味を決めるのはチーム。あらゆる因子がその料理の質を決める

唐閣(T’ang Court)
孫 偉倫(ソン ワイラン)

 

唐閣(T’ang Court) 孫偉倫

■若くして才能があるということはキッチンの嫉妬を招くということ

ここで少し振り返ってみましょう。あなたの初期のキャリアについて教えてください。どんな問題に直面しましたか?

孫氏:
まず、主な問題として、「若い」ということ。自分より年上の人の先輩になることもありました。中華料理の世界では、後輩は先輩シェフの手となり働くのが一般的です。ですから「年上の後輩」とは、彼らが私を認めてくれていても、やりにくいこともありました。

それをどのように乗り越えたのですか?

孫氏:
とにかく一生懸命働きましたよ!多くの人が20代で始めるところ、私は13歳と早く働き始めたのですから、すべての嫉妬や軽蔑は自然なことだと受け入れました。実力を証明してみせる必要がありましたから、さらに努力しスキルを磨きました。

曾超敬について、師匠であったとお話されていましたね。彼は他のシェフと何が違うのでしょうか?

孫氏:
彼の料理の腕です。Tsang氏はとてもクリエイティブで、すべての世代の若いシェフに多くの影響を与えました。彼が育てたシェフは業界のあらゆる賞を総なめしましたからね。

あなたが彼と働いていた時、彼はどのような料理を作っていましたか?

孫氏:
魚のハタをマッシュルームとエビと卵白と一緒に強火で素早く炒めた料理なんかを作っていましたね。彼のスープは「利苑酒家」のものよりも美味しかったし、材料もとても良いものを使っていました。

西洋のキッチンと中華料理のキッチンでは、一番の違いは何だと思いますか?

孫氏:
料理の手法、手順、キッチン全体のシステムが違います。中華料理は中華鍋の振り方など、調理の技術を重視するのに対し、西洋料理はソース作りをより大切にするように思います。料理の考え方も極めて違うでしょう。

あなたほど才能ある人物でも、ホテルの料理長になるまで20年かかったのですね。中華料理の世界では、通常さらにもっと長い時間がかかるのでしょうか?

孫氏:
20年かからない人もいるでしょう。しかし大切なのは、かかった時間ではありません。何を経験し、見てきたか、ということです。私がかけた20年はとても価値のあるものだったと思っています。正しい食材を選ぶ方法や正しい技術を身に付けてきましたから。

唐閣(T’ang Court) 料理写真提供:唐閣

■広東人として広東料理を作る意味

シェフとして、広東料理以外の料理を作ろうと思ったことはありますか?

孫氏:
いいえ。たぶん私は古いタイプの人間なんですね(笑)私は広東人ですから、自分のルーツであるこの料理をさらに極めていきたいのです。

メニューを作るとき、どのような事に気をつけていますか?

孫氏:
お客様の好みや食事のシチュエーション、もちろん使う材料にも気を使います。メニューを組み立てるときは、どこで誰に提供する料理なのかによって味も調整します。例えば、お客様が上海の方なら、通常よりも味がマイルドになるように調味料を調整します。それに対して中国北部からいらっしゃるお客様はしっかりとした味付けを好む傾向にあります。

普段はとにかく地元の市場をよく回ります。ローカルの食材を探索するのが大好きです。市場で目新しい食材を見つけたらメニューに取り入れることを試みます。
伝統的な広東料理レストランではありますが、新しい食材を取り入れることに恐れません。その代わり、伝統的な手法で調理することに徹しています。食べに来るお客さんに常に何かサプライズを与えることを心がけています。

唐閣(T’ang Court) 杏仁豆腐
写真提供:唐閣

T’ang Courtは他の広東料理店とはどのように違いますか?

孫氏:
私たちは伝統的な広東料理店です。昔ながらの質の高い材料を使い、最も基本的な調理法で調理しており、それが最も良い方法だと考えています。質の高いサービスが出来るよう、ホテルとレストランできちんと連携を取りながら、従業員のトレーニングも行っています。そうして「T’ang Court香港店」も三つ星を獲得しました。

あなたが自信を持つ基本的な料理をいくつか教えていただけますか?

孫氏:
鶏のから揚げや九節海老の海老団子は絶品ですよ。昔ながらの道具と材料を使い、数多くある食材の中から上質のものを選び調理します。他の店ではこんなに良い海老を使うことはないと思います。おそらく冷蔵または冷凍保存されていたものが多いでしょう。それでも味はまだいいかもしれませんが、食感は断然劣ります。

鶏のから揚げに使う鶏にもこだわっています。私たちは1.6kg以上の海南文昌鶏しか使いません。皮はパリパリとし、肉はとっても柔らかいですよ。様々な種類の鶏肉で試して、ついに最上級のこの鶏肉を見つけたのです。

唐閣(T’ang Court) 内装 ミシュラン置物が並ぶ

■三つ星レストランの料理長になるということ。

すでにミシュランの三つ星を持つレストランを引き継ぎ、新しいメンバーと共にそれを守っていくというとてつもない挑戦をしていますね。三つ星を守り続けるあなたの戦略とは何ですか?

孫氏:
さらに良い食材を使うこと。さらに濃密に姉妹店とコミュニケーションをとること。「良いもの」を「とても良いもの」にすること。お客様とコミュニケーションを取り感想をもらうことで改善点を探っていくこと。

プレッシャーも相当なものがありそうですね。

孫氏:
さらに努力を積み重ね、身を捧げ打ち込まなければいけません。とても基本的な事のように聞こえますが、それが何より難しいのです。

伝統を守る中で、新しいものを生みだすというのは、葛藤があるのではないですか?

孫氏:
伝統的であるということは、それに縛られているということではありません。私たちは伝統的な技術を使っていますが、新しい食材を取り入れていくことは出来るのです。

若いシェフに何かアドバイスはありますか?

孫氏:
もしも、この仕事を本当に愛し、情熱を持っているのならば、一流になるために努力を惜しまないことですね。

あなたは三つ星レストランで戦っているとは思えないほど冷静で落ち着いていますね。

孫氏:
冷静ですか?私は若いころからこんな感じですよ。そう見えるかもしれませんが、そうは感じていませんね!

(聞き手/文:Christopher St. Cavish、写真:Brandon McGhee、料理/店舗画像:唐閣提供)

唐閣(T’ang Court) 内観

唐閣(T’ang Court) 内観
写真提供:唐閣

唐閣(T’ang Court) 外観

唐閣(T’ang Court)

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