まずは目標を立てる。そこから逆算して人生を組み立ててきた

ZURRIOLA(スリオラ)
本多 誠一

ZURRIOLA(スリオラ) ワインセラーからワインを選定する本多誠一

■経験から生み出される料理を提供する店、それが「ZURRIOLA」である

店は麻布十番から銀座へ移転をし、スタッフも増えたそうですが、スタッフとのやり取りはどのようにしていますか?

本多氏:
うちの店は、大きな段取りは僕が組みます。そこには、できるだけ時間と数字で具体的に指示を書いて、スタッフが動きやすいようにしています。これは、ヨーロッパの料理だからできることなんですよね。

一般的に、ヨーロッパの料理は合理的だといわれますが、その利点を最大限にいかしているわけです。今は、師匠の背中を見て覚えるとか、洗い場で鍋の底に残ったものをこっそりなめるとか、そういう時代ではありません。僕自身隠すことは何もなくて、聞かれたら答えるし、レシピは誰でも見られるところに置いて自由に見ていいようにしています。

スペイン料理を作るうえでのこだわりは?

本多氏:
僕がやっていることは、ごくごくクラシックなものです。調理器具は、火とオーブンと、鉄板くらいですしね。そうした基本を軸に、僕が経験してきたこと、食べておいしかったもの、作っておいしかったもの、修業して学んで得たものを、「僕の料理」として出しています。

でも、スペイン料理を出す店であるがゆえに、いいアイデアを思いついてもやらない料理はすごくたくさんあります。スペインにいたら作っているかもしれないですけれど、ここは日本。スペイン料理の域を超えた料理はやりません。

それから、日本の料理雑誌は読まないようにしています。ヨーロッパの感覚のままでいたいと思うからです。それよりも、スペイン語で書かれた現地のリアルな知識を入れて、そこに僕らしさを足して、「ZURRIOLA」の料理を作りたいと思っています。

今後の展望を教えてください。

本多氏:
スペイン料理といえば、パエリアやアヒージョ、トルティーヤ、生ハム、オリーブ油くらいしか思い浮かばないのが現状です。外食に行こうと考えたとき、スペイン料理はまず浮かびませんし、ジャンル分けの項目自体にありませんよね。それほど、スペイン料理はまだ浸透していません。

だから、僕の店では、メニューをわかりやすいように言い換えますし、店名だけでなく「スペイン料理 ZURRIOLA」と前書きも入れています。

もっともっとおいしいスペイン料理はあります。スペイン料理っておいしいでしょ?と伝えていきたいですね。あとは、「スペイン料理を食べにZURRIOLAに行こう」という方を増やすことですね。実際、こうした方が増えていて、それは一番うれしいことですし、ありがたいです。ジャンルが関係なくなっているわけですから。

ZURRIOLA(スリオラ) 本多誠一

■夢、目標は持つべき。そうすれば自ずと何をすべきかが見えてくる

ご自身の経験から、若い世代に伝えられることを教えてください。

本多氏:
修業時代から今まで、いろんな人と仕事をしてきて出会ってきて、いろんな人を見てきて思うんですが、自分の環境の悪いところだけを見て文句ばかりをいう人は、周りを見渡してみると、今この世界で生き残っていないんですよ。

逆に、それでも文句をいわずにコツコツやっている人は、今でもそれぞれの形で活躍しています。活躍している人の共通項は絶対そこだと思います。あとは、みんなに好かれる努力はすべきですね。笑顔で大きい声で「はい!」というだけいいんです。尊敬する必要はありません。

僕だって大好きな人はいたけれど、尊敬はしていませんでした。その職場に飛び込んで、がんばったのは自分自身ですから。日本的な考えで「今の私があるのは師匠のおかげです」とかいいますが、あれは僕にいわせればそうではありません。

今のあなたが勝ち取ったものは誰のおかげでもなく、あなたががんばったからですし、がんばっているからこそ、まわりが手助けをせざるを得ないのです。そういう気持ちで取り組んでほしいと思いますね。

これから料理人を目指す若い人にひとことお願いします。

本多氏:
僕はフランスに渡るときに手書きで手紙を何通も書いたといいましたが、別にそれが重要なことではありません。パソコンで打ってプリントアウトして、たくさん投函すればいい。そんなことは、今の時代に沿ったやり方をすればいいと思います。けれど、簡単に検索でき過ぎるというのは、よくないと思います。パソコンやスマフォの中にデータとしては残りますが、自分の中の記憶や技術としては残りません。

それから、目標を持つことも大事です。これがあるかないかで、のちに大きな差が出ます。僕自身、「自分はこうなるんだ!」という目標をまず立てて、それに到達するには今何をすべきかを逆算して決めてきました。

そして、決めた目標は5年くらいのスパンで区切ったほうがいいと思います。1、2年くらいではまだ何もわからないですし、10年だと長すぎて見失います。5年くらいだといろんな面で蓄えができます。

次の5年間の目標を達成するまでにこの蓄えを消費しながら、新たに蓄えながらやっていくんです。たとえ目標とは違う方向に進んだとしても5年間一生懸命取り組んでいたら、誰かが必ず見ていて、絶対に手を貸してくれます。

(聞き手:齋藤 理、文:荒巻 洋子、写真:清水 知成)

ZURRIOLA(スリオラ) 外観 表札

ZURRIOLA(スリオラ) 外観

ZURRIOLA(スリオラ)

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