本質を押さえつつイノベーションを。新たなカルチャーの創造を目指して

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鳥羽 周作

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■良し悪しで決めるのではなく好きなことをする

大事にしていることは、何か他にもありますか?

鳥羽氏:
雇用の問題ですね。週休2日制で福利厚生をつけています。ただ、これが職人を育てる環境として果たして適正かといわれると、そうは思っていません。

もちろん一般企業では福利厚生や労働時間を整えた労働条件が必要でしょうが、職人としては、自分は厳しい環境の中でギリギリの仕事をしたから今があるとも思っています。ただ、それを肯定するわけでもなく、過酷な中でやってきたからこそ、労働環境を整備しないといけないという思いもあります。
要するに、それらはひとつのスタイルを表明しているだけであって、答え合わせはもっと先の話ということです。ゆとり教育がどうだったのかの結論が今は出ないように、僕らのやっていることが合っているかどうかはわかりません。だから、同じことを飲食業界全体がやるべきとは思っていないです。

これからの時代は、色々な人のスタンスがある中で、否定するよりはリスペクトしつつ、自分はどれが好きかという話になってくると思いますね。

良し悪しではないということですよね。

鳥羽氏:
そうです。良い・悪いではなく、「自分はこれが好き」という話。誰も傷付けないし強要もしません。その中で、共鳴する人がいれば何かしようというだけですね。何かを否定したところで業界は変わりません。今まで第一線で活躍してきてくれた人がいるからこその今であるのも間違いないので。

料理の世界は特にそれが大きいですよね。

鳥羽氏:
先人へのリスペクトはきちんと持ってやっています。自分でお店をやるようになり、みんなの生活を守るようになって、経営者としての苦労もわかるようになりました。
自分の発言がみんなの人生を大きく左右してしまうので、責任感を持っています。みんなにとっての幸せが、今は自分の判断基準です。自分がしたいことより、「自分がこうすることで、みんなが幸せになる」という方が、今は動機として正しいと考えています。

経営は、正解がない中でビジョンや戦略をどう持つかです。店舗を増やすのも、本当に自分が何をしたいのかです。僕はもう少したくさんの人を幸せにしたいので、カルチャーを作るために店舗を増やすんです。

茶室では、日本人の料理を出していくんですよね?

鳥羽氏:
日本のコックが日本で作る料理が日本料理であると定義するような、圧倒的なものを作るためにやります。

それは、ご自身が料理をされるんですか?

鳥羽氏:
もちろんです。でも最終的には、その店にシェフがいることに価値があるレストランではなくて、シェフのイズムがあることに価値があるようにしていきたいと思っています。シェフの想いが浸透していて、シェフの残り香があれば良いと思っています。

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■自分を主人公にした物語を作って未来を見据える

とあるメディアで、このお店を「あらゆる人を巻き込んだ応援コミット型レストラン」と表現しているものを見かけたのですが、これはご自身が考えられたのですか?

鳥羽氏:
そうです。レストラン同士でお客さんを奪い合うような競争ではなく、これからは色々な人とレストランを作っていく時代になると思います。家族のような付き合いをさせていただいているクリエイターや会社の方は、ここを自分のレストランのように思ってくれています。そうすると人に紹介してくれるし、お客さんを連れてきてくれます。そういう外の人とのエンゲージメントが高いと、宣伝をしなくてもお客様が呼び込まれてくるというような、新しい形を意味しています。

鳥羽シェフご自身も、そういう外の方たちの応援をされているんですか?

鳥羽氏:
していますよ。例えば、奈良のサッカークラブのスポンサーをしてるんですが、色々なところでそうした活動をひろげています。将来どうなるかはわかりませんが、今自分が良いと思っていることを、将来のビジョンと照らし合わせてやっています。

将来のビジョンというのは、3年後の茶室の話ですか?

鳥羽氏:
もっと先も見ています。まずは3年後、これまで日本になかったような、カルチャーのあるレストランを作り、自分たちのポジションを確立することを見据えています。そこへ行けたら、そのポジションでしかできないことがあると思うので、そうしたら次の段階で、カルチャーとしてひろげていく。

具体的には、何年後くらいまでを見ているのですか?

鳥羽氏:
10年は見ていますね。売上の数字とタイムスケジュールは見ています。それを実現するために、今動いている。そんなに変わったことをしているつもりはなく、淡々とできることをやっている感覚です。
sio 鳥羽 周作 色々なアイデアは、ご自身で考えられているんですか?
鳥羽氏:
会社のメンバーと考えるときもありますが、基本は自分で考えています。ロジカルに考えるよりも、まず先に直感でやりたいことがあって、そのためにロジカルが必要になるという進め方です。

何かの拍子に、きっとパッとイメージが出るようなものなのでしょうか。

鳥羽氏:
自分がこれから目指すものに、社会的課題がきちんとあるかどうかは見ています。なぜ新しいシーンを作るのかという動機がないと、モチベーションが保てないんですよ。そこを明確にして、課題を見つけ、それに自分の直感をぶつけていきます。

「もっとこうなれば良いな」というのがあり、それを実現するための具体的なステップを立てていく。そうした思考法なのですね。

鳥羽氏:
現体制に対しての不満や想いを、レストランというツールを通して解決する。そんな、社会に対抗するロック魂みたいなのが、好きなんです。

最後に、これから料理人を目指す方や、料理の世界に入ってみたけれど、この先どうしようかなと思っている方へ、メッセージをお願いします。

鳥羽氏:
とにかく行動することですね。料理人であることもないことも、全てではありません。その人にとって100ある選択肢の中で、料理人はあくまでひとつ。行動することで、料理人が向いている人もいれば、そうでない人ということがわかる人もいます。向いていなかったとしても、やったことが人生にとってプラスになるのは間違いないです。今置かれている状況を一場面として切り取ってしまうと、成功か失敗かになりますが、そこを文脈として捉えることで、失敗も次につながります。
大事なのは、自分を主人公にした物語を作っていくことです。今やっていることが将来につながっていくという文脈として捉えていくと良いのではないでしょうか。

(聞き手、文:向井雅代、写真:刑部友康)

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