[New] Foodionでのインタビューが書籍になりました!

“パリを愛し、パリに愛される”と謳われるカフェのギャルソン。目指すは人間讃歌を体現するサービス。

Café de Flore
山下 哲也

■はじめに

この度はインタビューを受けて下さり、ありがとうございます。

山下氏:
どういたしまして。
正直、自分のことは自分の仕事で100パーセント表現してこそ真のプロフェッショナルだと思っているので、フロールという舞台で表現していること以外に話すことはありませんというのが本音です。あまりべらべらと話すのもかっこ悪いという自分なりの美学もあります。“百聞は一見にしかず”と言うけど、フロールに来て自分の給仕を見てそこで何かを感じて欲しい。

ただ、いま日本だけでなくここフランスにおいても給仕人(ギャルソン・サービスマン)という仕事が危機に瀕しているなか、自分の経験から何かをお伝えすることができたらという想いから、今回はお話しさせていただきます。

安倍首相がパリに来た際、オランド大統領からエリゼ宮晩餐会に招待され、アラン・デュカス氏の隣の席で食事したと聞きました。

山下氏:
たかがギャルソンが、嬉しいよね。
さすがに大統領府からフロールに手紙が届いた時はビックリしました(笑)。
自分の信じた道を歩み続けたおかげですよね。と同時に、フランス文化の継承者として今後も生きていかなければいけないという自覚がより強くなりました。

パリに来た最初の頃に、指揮者の小沢征爾さんがカフェ・ド・フロールで「テツヤをよろしく」と総支配人に言ってくれたということですが、元々は東京のフロール表参道店で働いていた時のお客さんだったんですか?

山下氏:
そうです。征爾さんとの関わりについては、自分の中での原初体験があるんです。5才から8才までニューヨークに住んでいたんですけど、6才のときにボストンで征爾さんが指揮をするボストン・シンフォニーを観る機会があって、外国人なのに独りそこに立っている姿がずっと忘れられない思い出になっていました。

その後ご縁があり表参道時代には色々とお世話になりました。男同士の約束なので公には言えませんが、現在の僕があるのは征爾さんのおかげです。いつか何らかの形で恩返しが出来たらと思っています。

■仕事の中でマニアックな歓びを発見し、それを愉しむ

どのようにしてこの職業に就いたか教えてください。

山下氏:
最初にこの世界に接したきっかけは、大学一年のとき外苑前のセランというフレンチでアルバイトをしたことでした。テラスとかあってオシャレで、ミーハー心で面接を受けてみたら、120人面接したうちの2人に選ばれて採用されたんです。当時大学のキャンパスが都心になくて行き来が大変で3ヶ月で辞めたのですが、3年生になってキャンパス移動で都内に通うときはまた働こうと思っていました。

結局は、当時オープンしたフロール表参道店で働くことになりました。カフェを選んだ動機の1つは、ヘミングウェイの『日はまた昇る』を読んで、カフェって何だろうと思ったことですね。

ご自分でもカフェをお客さんとして利用したり、働き始めてからも勉強も兼ねて行ったりしていたんですか。

山下氏:
そうですね、大学の講義をサボったり学食ではなく原宿・表参道界隈のカフェやレストランでランチしたり“独学”していました(笑)。当時費やした時間は僕の財産ですね。より上質のものを、自分の知らない世界を知るというのは、サービスの人間にとってはすごく重要なことです。飲食のいいものはもちろんだけど、それ以外のファッションも文学も音楽も人間に関わるあらゆる分野のいいものに触れて知るというのはやっぱりサービスマンにとってものすごく大事だと思います。

いろんな意味で余裕がないと人間の幅が生まれないと思う。お客さまという人に関わる仕事なんだから、幅がないとできない、幅があるといいサービスができると思います。

また経験値の高いお客さまを給仕するなかで、そのお客さまに育てられることもあります。若いうちは知らなくて当たり前だけど、何事も知ってみたいと思って探求することは必要ですね。

自分の美意識や教養を高めることを意識していらっしゃるんですね。

山下氏:
例えば、僕は毎日の給仕に臨むにあたり日課として靴を磨きます。それはお客さまに接するひとりのサービスマンとして、という以上にひとりの男としての僕の“流儀”です。

その靴磨きのテクニックを僕に教えてくれたのは、日本最高の靴磨き職人と謳われる井上源太郎さんです。源さんと出会ったのは僕が20代半ばの頃に身分不相応な靴を購入したのがきっかけなのですが(笑)、教養がハンパないというか、あらゆることに精通していて、とにかく面白い。いまでも一時帰国する度に、現在はホテル・オークラ東京に駐在する源さんにご挨拶を兼ねて一度は靴を磨いて頂くために訪れます。

普段は自分で磨くことを信条としているけど、源さんの「されど靴磨き」という感じが憧れであり、目標でもあります。

Café de Flore

お問い合わせ
+33 1 45 48 55 26
アクセス
172 Boulevard Saint-Germain, 75006 Paris
メトロ4番線Saint Germain des Près
営業時間
7:30〜25:30