チャンスは逃さない。うまくいかないときは発想の転換で頭を切り替える

レストラン タテル ヨシノ 銀座
吉野 建

レストラン タテル ヨシノ 銀座 吉野建

■帰国後、日本に腰を据えて働きはじめた矢先、誘いを受け、再びフランスへ

日本に戻ってきてからは何を?

吉野氏:
実は一度、とんぼ返りをしました。おふくろに顔を見せてからすぐに2週間フランスに戻ったんです。そのわけは、まだ自分の中でフランスの余韻がいっぱいだったから。だから、頭を整理して、その余韻を終わらせるために戻った。つまり、フランスに「さよなら」をするためにね。

改めて帰国してからは、「日本でがんばるぞ!」と気持ちを入れ替えて働きました。赤坂の「光亭」ではシェフとして2年くらい働きましたし、東京・青山の「ロア・ラ・ブッシュ」の総支配人から頼まれて経営の立て直しにも携わりました。その後は、知り合いから共同でレストランをやらないかと誘われて、小田原で「ステラ マリス」という名のレストランをオープンさせました。

しかし、この間ずっとフランスで店をやりたいとは思っていました。日本では、どうしても日本の日本人のためのフランス料理になってしまいます。そこに満足していなかったんです。

そんな気持ちを持ちつつ、「ステラ マリス」で働き出して2年くらい経った頃、「フランスで店をやらないか?」と誘いがありましてね。この話を聞いたときは、もう人生最大のチャンスだと思ってしまいました。ですから、もちろん即、快諾して、「ステラ マリス」はほかの人に任せて辞め、渡仏しました。

フランスではすぐに店を?

吉野氏:
ところが、人生はそううまくはいかないもので。大手の有名な店の総料理長にという話だったんですが、なかなかオープンできず、ただただ待ってフランスにいましたね。いろいろとややこしい問題に巻き込まれてしまいまして。

その間、研修に行ったり、モロッコやコスタリカに料理を作りに行ったりはしましたが、2年くらいは自宅待機という期間もありました。でも頭を切り替えて、これまでずっと働きずくめだったから人生の休憩をもらえたんだ、勉強の時間をもらえたんだと考えました。ゴルフを覚えたのもこのときですし、フランス全土の二つ星以上のレストランを全て食べ歩いたのもこのときです。

結局、4年半ほど、そんな風にして待ち続けましたが、地元の利権とかがからんで、なんと最終的にはこの話は未完遂に終わってしまうんです。

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■悔しさをバネに、自身の店をパリにオープン

せっかくフランスに渡って、しかも4年以上も待って、そんなことになるとは……。それからどうされたのでしょう?

吉野氏:
そりゃあ、腹は立っていましたよ。なんとか和解をして、小さくてもいいから自分の店を持とうと思いましたね。そうもしないと顔が立たないと。

そこからは店作りに奔走し、銀行からお金を借りて、パリに自分の店「ステラ マリス」をなんとかオープンしたのは1997年4月のことでした。シャンゼリゼ通りから30mくらい入ったところ、凱旋門から歩いて1分半くらいの、勝負するには一番いいところでしたね。

念願だったパリでご自分の店をオープンさせ、いかがでしたか?

吉野氏:
いろいろとありましたから、「やってやるぞ」とかなり気合が入っていました。…ですが、最初は本当に厳しかったです。マスメディアの方からは、「ポイントのないよくわからない料理だ」と言われたりしました。そうすると、「4年半の間に腕が落ちたかな」と自信もなくなってしまい、銀行からお金も借りられなくて、人生初の追い込まれた時期でしたね。オープンが4月でしたが、8月くらいまではきつかったです。

9月を過ぎて秋になり、ジビエの季節がやってきて、ふと、「そうだ、ジビエをやろう!」と思ったんです。「これでだめなら日本に帰ろう」と開き直ってね。

結果的には、このジビエが評判を呼び、口コミだけで客席が95%は埋まるようになりました。店は軌道に乗りはじめたんです。

その後も店は順調でしたか?

吉野氏:
翌年には、「テット・ド・ヴォー ウミガメ風」という古典料理を再現したものが人気になり、フランスの雑誌『ル・モンド』に取り上げられたりもしました。この料理は仔牛の頭を使った昔からある料理なんですが、「なぜ、東洋人である君が、この料理が作れるのか!」と驚かれましたよ。それからは、もうイケイケでしたね(笑)。

2000年には、「リエーブル・ア・ラ・ロワイヤル」という野うさぎを使った古典料理が、食にこだわりのある人たちが集まったアカデミーで評価され、最優秀賞をもらったりもしました。20点満点で19点を獲得したんですが、この点数を取ったのは、ジョエル・ロブションと僕だけでした。これを取れたときは非常にうれしかったですね。「成功できたし、もう帰ろうかな」という気持ちにまでなりました。

レストラン タテル ヨシノ 銀座 内観

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