積み上げてきた老舗の歴史、その延長線上に自分の料理がある

L'Osier(ロオジエ)
Olivier Chaignon(オリヴィエ・シェニョン)

L'Osier(ロオジエ)Olivier Chaignon 厨房

■老舗レストラン「ロオジエ」のシェフに就任。自分に求められていることを成す

ピエール・ガニェール・ア・東京のあと、「ロオジエ」のシェフに就任しますが、そのいきさつを教えてください。

シェニョン氏:
2011年にガニェールとの契約が終わり、フランスに帰るつもりでした。だから、荷物もまとめていて、お世話になった人達にメールであいさつをしていたんです。

ところが、フランスに発つ前夜に、ジャック・ボリー氏から電話があったんです。

「1か月前にメールをもらっていたけれど、返事をしなくてごめん。フランスに帰っちゃうんだって?ところで、『ロオジエ』には興味ある? 今、シェフを探していて、君も候補の1人にどうかなと思って。でも、『ロオジエ』は今リニューアル中で工事をしているから、2~3年後の話になっちゃうけど」と。

そのときは即答できませんでしたが、先にフランスに戻っていた家族にも相談して、しばらく考えました。翌週、ボリー氏に電話をかけ、「候補のひとりになりたい」と志願しました。それで、選ばれて、今ここにいるわけです。

なんて劇的なタイミング! 「ロオジエ」のシェフに就任して以降、心がけていることは何ですか?

シェニョン氏:
「ロオジエ」は45年という歴史のあるレストランなので、歴史の中で自分の立ち位置を考えることが重要だと思っています。新しいレストランならばゼロからのスタートなので、背負ったものを考える必要はありませんが、ここではそうはいかない。歴史を抱えながら次のページを開かなくてはなりません。

つまりこれは、クオリティを保ったまま、あるべき姿を守りながら、自分の姿も投影することなんです。これを常に意識しています。

シェフが変われば料理自体が変わるのは当たり前です。でも、それは「ロオジエ」クオリティを保つことが大前提です。そのうえで、自分らしさを加えていくことが重要なのです。

日本でフランス料理を作るうえで気をつけていることは?

シェニョン氏:
私が日本で作るフランス料理は、私がフランスで作るフランス料理とは少し違ったものになるでしょう。ここでは、「日本人がフランス料理を食べる時に何を期待してお店に来ているか」を意識して作るようにしています。

たとえば、今、世界では日本料理がはやっていて、いろんなシェフが日本の食材を使っています。ヨーロッパのシェフたちは、目新しいという意味で、日本の食材を使いたがるんです。けれど、日本人がフランスに行き、フランス料理を本場で食べているのに「日本の味がする」とがっかりすることがあると聞きます。

ですから、私は日本の食材はもちろん使いますが、和食を感じさせるような使い方はしません。そうして、ベースのフランス料理は崩さずに作る。これがこだわりです。つまり、日本の食材のよさを生かしつつ、フランスの味を再現することを常に心がけています。

L'Osier(ロオジエ)料理
写真提供:ロオジエ

「ロオジエ」をどのような店にしたいとお考えですか?

シェニョン氏:
「ロオジエ」で私がやるべきことは、料理はもちろんのこと、それ以外においても完璧であることです。予約時の電話対応から、サービス、食欲がわくような料理の説明の仕方まで。その一つひとつを大切にし、お客様がお店にいらしてからお帰りになるまでのステップが完璧であることが大事だと考えています。

なぜならば、私自身、サービスが感じがよくないところには、料理がおいしくても、また行きたいとはあまり思わないからです。料理とサービスは同じレベルで、すばらしいものでないといけません。

若手への教育はどうしていますか?

シェニョン氏:
まず、フランス料理の基礎をしっかり学ぶことです。そして厨房の中で他のスタッフが何をしているか注意深く見ること、たくさん味見をして、味を知ることです。

たとえば塩分の感じ方は人それぞれ違うので、私の味にそろえてもらわないとなりません。ですから、そうしたコントロールはしっかりしていますし、最後の盛りつけをしているときに食材一つひとつの味をきちんと確認して、直してほしい場合は伝えています。

チームで働くことは人間同士なので、大変なときもあります。でも、自分とは違うからこそ楽しいんですよね。逆に、みんなが同じで働き方も同じだとしたらつまらない。反対意見があることによって、変化が生まれるのです。

今後の展望を教えてください。

シェニョン氏:
私は常に進化していきたいと思っています。
この仕事に終わりはありません。自分自身も、ここに来たときと今では変化していますし。同じ食材を使うのでも、使い方は変わっています。

ですから、今後の目標のために何か特別なことをするというよりは、常に続けていき、その先に未来が見えてくると思っています。ものごとはすべて連続の中にありますから。

L'Osier(ロオジエ)Olivier Chaignon

ところで、シェニョン氏は、インタビューをうかがっている中で、ほとんどネガティブなことをおっしゃらないですね。料理人として生きる中で、辛かったことなどもあったのではないでしょうか?

シェニョン氏:
辛いときや、嫌なこと、失敗して落ち込むことはもちろんありますよ。いいことがあって、悪いことがあるというのもわかっています。

けれど、先ほどもお話ししたように、人生は連続していて、変化して、動きのあるものです。だから、辛い何かがあっても、そのうち持ち返してプラスに転じていくと思っているんです。

やる気を保つ秘訣は、働いていることに喜びを感じることです。私の場合、一番の喜びは、やはりお客様が喜ぶ顔を見ること。自分がやっていることの結果が、そこにあらわれていると思うのです。人が幸せな気持ちになっているのを見るのは、実にうれしいものですからね。これを見たいと思うから、がんばれるんです。

料理人を目指している若者にひとことお願いします。

シェニョン氏:
この仕事を好きであること。熱意とモチベーションを持ち続けることが大切です。料理人はきつい仕事ですから、嫌いだったらできないかもしれません。けれど、それはどの仕事も同じですよね?

やりたくないと感じることを、しなくてはいけないというのは悲しい。だからこそ、好きなことをしたほうがいい。自分が喜ぶことを、きちんと感じることが大切です。

また、しがみついてでもやりたいという気持ちを持ち続けること、継続は大事です。たとえ大変なことがあっても続けることで見えてくることがある。続けていき、やる気さえあれば、いつかは何かが見えてくるものです。

(聞き手:齋藤 理、文:荒巻 洋子、写真:清水 知成)

L'Osier(ロオジエ)内観
写真提供:ロオジエ

L'Osier(ロオジエ)外観

L'Osier(ロオジエ)

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