自分を知って、自分を活かす

Masa
高山 雅芳

Masa 高山雅芳

画像:店舗提供

■セレブリティが集うビバリーヒルズで、独自のスタイルを確立

そこから、ビバリーヒルズにお店を移転されるのですね。

高山氏:
1992年のロス暴動で、ダウンタウンにあった私の店の近辺も被害を受けてしまいました。さらにロスの経済自体も冷え込んでしまって。

そんな時に、かねてから気になっていたビバリーヒルズの物件が、以前の半額以下の家賃になっていたんです。良い場所だったのでそちらに移転することにしました。

ビバリーヒルズに行って、客層は変わりましたか?

高山氏:
ガラリと変わりました。もちろんダウンタウンの店も当時日本から直接魚を入れている店はうち以外にはありませんでしたから、セレブリティと呼ばれる方々もたくさんいらしていました。
ハリウッドのお膝元のビバリーヒルズでは、映画関係の方などが圧倒的に増え、地元の方がほとんどでした。当時はバブルがはじけたこともあって、日本人はほぼいなかったですね。

映画関係者の方はやはり食べ物の制限をされていることも多くて。グループでのお客様のうちだいたい一人くらいは、ベジタリアンの方がいらっしゃるんです。

そんなお客様だと、お魚も召し上がっていただけません。けれどもやらなくちゃいけないでしょう? だからいろいろと工夫しましたよ。「寿司幸」の二代目の大旦那が考案した炙った椎茸をネタにした寿司があるのですが、それを出したり野菜や湯葉を炙って握ったりね。

Masa 料理

画像:店舗提供

そうそう、外国人のお客様に美味しく食べて欲しくて寿司酢も変えました。

もともとは、江戸前ですから赤酢を取り寄せて使っていたんですが、どうも外国の方にはクセが強く感じるようで、食べづらそうだったんです。そもそも赤酢は「乙酢」と呼ばれる庶民的な酢ですから、今の時代は美味しい米酢を使った方がいいんじゃないかと。そう思って米酢に変えたんです。

季節によって、寿司酢のバランスも変えました。夏の暑い時期は酸味をしっかり、そして冬は少し火を長めに入れて酸味を優しくしたりといった具合ですね。

看板メニューである「シグネチャー」が生まれたのもこの頃です。
イラン人のワイン商で父親がキャビアを扱っているという人がいて、そのキャビアを食べてみたらとても美味しかったんです。キャビアを美味しく食べられる寿司はないか。そこで思いついたのがトロと合わせること。

トロには筋がありますから、その部分はすべて外すんですね。それを中落ちと同じように、身だけを取り出すんです。

ネギトロのように海苔で巻いても美味しいんですが、高級店で出すのにはちょっと抵抗があった。だから、トロの上にキャビアを乗せて一緒に食べたらどうかと思ったんです。

そうしたら、癖のない中トロの脂とキャビアの塩気とがちょうどいい塩梅になった。こんな風にして西洋的な食材も自由に使うようになったのがこの頃ですね。

Masa 料理

画像:店舗提供

トロとキャビアという組み合わせは、日本でもあまり見たことがないですね。

高山氏:
また、この頃から自分で食器のデザインも始めました。

それまではアンティークのコレクションで提供していたのですが、それに飽きてしまって。ちょうどその頃、日本の雑誌「家庭画報」に取材していただいたのですが、掲載誌を受け取って読んでいたらうちの店が載っている前のページに九谷焼の須田靑華(すだせいか)さんの染付けの作品が載っていたんです。

それが気になって、次の年から年2~3回、石川県に通い始めたんです。
自分でデザインしたものを作ってもらったり、すぐ近くの窯元の伊豆蔵正次さんや吹きガラスや漆の作家を紹介してもらったりして、オリジナルの食器を徐々に増やしていきました。

私は栃木の出身なのですが、里帰りをした際に益子にいる陶芸家の方との出会いもありました。美術展に訪れた際に一つの作品をとても気に入ってしまったんです。

シンプルな器に竹ベラで切り筋を入れた作品があって、その切り筋が実にいい具合でした。切り口が綺麗で、土の断面がキリッと出ていて。この切り口に何か「瞬間」のようなものが閉じ込められているような気がして、それがとてもいいなと感じました。作者の名前を調べて会いに行き、デザインをお願いしました。現在もお付き合いが続いています。長い付き合いになりますね。

ビバリーヒルズのお客様が、そういったオリジナルの食器を好むのでは、と考えてそうされていたのですか?

高山氏:
いえ、そうではなくて単に自分の好きなものを使いたいと思って使い始めただけです。自由に時間がある中で、魅せられたものを取り込んでいって。お客様が「この器、いいね」と褒めてくださる機会が増え、好意的に受け入れられていきました。

Masa

お問い合わせ
+1- 212 823 9807
アクセス
10 Columbus Circle, Time Warner Center, 4th Floor, New York, NY 10019
http://www.masanyc.com/#
営業時間
ランチ:12:00〜13:00(火曜〜金曜)
ディナー:18:00〜21:00
定休日
日曜