厳しい修業を乗り越えた心から一流のものは生まれる

鮨 天ぷら よう山
那佐 剛

鮨天ぷらよう山 那佐剛

■何時するかを決めることで、いま何するべきかが見える

その後、どのような流れで独立をされたのですか?

那佐氏:
「つる屋」には8年弱いたのですが、阪神大震災が起こってしまって店を閉めることになりましたので、それが店を出るきっかけになりました。その後、もう少し料理の腕を磨きたいと割烹で働いたり、修業は続けていました。独立しようという気持ちはずっとあったのですが、もやもやしていたんですね。ちょうどその時に、独立したいのであれば、具体的に何歳何月にと決めないとあかん。というアドバイスを貰い、それならと32歳で独立をすると決めました。

そう決めてからは逆算していま何をすべきか、何を学ぶべきかが明確になりました。そして西暦2000年に目標通り32歳で独立することができました。修業を続けていると、料理の世界は奥が深いので抜けられなくなりタイミングを逃してしまうこともあります。自分でしっかりとゴールを決め、それを実行することも大切だと思います。

鮨天ぷらよう山 内観

店の構想や立地はどのようにして決めたのでしょうか?

那佐氏:
どんな店にするかは修業しながらずっと考えていましたから、天然物の美味しい魚を使った鮨と料理を出す小さな店にしよう、というイメージは固まっていました。

場所は大阪市内と考えていたのですが、ずっと苦楽園に住んでいたのでこの町のことがすごくわかっていましたから、知り合いの不動産会社でこの店の物件情報を見た時に「すごくいいな!」とピンと来たのです。想像していたような、表通りから1本入った場所で、駅からも近くまさに理想通り。そこで店の内装デザインをお願いした設計士の先生にも相談したところ、この物件を見てすぐ「ここに決めよう!すぐに資金繰りや!」と言われて即決でしたね。

内装デザインをしてくださったその先生とは知人の紹介で出会ったのですが、最初に相談に行った時、僕が作りたい店の話をじっと聞いてくれて「わかった。美味しい魚を出す店をしたいんやな。予算はちょっと厳しいけど何とかしてあげるから、僕にすべて任せるか?」と…。僕はデザインのことは全然わからないのですが、先生の目の光とオーラが凄くて(笑)、信頼してすべてをお任せすることにしたのです。そして店がオープンしてからは毎日来店してくださって…。もう病気でお亡くなりになられたのですけど、親父みたいに慕わせていただいて、本当にお世話になりました。

素敵な出会いだったんですね。お客様はどのような形で増えたのでしょうか?

那佐氏:
ありがたいことに、その設計士の先生のおかげで最初から赤字になることはありませんでした。先生は食べることがとても好きな方だったのですが、とても顔が広く、沢山の方に店を紹介してくれて…。先生のお知り合いの方でオープンと同時に店の半分が埋まっているような状態でした。また店をオープンする前には近隣の店すべてに挨拶に回っていたのですが、挨拶へ伺った店の方もそれで店を知ってくださって、自分の店のお客様にウチの店を紹介してくださったり…。都市部ではなく、郊外だからこそ地域内で自然と口コミで広がっていきました。ありがたいことです。

僕は雑誌の取材を一切受けないと決めているのですが、それは最初から来てくださっている常連の方に気持ちよく店に来て頂きたいから。小さい店ですから雑誌に出てしまうと常連さんをお断りすることにもなりますし、それが申し訳ないからなのです。

まぁ、ミシュランは勝手に掲載されるので仕方ありませんが(苦笑)

鮨天ぷらよう山 那佐剛

■修業の厳しい年月を乗り越えた精神が一流のものを作る

これからの目標や夢があればお聞かせください。

那佐氏:
これからはもっと若手育成に力を注ぎたいと考えています。いま日本料理が世界でどういった位置にあるか。というのをもっと知ってほしいし、広めていきたい。日本料理には限りない可能性があって、僕はそれにチャレンジしたいし、チャレンジする人を育てたい。

まずは、僕が若い頃に修業した「福すし」のような、「練習が本番・本番が練習」という風なスタイルの店をこの場所でやってみたい。食材はすべて自ら仕入れした最高の食材を使うのですが、価格は一流店ほど高くない値段にして、若い料理人たちが競い合い、お客様との実践の中で技を磨きつつ和食を提供するような、そんな店があったら面白いんじゃないかと考えています。

先輩が後輩を教えながら、お客様に鍛えてもらいながら技を磨ける、人間と人間のコミュニケーションがある店。これからの料理修業って裏方で地味に耐えてやるのではなく、もっと人間の温かさや触れ合いが必要なんじゃないかなと思うのです。

今まで僕の店で修業をし、独立した子も数多くいますが独立して店を閉じてしまった子はまだひとりもいません。僕も先輩に同じように教えてもらいましたし、それを今度は若手に伝えていきたい。

厳しくするのは誰のためなのか?その意味を若い人たちに感じ取ってもらいたいし、修業の厳しい年月を乗り越えた精神が、本当に一流のものを作るのだということを知ってほしい。

そのためには若い料理人たちが本気になれる新しい形の指導者と、新しい場所が必要だと思いますし、自分なりにその形を模索し挑戦できたら…と考えています。

(聞き手:市原孝志、文:池側恵子、写真:能谷わかな)

鮨天ぷらよう山 外観

鮨 天ぷら よう山

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