Foodion │ 一流シェフ・料理人のプロフェッショナル論。

追い求める味を思い描くには、そのレベルの料理を知らなければならない。

直心房 さいき
才木 充
八坂神社よりほど近く、石畳が続くひっそりとした路地に佇む「直心房 さいき」。店主として腕を振るうのは、創業80余年の老舗料亭「さいき家」3代目として生まれた才木充氏である。2009年には堀川北山の前身店舗を現在の地へ移転、店構えや料理のスタイルも一新し、2011年より6年連続ミシュラン1ツ星を獲得。3代目としての葛藤をどのように乗り越え、ご自身のスタイルを確立されていったのか。また、料理人が持つべき心構えについてお聞きした。

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苦労する両親の姿を見て、敬遠していた料理の世界

老舗料亭の3代目ということで、将来的に店を継ぐことは、いつ頃から意識されていたのでしょうか?

才木氏:
実は私、料理人になりたくなかったんです。当時は店と家が一緒で、仕事が終わって着替えないまま家に帰ってきた父と、それを支える母の苦労する姿を毎日見ていて、料理屋で働くとか、料理人になることに抵抗がありました。小学生の時から、友だちと一緒に遊びたいのに、忙しい時は手伝えと言われてそれがすごく嫌で。

それで中学を卒業する時の進路選択で、家を出て全寮制の高校にいきたいと申し出たんです。「自分がこのまま敷かれた線路の上を、何も考えないまま歩くのは嫌だ。一度、外の空気を吸ってみたい」と。

そうして進学したのは岐阜にある高校。道徳教育を学べるところでした。1年生から3年生が同じ部屋で共同生活し、上下関係をきっちりと叩きこまれます。あいさつをきちんとする、年上の方を敬う、感謝の気持ちを持つといった社会を生きる上で当たり前のことを学ばせてもらいました。私たちの親世代はそのような教育にちょうど反発し始めた世代だったので、とても厳しい学校でしたが、今、日本人が最も学ばなければならない精神を教えてくれるところだったと思っています。働くとはどういうことか、という根源的なことも考えることができ、この高校に入っていなければ料理人になってなかったかもしれません。それぐらい、人生のプラスになった3年間でした。

 

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夢を捨てざるを得なかった父が、自分に託した想い

高校卒業後の進路については、どのように考えられていたのですか。

才木氏:
そのような厳しい学校でしたので、卒業生の中には一部上場会社の社長をされている方も多く、同級生には進学後有名企業に就職し多数が社会人として貢献している。また全寮制で先生にみっちり勉強を見てもらえるメリットもあり、進学する人も多かったですね。

私はというと、色々思うところはあったものの3代目として店を継ぐ覚悟はしていましたので、「もし私が将来店を継がないといけないのであれば、卒業後はまず別の店で修業をさせてくれ」と父に話しました。

すると進路を決める時に、私の父は大学に行くよう私に勧めてきたんです。というのも、私の父は将来は新聞記者になりたいとずっと夢みていたということで、関西の有名私立高校を首席で卒業、特待生として早稲田大学の政経学部への推薦入学が決まっていました。ところが、いざ進学が差し迫った時、「お前は家を捨てて出ていくのか」と祖父に言われ、父は自分の夢を諦め、「さいき家」の2代目を継ぎました。その当時は親に逆らうなんてという時代でしたし、父も祖父が守ってきたものをずっと傍で見ていたから、家を捨てる選択はできなかったのでしょうね。だからこそお前は自分の道を、と考えてくれたのではないでしょうか。

確か高校3年生の、1学期が終わる頃でした。わざわざ京都から岐阜まできてくれて。父自身が、大学時代に友人関係を築き、知見を広げたことが、仕事をしていく上で宝となったことを、身をもって体験していたので、進学を勧めてくれたのだと思います。

直心房 さいき

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