チャンスは逃さない。うまくいかないときは発想の転換で頭を切り替える

レストラン タテル ヨシノ 銀座
吉野 建

レストラン タテル ヨシノ 銀座 吉野建

■レストラン経営という働き方を選び、日本でビジネスを展開

「ステラ マリス」を続けつつも、2003年には日本でフレンチレストランをはじめますが、その理由は?

吉野氏:
パリの「ステラ マリス」は、評判はよかったんですが、それでもほしかったミシュランの星は取れませんでした。三つ星候補だと新聞に載ったこともあるんですけどね。

5年を過ぎた頃、パリではもう燃焼しきったと思いましたし、でも相変わらずミシュランは星を付けないし(苦笑)、それならこれからは違う働き方をしようと頭を切り替え、「商売」を取りに行こうと考えたんです。

それで、日本のに芝パークホテルに店を開いたのが2003年。ビジネスがらみの仕事がスタートしたのは、ここからです。

1992年に渡仏してから約10年は日本には帰りませんでしたが、この先10年は2週間に1回、パリと東京を行き来する生活がはじまりました。

レストラン タテル ヨシノ 銀座 料理

店舗提供:タテル ヨシノ

その後は、さまざまな業態の店を日本でオープンさせ、今も多くの店舗をお持ちですね。指示はどのようにしているのでしょう?

吉野氏:
今は、スマホをかなり活用しています。写真を撮ってこちらから送ったり、向こうから届いたりして、コミュニケーションをとっています。何かあればスマホに連絡をくれと伝えています。

メニューは僕がだいたいの大枠を考えて、指示を出します。とはいえ、各店舗で腕を振るっているシェフたちは、僕の下で何年もいっしょに働いていますから、あうんの呼吸でわかる仲です。癖もキャラクターもね。

ところで、パリの「ステラ マリス」は、2006年に念願だった星を獲得しますね?

吉野氏:
星をくれないからと割り切ってビジネスの道を選びはしましたが、星を取れたときは、信じられない気持ちでいっぱいでした。パリから知らせの電話を受けたときはちょうど喜界島にいたんですが、取れる取れるという前評判の話は聞き飽きていましたから、すぐには信用できなくて。「それなら証拠を見せてくれ」といったくらいです(笑)。

その「ステラ マリス」は2013年に閉じましたが、その理由は?

吉野氏:
理由はひとつ。東京とパリの行き来に疲れたからです。日本にいる間も和歌山にも直島にも行かなくてはいけないですしね。

でも、これは単に幕を引いただけ。ここを閉じたからといって終わりではありません。
実は、やめたらやめたで恋しくなるもので、今、フランスが恋しくなっていますよ。もし、今からフランスに店を出さないかと言われたら、喜んで引き受けるでしょうね。

レストラン タテル ヨシノ 銀座 料理

店舗提供:タテル ヨシノ

■多店舗展開のトップとしての今

多くの店舗を抱える長として、メンバーを率いるために気をつけていることは?

吉野氏:
料理はチームで作り上げるものですから、協調性のある人、相手を認めることができる人を集めることが大事だと思います。これを教育で培うことは、正直難しい。ですから、僕がしていることは、そういう素質を持っている人かを見極めることでしょうか。

今、料理人にはオリジナリティが求められますが、それはどう身につけていけばいいのでしょう?

吉野氏:
なかなか難しい質問ですが、絵画を見たり、草原の景色を見たり、海や市場に行ったりすることで何か変わることもありますよね。でも、一番大事なのは、古典の料理書を読むことです。

僕が好きな本にアレクサンドル・デュマ(※2)のお父さんが書いた、旅行記があります。それを読んで「おおー、カヴァイヨン(※3)のメロンかぁ」なんて思って、その背景を想像して思い浮かべて、料理を追求してというように、僕自身はやってきました。料理だけでなく、旅心というかロマンというか、そういうのも必要だと思います。

※2:19世紀のフランスの小説家・劇作家。小説「三銃士」や「モンテ・クリスト伯」などが有名。

※3:フランス南東部、プロヴァンス地方にある都市。メロンの産地として名高い。

最後に、今後の夢について教えてください。

吉野氏:
僕はフランス料理を作っているので、やはりフォークとナイフを使う国で勝負したいというのがあるんですよ。フランスもいいけれど、今はアメリカに店を出したいと思っていますね。西海岸のサンフランシスコとか、ニューヨークやハワイなんか、いいですね。

料理に終わりはありません。求めるものはまだまだあって、まだまだいけると思っています。

(聞き手:齋藤 理、文:荒巻 洋子、写真:刑部友康)

レストラン タテル ヨシノ 銀座 内観

店舗提供:タテル ヨシノ

レストラン タテル ヨシノ 銀座 内観

レストラン タテル ヨシノ 銀座

お問い合わせ
03-3563-1511
アクセス
東京都中央区銀座4-8-10 PIAS GINZA12階
東京メトロ銀座線、丸の内線、日比谷線「銀座駅」A7出口徒歩2分
東京メトロ日比谷線、都営地下鉄浅草線「東銀座駅」A2出口徒歩1分
営業時間
ランチ11:30〜14:00 (L.O.)
ディナー18:00〜21:00 (L.O.)
定休日
なし(1月1日を除く)