自分を知って、自分を活かす

Masa
高山 雅芳

Masa 高山雅芳

画像:店舗提供

■大都市・ニューヨークでつかんだ栄光

そして、2004年にいよいよニューヨーク(NY)に移られますね。その理由は何ですか?

高山氏:
ビバリーヒルズの店は繁盛していたので離れる理由はなかったのですが、一番大きな理由は離婚したことです。

その頃ちょうど、トーマス・ケラー(「フレンチ・ランドリー」のオーナーシェフ)から電話があって、NYのワーナーがテナントを探している、という話を聞いたものですから。ビバリーヒルズの店は内弟子の一人に譲り、心機一転NYに向かいました。

とても思い切りが良いですね!NYは、また違う客層になったのでしょうか?

高山氏:
そうですね、ビバリーヒルズよりはベジタリアンなど食事制限のある人の比率は減ってやりやすくはなりました。

NYに移って、日本からの魚の仕入れは、どうされたのですか?

高山氏:
大阪からの直行便はないので、東京・築地に会社を作り、そこに買い付け専門のスタッフを常駐させました。東京から送るまでのところは、全部やってもらっています。NY側の受け取りは、今も自分が空港に行って受け取っていますね。

Masa 調理

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ただ、日本の食材だけにこだわっているわけでもないのだとか。

高山氏:
そうですね。美味しいと思うものであれば、日本以外の食材も積極的に使っています。

例えばラングスティーヌ(※テナガエビの一種)は、ヨーロッパから良いものが入りますし、タラバガニはノルウェーのものが美味しいですね。甘みがとても強いので、店でもそれを使っています。

また、欧米産の美味しいトリュフがあって、それを寿司として美味しく食べられないかと思い作ってみました。

トリュフそのものと酢飯とのバランスに苦労しましたね。そこで、刻んだトリュフにビネガーとオイルを入れてソースにして、トリュフそのものとの「つなぎ」にしました。それを小さなボール状にした酢飯にまとわせ、スライスしたトリュフをまぶして、今の形になりました。

こうした食材に対しての自由な発想やアイデアの根本には、「寿司幸」のスペシャリティである椎茸の寿司があります。これは、二代目の大旦那が戦時中に「山の中でも寿司が作れなくちゃいけない」といって作ったものです。

もちろんその当時は、歴史のある寿司屋が何を始めたんだ、って批判もあったでしょう。けれども伝統は守りではなくて常に動いているもの、変わっていくものだと思うんです。

そして、長年ミシュランの三つ星にも輝いていますね。

高山氏:
オープン翌年の2005年秋にミシュランガイドブック(2006年版)がNYに上陸して、初年度は二つ星、そして2009年版からはずっと三つ星をいただいています。

意識はしないようにしていますけれど、やはり客足には影響はありますね。

実はこれには裏話がありましてね。ガイドブックが上陸前に、ミシュランタイヤのオーナーのその名もミシュラン氏が食事に来たんです。

カウンターに座って「俺が誰だか知っているか」と聞くわけです。店にはあらかじめゲストについての情報がありますから、当然ミシュランのオーナーだというのはわかっていました。

でも、その聞き方がどうにも気に入らなくてね(笑)。人間関係ってそういうものではないじゃないですか。だから、「(あなたの会社は)タイヤを作っているらしいけど、日本にはブリジストンというもっと大きい会社がありますよ」って言ってやりました。そうしたら真っ赤になって怒ってね。…それでも、寿司は全部食べて行きましたよ(笑)

Masa 厨房

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そんなことがあっても二つ星、三つ星に選ばれるというのは、改めてミシュランガイドの中立性・厳格性が伺えるエピソードですね。…さて、今ではKappo Masa(割烹)、Tetsu(鉄板焼き)、 and Masa’s Raw Bar(バー)など、幾つもの系列店を持っていらっしゃいます。大きなチームかと思いますが、スタッフはどのようにして選んでいらっしゃいますか?

高山氏:
採用には担当者がいますが、いつも担当者に伝えているのは、まずは人間性と言うことです。正直さ誠実さがないと一緒に仕事ができませんから。

ただ困るのは、人間性はいいけれど不器用な人。どんなに教えても、感覚的なもので教えても教えられない部分というのはあります。そういったところは採用の難しさを感じる部分です。

Masa 料理

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飲み物、税金などを含まない価格で一人あたり595ドル(日本円で約6万4800円)、アメリカで一番高い寿司レストラン、と言われることもありますね。それについてはどう思われますか?

高山氏:
特になんとも思いません。NYは家賃も人件費も一番高い街。うちの家賃だけでも月に何千万円ですからね。その金額分もしくはそれ以上にお客さんを感動させられるなら、決して高くはないと思います。そういう意識で日々仕事に向き合っています。

若い料理人たちに、成功するための秘訣を教えてください。

高山氏:
成功しようと思うことよりも、もっと大切なことは”自分自身を知ること”です。お客さんのために自分を殺すのではなく、自分を活かしつつやりたい仕事をしていくことが大切です。

(インタビュー・文・撮影:仲山 今日子)

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