料理はラブ・ストーリーのように情熱的なもの

Ultraviolet by Paul Pairet(ウルトラバイトレット)
Paul Pairet(ポール・ペレ)

 

Ultraviolet by Paul Pairet(ウルトラバイトレット) Paul Pairet

撮影 : Scott Wright

■料理の世界で曲がりくねった道を歩む価値

あなたのキャリアは決してまっすぐな道ではありませんね。中断したり寄り道したり、レストランではないところでシェフをしたり。

ペレ氏:
パリでしばらく働いた後、3年間休息をとりました。その間に、教師として学校に行きました。
そこはもともと国立のシャルキュトリーの学校だったのですが、そこではシャルキュトリーという職業の素晴らしさを学ぶことができました。
その学校ではシャルキュトリーになりたい人のトレーニングを行う以外にも、イベント企画運営なども行うことができました。

私はラッキーなことにイベントの料理実技演習の担当者になることができました。1年目は1・2クラスを担当していましたが、いいトレーニングになりましたね。毎週20~50人が集まって、パリとプロバンスで実技演習をしました。
ほとんどの実技演習はMOF (meilleur ouvrier de France 国家最優秀職人章)によって行われました。

それぞれの分野で一流の方々のデモンストレーションが行われていましたから、色々学ぶことができました。そんなこんなで想定より長くいましたね。というわけで、プレッシャーに追われる日々から離れ、とにかく学びの3年間を過ごしました。

そこからはどうされたのでしょうか

ペレ氏:
実技演習の仕事は大変勉強にはなったのですが、実際の現場との差なども感じてきました。

そこで次に人材紹介会社のエージェントからネスレ(Nestle)の商品開発の研究者の職を紹介されました。ネスレは大きな中核のオフィスをパリに構えており、そこには研究の設備が整っていました。
本当にその仕事がしてみたいと思ったのですが、残念なことに提示された給料がとても低かったのです。
エージェントとの面談の際に私は「仕事は問題ないですが、お給料が正しくないのでは?」と言いました。その一言を言ったとたんにエージェントの顔色が変わりました(笑)という訳で、その職に就くことはできませんでした。そうじゃなかったら、やりたかったんですけどね。

その後、私は少しの間迷走していまい、なぜか1年間バーテンダーとDJをやりましたね。なぜかは聞かないでください(笑)

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■再び料理の世界へ

どのようにして、料理の世界に戻ってきたのですか?

ペレ氏:
ホテル・スクール時代の友達たちが香港のホテルでサービス責任者として働いており、彼らが良い仕事を紹介してくれました。それに飛びついたわけです。そしてそれが、本当のシェフとしてスタートとなったのです。

80年代に「ポール・ボキューズ(Paul Bocuse)」がオープンしたとても美しい香港のレストランで2年間働き、終わるときにはエグゼクティブシェフになっていました。私は王冠の中の宝石にでもなったような気分でした。私にとって、初めての高級レストランでの日々でしたが、大変上手くいっていましたね。居続ければ大きな名声を得ることもできましたが、名声は私が本当に欲しいものではありませんでした。
私はあくまで料理がしたかったのです。そして私はそこからオーストラリアへと旅立つことになりました。

オーストラリアに行く前、実は私はロンドンにいて仕事をさがしていたんですが、結局の所見つけることができなかったのです。その時、ロンドンで知り合ったとある雑誌の編集者から「ポール、あなたは絶対にあそこに行くべきよ。あそこは料理へのエネルギーで溢れている。」とオーストラリアに行くことを進められたんです。そしてそれは本当でした。

僕の人生には、所々間が入ります。しかしそういう間も、時として価値があります。少し時間を置いてやりたいことを思い返してみることもいいものですよ。

その経験があるから、今はボスとして、部下を大目に見たり理解できる、ということでしょうか?

ペレ氏:
いいえ。特に賢い人にはがっかりさせられる事があります。
私は、C.V.(履歴書のこと)はほとんど無意味で、キッチンでは情熱こそが一番重要な要素だと考えています。
皆初めからうまく料理人としてのキャリアを進められるわけではありません。私だってそうでした。しかし情熱があれば、どこかで自分の居場所を見つけることができます。それは経験から学んだことです。

情熱があってそれなりに学歴がある人には、出来るだけチャンスをあげるようにしていますが、彼らは時々キッチンの中の重責に押しつぶされてしまいます。キッチンは学校ではなく現実なのです。テレビでもインターネットでもありません。いずれ、そのことを学びます。しかしいくらか時間をかける必要があります。
やるべきことをやらずして、プロのレベルで料理していくのは難しいでしょう。

私は私のやり方でやってきました。あなたがその通り辿る必要はありませんが、基本的なトレーニングは必ず必要です。そしてそのバック・グラウンドは、あなたのその後の人生にずっとついて回ります。
情熱を絶やさないことは、あなたにしか出来ません。それが結構難しいのです。

料理の世界はとても困難なものです。情熱がなければ、継続させることはできません。もしかしたら毎日優雅に6時間だけ働く、という料理人がいるのかもしれませんが、私は会ったことがありませんね。
正直に言って、プロのシェフはハードな日々を送っています。

困難とハードル続きのこの世界で、情熱を保たなければいけません。私はいつも情熱を持っていたし、むしろそれはどんどん強くなりました。ここにたどり着くまでの間に、私がキッチンで出会った多くの才能溢れる人々、おそらく私よりもずっと才能を持った彼らの95%が、キッチンを去っていきました。
彼らの中には、食べ物を売るなどして、まだこの業界に携わっている人も多くいます。私もその道を選ぶことも出来たし、また違う道もあったでしょう。でも今ここにいることに何の後悔もないし、そういう運命だったのだろう、と思います。私たちは失敗から学ぶとよく言います。でも同時に、失敗しないことから学ぶこともあります。

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■障害に直面して情熱を見つける

三つ星を取るまでに直面した障害について、少しお話を伺ってもいいですか?

ペレ氏:
沢山の障害がありましたよ。でもそれは、成長させてくれるものでもありました。人にはそれぞれ生き方があります。私は、スタミナ、特に精神的なスタミナが重要だ、と思っています。情熱は育て続けなければ消えてしまいます。情熱は育てるものなのです。それは平凡な毎日の中にある、ただの情熱じゃありません。情熱を育てていくには、時々なぜこの世界にいるのか、振り返ってみる必要があります。
恋人といる感覚に近いかもしれませんね。他にも女の子はいるし、きれいな子は沢山いるのに、どうしてそのたった一人と一緒にいるのか、時々思い出すでしょう。料理も同じです。ラブ・ストーリーのように思ってください。なぜ私が今も料理を愛してやまないのか?もうたくさんだ!と思ったら、やめるでしょうね。情熱を絶やさないこと。燃やし続けることです。

どうやってその情熱を育てるのですか?あなたは何をしますか?

ペレ氏:
毎朝鏡の前で自分に問います。
「まだ料理がしたいのか?まだ料理がしたいのか?僕に言っているのか?まだ料理がしたいのか?」と。
というのは冗談です(笑)
なぜこの世界にいるのか、それを忘れないことです。ゴールを明確にし、ゴールに向かってチャレンジし続けるのです。

最後に一言

ペレ氏:
このインタビューでは正しく伝わらないかもしれませんし、私のこれまでの経験談が役立つかどうかわかりません。しかし、これまで私が歩んできたことを素直に話でき、とても楽しかったです。ありがとう。

(聞き手/文:Christopher St. Cavish、写真:Brandon McGhee、料理/店舗画像:店舗提供)

Ultraviolet by Paul Pairet(ウルトラバイトレット) 内観

画像提供:Ultraviolet

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