食材や料理に正直に謙虚に。料理人は料理の最終提供者としての責任がある

祇園 大渡
大渡 真人

祇園 大渡 大渡真人

◼余分なものをそぎ落としたシンプルさこそが日本料理の美しさ

料理人としての仕事はどいうものなのでしょうか

大渡氏:
人間に必要なこととしてよく言われる「衣・食・住」があるじゃないですか。でも、絶対に無くせないのは「食」だけなんです。裸でもいいし、野宿でも生きてはいけますが、人間食べないと死んでしまいます。

僕ら料理人の仕事は内臓に直接アプローチするものを作る仕事です。ですから緊張感もありますし、喜んでいただけたときの嬉しさも大きいです。特にこのお店はカウンターのお店ですからお客様の反応をダイレクトに感じることができます。
お客様を目の前にしたお店だからこそ、「津むら」のおやっさんに言われ続けてきた、正直に謙虚にということを大切にしています。食材に対しても、器に対しても、人に対しても。

あ、それとこの丸刈りは、着飾らず素の自分で勝負してかっこいい大将になれたらいいなと丸刈りにしたんです(笑)

そんな決断をされたんですね!これまでいい指導者に恵まれられたのですね

大渡氏:
そうですね。本多さんにはテクニカルなことをたくさん教えてもらいましたし、「なかひがし」の大将、「津むら」のおやっさんには、心持というか人としてこういう風にならないといけないということをたくさん教えてもらいましたね。

あとお茶の先生は禅のことで色々教わり学ばせてもらいました。
お茶の先生には「大渡君はお点前よりも、道具のこととか、なぜこのお軸がここにかかっているかを勉強しなさい」と言われました。道具もいっぱい見せてもらいましたし、お点前の意味とか教えてもらいました。本多さんのお店にいる時からだから10年間ぐらい京都に行くまで教わってました。

日本料理をするのに、やはりお茶は勉強しておいたほうがいいのでしょうか?

大渡氏:
料理人というよりも、人間形成としてお茶はとても勉強になりました。
お茶の先生に、「大渡君、お料理やってるなら、うちで夜咄しのお料理作ってよ」と言われて作らしていただいたことがあるんです。盛り付けをする時に、大根のけんをひいて、大葉を敷いて、鯛を盛って、わさび置いてと自分としてはかっこよく盛り付けたんです。
そしたら先生が、「んーこれいらんなぁ」と言って、鯛とわさび以外を取り除いたんです。「装飾は必要以上にいらないよ」と。

その時に、それまでいろんな師匠たちに言われてきたこと全部が同じなのだなと思いました。
心に響く料理を人は美味しいと感じるんだな。シンプルにそれを美しいと見えるのだと。
シンプルというのは、何もしないわけではなく、散々色々試した後に削って削りたおした後のシンプルさ。そういうことが美しくて人を幸せな気持ちにするんだという事を教えてもらったと思います。

独立されて10年弱、今後目指していきたいことは何でしょう?

大渡氏:
最近は違うジャンルの料理人たちとコラボレーションすることも増えてきたのですが、やはり料理のジャンルが違うと新しい発見もありますし、刺激になり料理の幅も広がります。

人とつながっていきたいというのはこれからも続けたいし、いろんな人と知り合って、自分の高さや幅を広げたいと思ってます。
スタッフにもこのお店で成長を実感してほしいですし、お店を使った取り組みもしてほしいです。この場所と僕を使って、みんなが幸せになってくれたらいいなと。

祇園 大渡 大渡真人

料理人同士の繋がりはどのように増やされているんでしょうか

大渡氏:
僕は京都で独立して、まるっきり一人からスタートしました。
普通は京都で始める以上は、京都出身の人とか、京都で修業した人みたいな流れがあって、「どこそこの若い衆が独立したよ」って自然と広がるんです。
僕なんかはポツンと突然出てきたもんですから、そういった繋がりはなかったんです。でもそれが逆に僕のように毛色が違う料理人がお店を出したと、興味をもってくれるようになったんです。

うちはどこともつながりないですし、僕と同じような境遇の料理人が来やすかったのかもしれないですね。僕の年齢が若かったのもあると思います。
そのうちその若い人たちが、自分の店に出勤する前に「洗いもんします」とか「仕込み手伝います」とか遊びに来てくれるようになりました(笑)

料理人以外のつながりもありますか?

大渡氏:
同世代のお魚屋さん野菜屋さんも増えてきましたね。
彼らもよく勉強していて。サバひとつにしても、お刺身にしたいサバなのか、きずしにしたいサバなのか、鯖寿司にしたいサバなのか、焼きたいサバなのかで持ってきてもらえるサバを全部変えてくれます。

「一番いいサバ頂戴」っていうと、普通の魚屋さんは一番高いサバ持ってくるんですよ。でも、その魚屋さんは、「大渡さんそのサバなににすんの?」って必ず聞いてくる。
鯖寿司しようと思ってるんやけどって言うと、じゃあこのサバって。

「ウニはどうすんの?ウニだけで勝負すんの?何かと組み合わせんの?なんかのつなぎにすんの?」と。つなぎにするって言ったら、じゃああんまり香りのやさしい方が、とか。

カウンターに立つ大渡さんの後ろにはいろんな人がいらっしゃるんですね

大渡氏:
ほんとにそうですね!僕たちは、最終消費者に提供する、最終提供者なので、その責任はめちゃくちゃ大きいと思います。ひとつの食材をとっても、いろんな人が「質の高い食材を作りたい」って真剣に考えていて、そもそも食材そのものの命を頂いている。そんな関わるみんなの思いが、料理として形になっていくんだと思います。

(聞き手:市原 孝志、文:白石 亜矢子、写真:岡 隆司)

祇園 大渡 外観

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