多様な経験と知識をもとに未来をみすえ、進化し続ける新時代の導き手

HAJIME
米田 肇

HAJIME

■フランス修業時代。そこで感じた、日本との根本的な価値観の違い

スーシェフまでつとめられたそのお店を辞め、その後フランスに留学されたんですよね?

米田氏:
フランスではロワール地方の一つ星、二つ星レストランの2か所で3年半近く経験を積みました。研修生が部門シェフになることなどめったにないのですが、渡仏して1~2か月くらいで魚部門のシェフを任されることになりました。ジビエ料理が有名な店でしたが、翌年ミシュランからのコメントで魚料理についても高い評価をもらいましたね。

フランスのレストランで働く人というのは、実は生粋のフランス人というのは少ないんです。さまざまな人種が集まっているせいか、差別問題は当たり前のようにありました。ただ、その中で“良いもの”を創ることができる人は、人種ではなく個人としてちゃんと評価される。これがフランスという国の面白いところだと思いました。

また日本とフランスで大きく違うと感じたのは、日本では先代を超えようというより、神様のように仰ぐことが多いですが、フランスはそうじゃない。「すべて教えるから、そのかわり私とは違うことをしなさい」というのが向こうのスタイル。味つけから何まですべて教えてくれる。ただ、そうやって学んだことをそのまま国に持ち帰って再現しようとする日本人が多いですよね。「日本人は技術も知識もあるのに、なぜコピーしかしないんだ」と今でもよく言われます。

オリジナルであることを求められる、ということでしょうか。

米田氏:
ガストロノミーを例にお話しましょう。この新しい概念が世界に広まったきっかけはフランスにあります。ある時スペインで講習会を開いたことをきっかけに、当時地方料理しか経験のなかった料理人たちが、たくさんフランスへ修業に向かいました。そうして学んだ彼らがスペインにもどって何を始めたのか。当時フランスで流行っていたヌーベルキュイジーヌのコピーではなく、“現代スペイン料理”を生み出したんです。液体窒素をつかうなど、ユニークで新しいスペイン料理が注目を集め、今度はスペインに世界各地から料理人が集まった。そこからデンマークに戻った人々が現代の“北欧料理”を創り、南米に戻ったシェフが現地ならではの食文化を盛りこんだ新しい“南米料理”を創りだしている。

世界がお互いに刺激を受けあいながら新しいものを生み出している中で、日本人は何をしているのか。残念ながらいまだに“フランス料理”を再現し続けているんです。

その背景には日本ならではの“海外のモノ、本場のモノは良い”という価値観や教育が影響していると思われます。今は日本から発信できるものが増えていますよね。ラーメンなど世界に出ていく業態や、別に海外で学ぶ必要はないんじゃないかという考えを持つ人も増えつつある。もっと身近にある文化を見つめ直して、日本人にしか創ることができない“オリジナル”を生み出していくことができるはずなんです。

それは伝統をないがしろにする、ということとは全く違います。“芸”と“芸術”は違う。料理にも“芸術”はある。そしてそれは、変わり続けるんです。このことを我々は正しく理解するべきだ。そうした考えを強く持つようになりました。

HAJIME 米田肇

■帰国後の独立、世界最短での三つ星獲得。

帰国後、いよいよ独立してご自身のお店を開かれるわけですね。1年5ヶ月でのミシュラン三つ星獲得は、世界最短です。

米田氏:
2008年に独立した当初は、とにかく忙しかったです。フランス時代に感じた思いから「毎回新しいメニューを用意します」という形でお店をはじめました。ただ、リピーターが増えすぎて、あまりにも忙しかった。週に2回来てくださる方もいたりして。早々に自分の中の引き出しが尽きてしまったんです。そこで、半年経ったところで、一度、お店を休んでフランスに戻ったんです。

現地の友人に研修にいれてもらいながら、あるとき自分の店で出した料理を見せると「これじゃダメだよ、キミが今まで働いた店のコピーじゃないか」と言われて。そのときは「そんなことはない!」と喧嘩して帰ったのですが(笑)、でも彼の言葉は、ずっと自分の中でもやもやと残った。自分の中に湧き上がるものがなかったため、今まで経験したものしか作れていなかったんです。

そこで「自分の料理の根源はどこにあるんだろう」と考えはじめました。料理の世界に入る前までさかのぼって思い起こしていくと、それは両親と過ごした子どもの頃だったり、友人たちと作ったカレーだったり。日本人の生活の中にある慣れ親しんだ料理だったんです。

では日本料理とはどんなものか、と考えても、実は今までちゃんとした日本料理を食べたことがなかったことに気づきました。京都に行って有名な料亭を何軒も訪れていくうち、その奥深さに大きなショックを受けたんですね。例えば自分たちは見栄えでしか意識していなかった盛りつけなどの部分でも、日本料理の世界ではすべて理由がある。「今日は○〇の日だから、これがここにあります、この食材をつかっています」といった具合に。なんだこれは!と…。自分が今まで何でもできるぞ!と思って世界中を飛び回っていたのに、じつはこんなに凄いものがここにあった。すべてお釈迦さまの手のひらの上であった、というほど強い衝撃でしたね。

ここから京料理を学びはじめ、さらに茶道、禅宗から仏教の成り立ちまで歴史の流れを追っていく中で、千利休という偉人の美意識が、いかに凄かったのかを知りました。

そして学んだことで、では自分は茶の道を再現していくのかというと、やはりそれは違う。それでは今までやってきたフランス料理のコピーと同じ流れになってしまう。

千利休が創り上げた世界感、その素晴らしさに触れていく中で、ふと“自分のもつ世界観を自由に表現していいんだ”という考えに至りました。フランス料理や日本料理という枠にとらわれる必要はない、自由に作っていいんだと。そして2012年5月に店の看板から“フランス料理”の文字を外し、今のスタイルにたどりついたのです。フランス料理という看板を外したのはミシュランの人には不評だったようで、二つ星にされてしまいましたが(笑)。

HAJIME

HAJIME

お問い合わせ
06-6447-6688
アクセス
大阪府大阪市西区江戸堀1-9-11 アイプラス江戸堀1F
四つ橋線「肥後橋駅」7番出口から徒歩3分
営業時間
17:30~20:30(入店)
定休日
不定休