世界に通用する「Yakitori」を目指して。常識や前例にとらわれず、時代の先をみながら挑戦しつづける焼鳥界の先駆者

バードランド
和田 利弘

バードランド まかない風景

■スタッフ育成のために考えること。むやみに叱ることは無意味である。

良いサービスを提供するために、スタッフの指導において気をつけていることはありますか。

和田氏:
いつもスタッフに言い聞かせてるのは、お客さんを「彼女の母親か親戚だと思え」ってことくらいです。そうしたら自然にどうしたら喜んでもらえるかなって、考える力が身につく。カッコつけたいだろ?って。

自分の都合で、自分自身がやりやすいようなサービスではいけない。お客さんのためにサービスってのはあるんだから。指導する時も、叱っても反発されるだけなので、「北風」ではなく「太陽」に徹します。

やはりそれでもなかなかできない人っていうのは出てくると思います。そういった方々に対してはどういう対応をするのですか。

和田氏:
僕は同じことでも100回は言うようにしています。それも今日初めて気づいたみたいに、100回目を言う。

絶対に自分から「おまえこれ何回目だ?」なんてことを言ってはいけない。言わなくても相手はわかっているからね。

うちの店にマニュアルはないんですよ。あるのはひとつだけかな。何かこぼした時は、自分のミスでもお客さんがやったとしても、とりあえず大声を出して3人がかりで対応するってこと。

「すいませーん。お願いしまーす!ダスターをくださーい!」なんでもいいから大声を出す。仕事途中でも手を止めて、スタッフ2人は駆けつけて3人以上で対応。拭く、タオルを持ってくる……3人がかりで大騒ぎして、きちんと対応すると、お客様ももういいよって感じになるんだよ。

ついついやってしまうのはこぼしたスタッフがダスターを取りにお客様のもとを離れてしますこと。離れちゃダメ。みんなで一生懸命にやることが大事。

あとは「1000円からでよろしかったですか?」なんてマニュアル言葉は使わせないようにしている。つたなくてもいいから、その子自身の言葉でしっかり対応させるようにするんだ。そうすればお客さんは聞いてくれる。気付いてくれる。それを繰り返していたら、いつか絶対褒められる。そうすることでどんどん成長できるんだ。

勉強しないで言葉尻だけ覚えさせるようなことはしていない。まずはスタッフが安心できるように、僕自身がいろいろとやって見せることを心掛けています。

バードランド 串の仕込み

■成功する飲食店作りのために、何よりも注力すべきは「料理にこだわること」ではない。

最終的に独立を目指す方も多いのが飲食業界。「バードランド」でも、独立に向けての指導というものはあるのですか。

和田氏:
僕が若いスタッフに常日頃言っているのは、「お店は美味しいものを出しているから流行るんじゃない」ってこと。だって、美味しくもないのに流行ってるお店って実際あるでしょ?それって「居心地がいい」からなんですよ。

お客さんがお店に入るときのきっかけがそれで、さらに料理が美味しいと、今度は友達を連れてくる。サービスがちゃんとしていると今度は友人に紹介してくれる。だから店作りで一番目に注力するのは料理にこだわることじゃない。

「美味しいものを出してればお客さんは勝手に来る」なんて思い込んでいてはダメですね。僕もお客さんの居心地の良さには常に気を配っています。それには素早く対応する。スタッフみんなの動きが速いね!って他のお店の方からも言われるくらい(笑)。

あとは独立したスタッフにも言ってることがあるんだけど、それは「飲食業界は今も厳しい世界だから、情報をすぐに共有できる仲間を作れ」ってことかな。そうすればどんなことがあってもすぐに対応できるようなネットワークが作れる。

バードランドから独立して出店したお店を、世間では「バード系」と称しています。それについてはどう思いますか。

和田氏:
焼鳥屋ってのは基本技術が確立している世界ではないんですね。そんな中で、基本的なものを(バードランドでやっている技術)をしっかりと受け継いでやっているという部分では、「バード系」って言われてもいいと思う。

でも僕と比べてるくらいではだめかなぁ。だってそれじゃあうちを超えられないでしょ。僕は、たくさんのことに挑戦して、たまたま条件が揃ったからここまでやってこれたと思っているけど、今の時代でもし僕が独立するんだったら、まず同じことはやらないよね。

先人を超えるには、同じことをやっていても超えられるわけがない、と。

和田氏:
和食の世界では、基本がいい加減な人の料理を「創作料理」って呼ぶのだと思います。三つ星の和食のお店が新しい料理をしても「創作料理」とは呼びませんよね。これからの料理人は伝統的な技術と現代の料理科学といった基本をしっかりと勉強しなければなりません。
例えば「優しく火を入れた」って言っても、レアと生焼けは違う。「レア」は生のように見えて火が入った状態。「レア」と「たたき」の違いを科学的に理解する必要があるということです。

焼鳥の火入れや火加減こそ、旨味を引き出す重要な工程ですよね。職人といわれる和田さんでも、試行錯誤しているのですか。

和田氏:
火入れは変えていますよ!今週のテーマ、みたいな感じでいつも試してるんです(笑)。でも目指していることはたったひとつで、肉のうまみを最大限に引き出すこと。

そのために、もうね、何か思いついたら即実践だよ。

これから飲食店開業や独立を目指す方々に何かアドバイスはありますか。

和田氏:
最近は少人数で回す店が増えているようです。ワンオペとか。でも、そのまま年をとるとキツイし、利益も上がりづらい。遅くても7年以内に4人以上で回す店に移れるように最初から計画してください。きっと今までのキャリアも活かせると思います。

和田さん自身もこれから新しく何かを始めるのですか?

和田氏:
昔から独立に向いている子と向いていない子がいるような気がしますね。でも、後者のような子が活躍できる店っていうか仕組みを考えなきゃいけない時代かなと思います。独立しなくても生き生きと働ける場ですね。そういう場所を作れたらいいなと…。

コツコツまじめに仕事をやる人、40歳・50歳とか年齢がいってもずっと働くことができる店ってのを、これから僕が作っていきたいですね。

(聞き手:齋藤 理、文:吉田 登、池水 みと、写真:刑部 友康)

バードランド 内観

バードランド 外観

バードランド

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