追い求める味を思い描くには、そのレベルの料理を知らなければならない。

直心房 さいき
才木 充

直心房さいき

■44歳で京都大学大学院へ

ところで、才木さんは2013年に京都大学大学院農学研究科に入学するという異色の経歴の持ち主ですが、きっかけは何だったのでしょう。

才木氏:
私は3代目でしたので、代々続く料理屋の若主人たちが入る京都の料理組合「京都料理芽生会」に所属しており、そのご縁で「日本料理アカデミー」のメンバーとして、京大の農学研究科と協同研究を行なう「日本料理ラボラトリー」の活動に参加していたんです。その時に知り合った栄養学の権威者である伏木教授から、大学院への受験を勧められて。私ともう2人の京都の料理人と3人で、受けることになりました。過去20年間の入試問題あげるからと言われて。実は私は尻込みしていたのですが、他の2人が即決で「やります」ということで、そうなると私もやるしかありません(笑)。

試験は、英語と小論文、面接でしたが、社会人枠でも足切りラインがあって、かなり厳しい条件でした。早朝合間の時間や閉店後、勉強を続けました。何とか合格して、無事修士論文も提出し、昨年2015年の3月に卒業しました。

なかなか営業をしながら、できることではないですよね。京都大学大学院で学ばれたことは、今の料理にも生きていますか。

才木氏:
料理の旨みなどを科学的に解明していこうという研究に携わらせていただき、多角的な視点を持てるようになりましたね。日本料理の土台はほとんどが経験値からくるもので、どうしたらおいしくなるのか?という方法論については、それが正しいかどうかは誰にも分からない。なぜ出汁がおいしくなるのか、何が大事なのかなど、おいしさの秘訣というのを知り、自分のテクニックに結び付ける上で大変役に立ちました。

料理をする上での視野が広がったということですね。

才木氏:
やはりまな板の上でだけ食材を眺めていても仕方ありません。お客様が食べてどう感じるか、その感覚を大切にしないといけない。今日、調理した何かより、一つでも多く明日はおいしいものを作ろう、とかそういう目標をずっと抱き続けられる人。それが次のステップに進める人だと思っているのですが、大学院で、おいしく作る上での新しい視点を、たくさんいただけました。大学院に誘ってくださった教授をはじめ、こういう環境に身を置けたきっかけをくださった方に非常に感謝しています。

直心房さいき 才木充

■働くことに満足したら、そこで料理人人生は終わり

今後、実現してみたい夢などはありますか。

才木氏:
今はたくさんありすぎて自分で整理できていませんね。もっと知見を増やしたいし、色んな世界の料理を見たい、色んなシェフと話してみたい…。食べ歩きは、何となく味の想像がつく日本料理ではなく、特定のジャンルに絞って食べ比べをしたり、多国籍の料理を食べて刺激を受けるようにしています。

料理を食べて勉強になるのは、料理だけじゃないんです。例えば、外国の料理ですと、食材使いや盛りつけ、もてなしからその国の文化や精神性を感じることができます。料理をするだけがサービスではないですから。

第一線で活躍されている料理人の皆さんに共通して、今の仕事を少しずつ発展させ、枠を広げられていく方が多いと感じます。

才木氏:
そうでないと、自分が広がっていきませんし、店自体も広がっていかないですよね。そういう気持ちがないと。働いたことに満足したらだめですよ。どんな業界でも同じだと思います。色んなことを見聞きして、知識を得て、ちょっとずつでも身にしていく。一歩一歩、高い目標を据えて、前に進む。それが料理人として大事な心構えだと思います。

(聞き手:市原 孝志、文:田中 智子、写真:逢坂 憲吾)

直心房さいき

直心房 さいき

お問い合わせ
075-541-8630
アクセス
〒605-0822 京都市東山区八坂鳥居前下ル上弁天町441
京阪本線四条駅から徒歩20分
駐車場なし
営業時間
昼11:30~14:30(L.O.13:30) 夜17:30~22:30(L.O.20:00)
定休日
不定休
求人情報
藤産業