「店づくり」は考えない。気持ちのいい空間を作りたい

御料理 壽修
先崎 真朗

御料理 壽修 先崎真朗

■できないことを数え上げるのではなく、できるようになったことを考える

スタッフは先崎さんのほかにサービス担当のスタッフおひとりですよね。開業時からこの体制ですか?

先崎氏:
最初は若手の料理人がもうひとりいたのですが、2カ月くらいでやめてしまいました。それで今の体制になったのですが、ふたりでやってみたら、意外と手が足りていて(笑)。カウンター5席、テーブル6席の小さな店ですから、人が多くても狭くて動きにくいんです。

では、当面、料理はおひとりでというお考えなのですね。将来的に誰かと一緒にやるとしたら、こんな人がいいという人物像はありますか?

先崎氏:
やはり、まずはやる気のある人ですね。

「やる気のある人」とは?

先崎氏:
たいてい皆さん、修業先を決める時というのはそれなりの期待とか意欲があると思うんです。問題は実際に入ってみていろいろと思い通りにならないことがあったときに、今がつらいからと放り出してしまうのではなくて、数年続けて見た時にどうなのかということを長い目で考えられるかどうか。柔軟性が大事だと思うんです。もちろん、若いころは将来が見せませんから不安はありますよね。例えば、私も「斗々屋」さんに入って数年は食材にもあまり触らせてもらえず、「このままで料理をできるようになるんだろうか」と思いました。でも、その時に過去の自分を振り返ってみると、1年前、2年前よりも成長したなと思えることがいくつかはあるんですよ。できないことを数え上げるのではなく、できるようになったことを考えて自分のモチベーションを上げていく。

プラスの面に目を向けられるようになると、同じことをやっていても姿勢が変わってきますよね。ほかに先崎さんご自身の修業時代の経験から「これはやっておいてよかった」ということはありますか?

先崎氏:
ひとつは、いろいろなお店で食べてみることですね。その時に、料理だけでなく空間づくりや器、おもてなしといったものにも目を向けると良いのではと思います。自分が作りたいお店の理想像は人それぞれですし、「料理さえきちんとしていれば、ほかは気にならない」という考え方もあるでしょうけど、料理にも美意識というのは必要。

器、絵、書などいろいろなものに関心を持って視野を広げるとより自分を高められますし、料理の質にもつながると思います。

それから、自分が最終的にこうなりたいという明確なビジョンを持つことも大事ですよね。自分で店を持ちたいのか、ホテルの料理長など組織の中で手腕を発揮したいのか、環境にはこだわらず自分の好きな料理ができればいいのか。内容は何でもいいから、最終的なビジョンさえあれば、今、何をやればいいかが見えてきます。

先崎さんも「10年以内に東京へ」など、ある程度期限を決めて「今、これをやろう」というのが明確でしたよね。

先崎氏:
ガチガチに計画に縛られる必要はないと思いますが、だらだらやっていると目標から遠ざかっていくばかりなので。ちゃんと自分で図にしちゃうのもいいと思いますよ。「何歳までこういうお店を出す、じゃあ、何歳までにこれをやる」というのが見えてきますから。

御料理 壽修 内観

■自分が気持ちよく店をやっていないと、お客さまも居心地がよくない

2016年11月で開業から丸6年。この先のビジョンは?

先崎氏:
ふたつ方向性を考えていて、ひとつはもう少し店を大きくするのはどうかなと思っています。お陰さまでお客さまが増え、満席で予約をお取りできない日もあるので…。店全体を自分で見渡せる規模でやりたいというのが基本ですから、店を大きくするといっても、現在の11席を20席くらいに増やすイメージですが。もうひとつは、店の規模はそのままで少しだけ価格を上げてよりいい素材を使った料理をよりいい器でお客さまに出したいという思いもあります。

店の規模を少し大きく、素材や器のクオリティを上げたいといったビジョンが出てきたというのは、相応のお客さまがいらっしゃるようになったということなんでしょうね。

先崎氏:
そうですね。現在通ってきてくださるお客さまのメイン層は50代から60代で、経営者層も多いです。料理の味もよくおわかりになっていますし、文化への造詣も深く、いろいろなことを教えていただいています。ただ、10年後、20年後のメインのお客さまはどんな層なんだろうと考えると、僕と同じ世代かなと。今は料理もしつらえもすべて自分の世界観でやっていて、ありがたいことに受け入れてくださるお客さまがいますが、世の中が変化した時に果たして通用するかなというのは少し考えますね。僕たちの世代は日本料理よりも洋食に親しんでいる人が多いですし、空間や器の趣味も僕は少し枯れた感じなので(笑)。

お客さまへの押しつけは避けたいから、「“趣味の店”にはしたくない」と。

先崎氏:
はい。ただ、結局、店をやるのは自分なので、自分が気持ちよくやっていないと、お客さまも居心地がよくないとは思っています。お店の今後についても、「店づくり」という概念ではあまり考えていないですね。自分にもお客さまにも気持ちいい空間を作っていきたいです。

(聞き手:齋藤 理、文:泉 彩子、写真:清水知成)

御料理 壽修 外観

御料理 壽修

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