戸畑で世界と勝負する!「照寿司」の挑戦

照寿司
渡邉 貴義

照寿司 包丁

■「照寿司」は歌舞伎界のスーパー歌舞伎のような存在

ところで、渡邉さんは「寿司」をどのように捉えていますか?

渡邉氏:
「寿司」の世界には制約がたくさんあります。なかでも江戸前寿司は破ってはいけないルールがある中で存在するものです。うちのような地方の寿司屋は、そのルールを破らないといけなかったんです。
江戸前では手渡しは論外ですし、面白さを求めることも許されません。厳格なルールのもと、静かなところで食べるというルールを、「照寿司」は破ってしまったんです。江戸前寿司を食べるなら東京ですし、地方で江戸前寿司は食べないだろうと思って、手渡しもするし、エンターテインメントを追求するようになったんです。たとえば、歌舞伎は伝統的な芸能ではありますが、よりエンターテインメント性を追求したスーパー歌舞伎が生まれています。「照寿司」は寿司界のスーパー歌舞伎というイメージです。とはいえ、ただ面白いだけではお客様は満足しません。下地にはきちんとした何かがないと、ダメなんですよ。

「寿司」に関する技術や知識はどのように学んでいったのでしょう?

渡邉氏:
今はYouTubeなど情報を得るためのツールはたくさんあります。そういったところで学ぶこともありましたし、もちろん、これまでの「照寿司」での仕事を通して学んだこともありました。とにかく大きな店でしたので、やることがたくさんありましたし、1人で1000貫握ることもありました。寿司を握ることは反復練習なんです。だから、かつての「照寿司」でもがき、あがいてきたことが、結局は握りの技術を高めることになっていたのです。

照寿司 渡邉貴義 sushi bar Tシャツ

■「#sushibae」に会いに世界中からゲストが訪れる

あの、手渡しのポーズは、どのような経緯で誕生したのですか?

渡邉氏:
うちはかつて喫煙OKで居酒屋のような使われをしてきた寿司屋でした。そのような寿司屋では、お客様がお寿司を食べようとしないこともあって。「どうぞお寿司を食べてください」と、お寿司をお渡ししたのが最初です。なので、今よりも少し低い位置だったんですよ。あるとき、お客様がスマホでその姿を撮ろうとされて、スマホの高さに寿司を上げた瞬間があって。それからですね。この高さになったのは。

Instagramでもさまざまな情報を発信していますね。

渡邉氏:
そうですね。今から5年前、スマホで写真を撮りながら、実況のようにSNSにアップしながら寿司を食べる時代がくることを、誰が予想していたでしょうか。

「#saltbae」というハッシュタグがきっかけで一躍世界的に有名になったトルコ人シェフがいるんですけど、私は「#sushibae」というハッシュタグを作って発信し始めました。今、約2万人のフォロワーがいるんですけど、この数のフォロワーがいる寿司職人はそうそういません。こんな地方にもかかわらず、3割が外国人のお客様というのもSNSのおかげです。海外から「#sushibaeに会いに来ました」と来られる方も多いですね。SNSの発信によって、海外からお客様が来られるようになり、そのお客様からさらに「照寿司」のことが拡散されていきます。

今、15カ国からイベントのオファーがありますし、2019年2月にはスウェーデンとロンドンでのイベントが決定しました。戸畑でやることが基本ですが、東京や世界の風に触れて、そこで感じたものを戸畑で提供していく。インプットとアウトプットのどちらも大切だと考えています。

照寿司 上質な肉に包丁を入れる渡邉貴義氏

■「美味しい」の先にある「楽しい」を追求

10年間、試行錯誤されて現在のスタイルを確立されました。その中で心がけていることは?

渡邉氏:
とにかく楽しんでもらうことですね。うちは「美味しかった!」より「楽しかった!」と言っていただくことが多いんです。最高の食材を使って握るのだから、寿司が旨いのは当たり前。その「美味しさ」にプラス何かがあって「楽しい」になるはずです。その何かというのは、「照寿司」の場合、パフォーマンスと言われます。お客様とのコミュニケーションや楽しませたいという想い。それが伝わっているからこそ、「楽しかった!」と満足していただけているのではないでしょうか。

エンターテインメントを意識するようになったのは、何かきっかけがあったのでしょうか。

渡邉氏:
堀江貴文さんが主宰されている「和牛マフィア」の京都でのイベントのPVを観て衝撃を受けたことですね。こんな撮り方ある? こんなかっこいいことってないよねって。偶然、その映像を撮っている会社が「照寿司」のお客様だったので、うちもPVを作ってこらうことにしたんです。(そのPVはこちら)このPVがきっかっけで認知度が爆発的にアップしたんです。寿司の世界もエンターテインメントとして発信していくことの重要さを実感しました。

照寿司 渡邉貴義 北九州市観光大使

■世界中から戸畑に人を呼び続ける!

2018年7月には北九州市の観光大使に任命されました。今後の展望について教えてください。

渡邉氏:
戸畑で世界と勝負する、それに尽きますね。観光大使は「天寿し京町店」の天野功さんと一緒に任命されたのですが、「天寿し」と「照寿司」を訪れることを“アマテラス”コースと呼ばれているんですよ。「天寿し」独自の九州前の握り(トラディショナル)と、「照寿司」の新しい方向性の握り(ニュースタイル)がある。こんな街、ほかにはそうそうありません。これからも戸畑から発信し続け、世界中から戸畑にゲストを呼び続けたいと思います。

最後に。寿司職人をめざす若者にメッセージをお願いします。

渡邉氏:
今、東京で修業している人の多くは、地方の寿司屋の2代目、3代目です。けれど、地方には地方のやり方があります。そういう意味で、2代目、3代目の方に、ぜひうちで修業してほしいと思うんですよね。「照寿司」で学んだことをベースに、それぞれのやり方を見つけてほしいのです。幸いなことに「照寿司」は世界を意識できる店づくりをさせてもらえるようになりました。江戸前ではなく「照寿司」のやり方を学ぶことが、世界への近道になるのではないでしょうか。一緒に地方を盛り上げていきましょう!

(聞き手・文:寺脇あゆ子、写真:中西ゆき乃)

照寿司 内観

照寿司 外観

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