白 Tsukumo 西原 理人

料理は仕事ではなく人生をかけて情熱を傾けるもの。それだけの価値がある

白 Tsukumo
西原 理人

白 Tsukumo 西原 理人

■誰もしていないことをする喜びが料理の原体験

最初に、料理の世界に興味を持ったきっかけを教えてください。

西原氏:
僕は子どもの頃から本当に平均的で、勉強ができるわけでもなく、背が高いわけでもなく、人と比べて特に優れている所がありませんでした。小学校3年生の時でしたが、母のために目玉焼きを作ってあげると「おいしい。ありがとう」と誉めてくれたんです。
それがきっかけで料理に興味が生まれて、子ども向けの料理本を買ってもらい、シチューやハンバーグ、スパゲティなど洋食の作り方なんかを見ていました。コックコートのイラストがかっこよくて「いつかはコックさんになりたい」とその頃から思うようになりました。

たしか5年生の時でしたが、友達と公園でローラースケートをして遊ぶ約束をした時に、ホットケーキを作って持って行って、みんなに食べてもらいました。すると友だちたちが「すごくおいしい!これ誰が作ったの?」なんて言って喜んでくれたんです。その時に芽生えたのが、人とは違うことをして「すごい」と言ってもらえる喜び。その日から料理人になるというのが僕の夢になりました。

とはいえ小学生の決意です。その決意がブレることはありませんでしたか?

西原氏:

それがまったくありませんでした。何か他に才能があれば、いろんなことにも興味が生まれたかもしれませんが、料理人になりたいという夢が無くなった事は一度もありません。

小学校の高学年にもなると、母の誕生日にコース料理を作ったりもして漠然とした夢から「フランスに行ってシェフになりたい」という具体的な目標へと変わりました。それは読んできた本が洋食の本だったからと言う程度だったからなのですが、日本料理を志すようになったのは従妹の存在です。

僕には15歳ほど上に従妹がいて、年の離れたお兄さん的な人だったのですが、中学2年生の時に結婚式で顔を合わせたとき、「理人、お前は将来何になりたいんだ?」と聞かれて「フランス料理のシェフになりたい」と答えました。「シェフになってどうするんだ?」と聞くので「世界一になりたい」と、無邪気に答えたのを覚えています。

その従妹のお兄さんこそ、嵐山吉兆で働く職人だったのです。従妹が言うには、フレンチの世界一を目指す上で、フランス人の壁は超えられない。生まれ育った環境の違いは、簡単には乗り越えられないというのです。その一方で、日本料理で日本一になれば、自動的に世界一になれるぞと言われ、その時にハッとしました。そこから一気に日本料理の世界を目指すようになりました。振り返ると当時の自分はあまりにも無垢で恥ずかしいですが、この日本料理の世界に入る動機づけになりました。

世界一を目指すとは、大きな目標ができましたね。

西原氏:
当時はテレビで世界一の料理人を決める番組があって、氷で彫刻をする料理人がいたりして、単純に世界一という言葉に憧れました。ある時、本屋さんに行った時、料理本のコーナーで私の名前である「理人」という文字を見つけて、すごく驚いたんです。ただ単に「料理人」という文字の「料」の字が重なった本で隠れていただけなのですが、自分の名前が「料理人」の中に含まれているのを運命的に感じました。自分は料理人になることが使命なんじゃないかと。まだ中学生でしたがその時に料理人になることを確信し、日本一の料理人を目指すなら、名高い「吉兆」で修業するしかないと思いました。

白 Tsukumo 西原 理人

そこまで思われていたのであれば中学卒業して働きたかったのでは?

西原氏:
本当は中学を卒業したらすぐにでも行きたかったんです。でも従妹のお兄さんから、高校は卒業したほうがいい言われました。その時にしかできないことを経験したほうがいい、それからでも十分だと。

アドバイス通りにそうしようと進学し、高校はラクビーに熱中しました。これが後の人生で役立つことにもなりました。

そして、いくつかの約束をしました。そのうちの1つが、料理の勉強はしないこと。下手にクセがつくよりも、真っ白なまま「吉兆」で修業する方が絶対にいいとのことでした。なので高校時代は、その約束を真面目に守って料理本も自分に近づけないようにして、意識的に料理をせずに過ごしました。

もう1つあった約束が、ファーストフードを食べないこと。化学調味料の味に慣れてしまうことは、プロの料理人にとってはマイナスだと。料理は勉強しなくても、料理人としてのプロ意識は持つように言われました。ですから学校帰りに友だちと一緒にファーストフード店に立ち寄った時も、僕ひとりだけずっと水を飲んでいたぐらいです。

料理はしない、料理の本も読まない。そんな生活でしたが、それもすべては一流の料理人になるため。料理からは一切離れていましたが、料理の世界への憧れを心の中に持ちつづけた高校3年間でした。

ジャンクフードや刺激物は料理人にNGだということは実際あるのでしょうか?

西原氏:
誤解があってはいけないですね。実際問題としてファーストフードやいわゆるジャンクフードを時々食べたからといって料理人の質が下がってしまうということはないと思います。今では僕も制限なく何でも食べています。

タバコが好きな料理人さんの中でも素晴らしく美味しい料理を作られる方は沢山いらっしゃいますし。
先程のエピソードはどちらかというと精神論で、プロとして大事にしている心構えのようなものだと思います。

白 Tsukumo 外観

白 Tsukumo

お問い合わせ
0742-22-9707
アクセス
奈良県 奈良市三条町606-2 南側1F
JR奈良駅 徒歩5分、近鉄奈良駅 徒歩12分
営業時間
完全予約制
ランチ/12:00 ~ 13:00
ディナー/17:30 ~ 20:00
定休日
月曜日、毎月最終日、火曜日の昼、毎月1日の昼