“パリを愛し、パリに愛される”と謳われるカフェのギャルソン。目指すは人間讃歌を体現するサービス

Café de Flore(カフェ・ド・フロール)
山下 哲也

Café de Flore(カフェ・ド・フロール) 山下哲也

■人間としてのプレゼンテーションが大事

フランスにサービスの修業に行くには、語学力はどれほど必要でしょうか?

山下氏:
フランス語は話せた方がいいけれど、語学に対してそんなに恐れることはなくて、 「言葉ができなければダメだ」と思うのは間違っているんじゃないですかね。もちろん必要最低限は話せなければダメだけど、僕も最初は、オーダーは完璧にわかっても、お客さんの話はわかっているふりをしてるだけの時もあった。そのあたりの神経の図太さは大事。言葉を完璧に理解するよりもっと大切なことは、コミュニケーションの他の手段を駆使して、お客さんがたくさん話してくれたのを一言で機転を利かせて返すこと。サービスマン以前に人間として、この状況でこういう表情で言っていることというのはわかるし、言語以前にもっと気をつけなければいけないことがあります。

大切なのは人間としてのプレゼンテーションです。知る限り日本にサービスマンとして世界に通用する人はまだまだ少ない。パフォーマンス以前の問題、見た目の重要さへの意識が低すぎる様に見受けられます。

端的に言えば、ギャルソンの制服を着せてサマになるかならないか、結局はそういうことです。それは日本にいるときから鍛えられることです。まずは、見た目。絶対的に。海外に出る前に、海外で通用するかどうかって自分で考えて、ちゃんと準備をして行くのも悪くないと思います。海外に来るのが若ければ若い程いいという意見があるけれども、ある程度経験値をつけてから来てもいいですし。

そしてフランスでサービスマンとして働くなら、そこの頂点を目指して欲しい。それが三つ星のガストロノミーでもパラス・ホテルでも、あるいはカフェでも良いけど、フランス文化の粋を極めた舞台で生きることでしか得られないことを是非経験して欲しいと思います。

サービスに限らず、飲食業界を志す若手が少ないという日本の現状についてはどうお考えですか?

山下氏:
日本の若い人で飲食を目指す人が少ないと言っても、若いと自分のやりたいことなんてなかなかわからないと思う、僕はわからなかったし。きっかけはどうでもいいんです。
始めるにあたって、偉そうに誰にでも語れるきっかけなんてなくていいと思うんです。例えばフレンチの世界に入るとして、若いながらもマナーや料理のことを日々身につけていって、若いのにそういうことを知っていたり、身につけていたらモテるだろうし(笑)。

結局のところ僕が一番伝えたいことは「人間って素晴らしいよね」ということです。人間の肉体ってすごいということ、そういう意味で僕は日々の仕事をパフォーマンスと言っています。僕は仕事前と仕事後で毎日3キロ体重が違うんです。僕はそれだけ身体を使っています。人間の肉体にはそういうことが可能だということ、人間の肉体の記憶力がどれほどのものかということ。自分にとって個人的な実験でもあります。

お客さんにとって想像がつかないことであったとしても、それはそれで、いいんです。「哲也は最高のサービスだ」と言ってくれているので。そういう意味で、仕事のなかで自分の愉しみ、目指すものを見つけてください。給仕人という仕事はフランスにおいてさえ簡単なことではないですし、日本においては尚更かもしれません。だからこそ、逆にこれほど可能性のあるものはないとも思っています。また、日々の仕事のなかで自分とは違う世界に生きるお客さまと接することで、多くを学ぶこともある。

これまで自分が知らない世界に導いてくれることもある。そんな出会いはサービスマンとしてだけでなく、一人の人間としての貴重な財産となると思います。

これからサービスをしたい人や、サービスをしている若い人に伝えたいことはありますか?

山下氏:
有名なシェフはたくさんいるけど、サービスはまだだから色々な意味でチャンスはたくさんあるんじゃないでしょうか。サービスは、自分しか頼るものがない。自分だけを武器にして、それ自体を愉しんで欲しいですね。“ギャルソンよ、大志を抱け”

(聞き手・文:安發明子、写真:Hiroki TAGMA)

Café de Flore(カフェ・ド・フロール) 外観

Café de Flore(カフェ・ド・フロール)

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