大陸をまたいだ、シェフの冒険。料理は人生を反映した物語である

Amber(アンバー)
Richard Ekkebus(リチャード・エッケバ)

Amber(アンバー)Richard Ekkebus

■25歳、モーリシャスの地でエグゼクティブシェフに。自らの料理を確立。

リチャード氏:
この話をもらって、私は、モーリシャスという場所が、自分のバックグラウンドと共通するところがあると感じました。まず、オランダ人は旅行が好きです。歴史的に見ても、私の故郷は東インド会社の本拠地で、スパイスを運ぶ船が停泊するところでした。その上、モーリシャスはアフリカ大陸のすぐ隣で、元々オランダの植民地。インド、中国、クリオール、フレンチ、イギリス、それにオランダと6つの料理の影響を受けていました。

私は当時25歳で、エグゼクティブシェフになるにはとても若すぎるのではないかと言ったのですが、サヴォワは、「私は君のキャラクターを知っている、できるよ。」と言いました。野心的で、よく働く私の性格を評価してくれた上で、声をかけてくれたのだと思います。

彼が一つ私に言わなかったのは、ここが多くの王族や有名シェフが休みの度に訪れる、お気に入りの場所だということでした。フランスのジャック・シラク大統領、スウェーデン国王など、多くの有名人がやってきました。

世界の富裕層が集まる場所での、初めてのエグゼクティブシェフとしての仕事。自分らしさを発揮できるチャンスでもありますよね。

リチャード氏:
そうです。私の前任者は、伝統的なフレンチを提供していましたが、私は島を訪れる人は異なった文化を楽しみにやってきているはずだと思いました。フランスから輸入した冷凍の鶏肉で料理を作るのは、ロジカルではないと考えたのです。
当時は、ハワイでロイ・ヤマグチ(Roy Yamaguchi)がフュージョンを始めた時期で、私もこの島ならではのものを作ろうと考えました。

まずは、食材にローカル材料を使うようにしたのです。ガチョウがいたので、肥育してオリジナルのガチョウのフォワグラを作って、地元のサツマイモと組み合わせてみたり、地鶏にモーリシャス特産のコーンやサトウキビなどを食べさせて甘みのある肉に育てたりもしました。
特産のトロピカルフルーツ、スパイスなども色々と使いましたし、インドのタンドール窯を使って、ロブスタータンドリーを出したりしていました。地元の魚を、ココナッツのエマルジョンでカレー風味にしたりもしましたよ。厨房にいるモーリシャス人に、地元の料理を教えてもらい、スパイスを控えたりして、多くの人に楽しんでもらえるようにしました。

こう言ったオリジナリティのある料理が話題になり、ベルナール・ロワゾー(Bernard Loiseau)、ジョルジュブラン(Georges Blanc)、ミッシェル・トロワグロ(Michel Troisgros)なども来ました。
フュージョンにみんなとても興味を持っていたのです。
フランスのシラク大統領にパリに、またスウェーデン国王にスウェーデンに招待されて料理を作ったりもしました。

結局、モーリシャスでは35歳まで10年間を過ごしました。

オリジナル料理が好評を博し、自分の料理を確立した時間でもあったのですね。10年後の転機はなんだったのですか?

リチャード氏:
投資家から声がかかり、昔から好きだったNYにレストランをオープンすることになっていたのですが、そこに9.11が起きてレストランどころではなくなってしまいました。

仕事を辞めてしまい、どうしようと思っていたところに、のちにミシュランガイドブックのディレクターとなる、当時ザ・サンディ・レーン・イン・バルバドス(The Sandy Lane in Barbados)の副社長だったジャン・リュック・ナレが電話をかけてきたのです。
「カリブ海・バルバドスの新しいホテル、ザ・サンディ・レーン・イン・バルバドス(The Sandy Lane in Barbados)でエグゼクティブシェフをやらないか」、という誘いでした。すでに職を失っていたので、バルバドスに行きました。

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■カリブ海で、人のマネジメントを学ぶ。社会的な組織体系を変え、女性を積極的に登用。

モーリシャスで10年働いた上での、バルバドスでの体験。インド洋からカリブ海に場所を移しての仕事はいかがでしたか?

リチャード氏:
料理という面では、カリブ海はそれほど面白くはありませんでした。そこで学んだのは、逆に人のマネジメントです。

モーリシャスでは、リーダーシップを持っていれば、スタッフはついて来てくれましたが、カリブの人たちは違いました。あまり真面目に働く文化がない人たちを使って仕事をするのは、最初の頃大変でした。

どのようにして解決したのですか?また、こういった場所での人の採用の基準はなんですか?

リチャード氏:
どうすれば良いのか、まずはバルバドスの人たちを観察することにしました。そして気づいたのは、女性が家族の中心で、とてもよく働くということです。そこで、女性を積極的に重要なポジションに据えることにしました。子供たちを食べさせなくてはいけない、という責任感が女性の方が強く、しっかりと働いてくれました。モーリシャスでは、女性は10%もいませんでしたが、バルバドスでは、最終的には40%が女性で、私のスーシェフも女性にしました。バルバドスでは伝統的に、重要なポジションに女性がいることはそれまでありませんでしたが、私はそう言った社会的な組織体系を大きく変えたのです。

この経験もあり、私は女性の登用に積極的になりました。今の私のレストラン、アンバーでもスタッフの半分が女性です。

こういった辺境の地の場合、スタッフを選ぶ際に重要視するのは、モチベーションと、海外の経験があるかです。広い世界を知っているかどうか、というのは重要なキーになります。

そして、現在のレストラン、アンバーに至るわけですね。

リチャード氏:
こうして、2年間をバルバドスで過ごした後に、マンダリンオリエンタルの話をもらいました。現在50歳ですから、12年目になります。最も長くキャリアを過ごした場所で、とてもこの場所を気に入っています。生涯香港で暮らすつもりです。

Amber(アンバー)内観

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