Foodion │ 一流シェフ・料理人のプロフェッショナル論。

夢は世界に和食を届けること。厳しい経験を価値に繋げる、バイリンガルの浪速割烹の担い手。

万ん卯 別館
吉田 年宏
高級飲食店が立ち並ぶ大阪・北新地で、35年以上の歴史を誇る日本料理「かが万」が手がけるおでん専門店「万ん卯」。素材の一切に妥協せず、日本料理の技を注いだ料亭仕込みのおでんを提供する。ミシュランガイドにも掲載される名店だ。そんな「かが万」で修業を積み、現在「万ん卯 別館」で店長を務める吉田年宏さんに、料理人としてのこだわりやスタッフに対する想いを伺った。

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■「和食」の世界へと導いたヨーロッパ

この世界に入られたきっかけは?

吉田氏:
僕は大学を卒業し、23歳からこの世界に入りました。実は別の会社に内定をもらっていたのですが……それを辞めて料理の道に入ることにしたのです。

僕は親の仕事の関係で、5歳から10歳までイギリスに、そして15~20歳まではベルギーに住んでいました。その後、普通に日本の大学へ行き、就職活動もしたのですが、どこかに「またヨーロッパで暮らしたい」という気持ちがあったのです。父の転勤で日本に帰ってきましたが、僕はそのままヨーロッパに住んでいたいくらいでした。手に職をつける方が海外で暮らす道に近いのではないか。そう考えて料理の世界に飛び込むことにしたのです。

 

最初から和食の世界に入ろうと考えていたのですか?

吉田氏:
小さい頃から海外で暮らしていたせいか、日本に対する意識や、自分が日本人であるという気持ちが強くあり、洋ではなくあえて和食の道を選びました。日本は上下関係もとても厳しいですし、義理人情じゃないですけれども、そういった日本の文化がとても魅力的で、惹きつけられたのです。「板前さんってカッコいいな!」というのもどこかにあったと思います。

そこで学生の頃にアルバイトしていたフレンチレストランのオーナーに「実は和食の道へ進みたい」と相談したところ、「大阪にいいお店がある」と紹介して頂き、現在店長を務める「万ん卯 別館」の母体である「かが万」へ入ることになりました。

 

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■料理以外も含めた様々な修行の経験が、将来自分を活かす財産となる

初めて料理の世界へ入られてどうでしたか?

吉田氏:
最初に入ったのは「かが万」本店でした。掃除や使い走りなどのいわゆる「追い回し」で、本当に雑用ばっかり。厳しい世界のため、下が入ってきてもなかなか続かなくて、すぐ辞めてしまったりします。正直言いますと僕も辞めたいと思ったことはしょっちゅうでした(笑)。

実は「かが万」では最初にいきなり調理はしません。最初はカウンターの後ろで手伝ったり、フロアでサービスを担当したり…。お客様と接することの大切さを「かが万」ではとても大事にしていますし、料理を作る時に、はじめてその経験が活きてくる。裏方ばかりで急に調理してもなかなかイメージが湧いてこないのですが、お客様がどういう風に思うかなどが想像できるようになってくるのです。

本店にいたのは7年ほどで、徐々に盛り付けの仕事などをさせてもらえるようになりました。また他に、器の管理を長く担当していましたが、季節やメニューに応じた器の準備など、器に関する様々なことを全てやっていましたので…仕事を終えて2時間寝られるかどうか…という日々が続きました。ただ、今思うと、こうした料理以外の経験も店の運営にも活きています。

 

料理をするまでに長い道のりがあったんですね!最初に調理を任された時はどんなお気持ちでした?

吉田氏:
僕が調理を担当させてもらえるようになったのは、入って5年目の頃でした。やはり震えましたね。ちゃんとしなきゃいけないと思う程、緊張してしまって上手くいかなかったりして。今でこそ、若手にはこちらから指導したりという風になりましたが、昔は先輩に聞いても教えてくれなかったり(笑)。今はその辺が本当に違ってきたなと思います。

 

時代と共に教え方も随分変わってきているのですね。吉田さんにとっての師匠とはどなたですか?

吉田氏:
僕にとっての師匠はやはり「かが万」の主人・坂博雄さんです。今は73歳となり、調理場に立つことも少ないですし、直に指導していただくことは無くなりましたが、ひとりひとりを見て、「どうしたらその人間が活きるか」ということを常に考えてくださっています。そうして見てくださるからこそ、続けられてこられた。現在「かが万」グループでは、主人の「目が届く範囲で店を出す」という考えから、北新地の中で8店舗の店を出しています。今も毎日、順に全店を回っておりますが、主人が店に入った瞬間に空気が変わるので解りますね。

 

とても強い子弟関係を築かれているのですね!他に厳しい下積みを乗り越えてこられた秘訣はありますか?

吉田氏:
最初に自分自身がどんな目標を持てているか?だと思います。やはり誰しもが「最後は独立して自分の店を持ちたい」と思いますから…夢への強い気持ちがあれば頑張れるのではないでしょうか?僕も「いつかはヨーロッパで店を出したい」という夢を持ち続けています。

独立するということは、自分で全部やるということです。店を開ける前に掃除をして、綺麗に水を打って、先輩を迎え入れ、器の管理をし…と、料理だけでは店はできない。どんなに厳しくても、下積みの経験は自分で店をやる時にはじめて全て活きてきます。そのためにも下積み時代というのは非常に意義があることだと思っていますが、そこをきちんと理解して続けられる人は少ないと感じています。

万ん卯 別館

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