が高く、他の店でそのまま取り入れることはできないかもしれない。しかし2人のような、”これまでの在り方に囚われない発想と創意工夫”によって、高い競争力を維持しながら、他職種と比べても遜色ない魅力ある職場を実現できるのだということを証明しているロールモデル(模範)ではないかと思う。

どちらがすごいという事ではない。どちらも素晴らしいお店であり、働き方であり、生き方ではないだろうか。
そしてロールモデルが2パターン、3パターンだと数が決まっているわけでもない。成功モデルはお店の数だけあっていい。自分だけの魅力的な店作りを目指せる。そういう多様性が認められる、また求められている時代ではないかと思う。


共催:株式会社Tablecheckクックビズ株式会社

 

(文:市原 孝志、写真:岡 タカシ)