本当のことは、自分が経験してみないと分からない

ごだん宮ざわ
宮澤 政人

ごだん宮ざわ 宮澤政人

■さまざまなご縁が重なり2つの店を京都にオープン

そこからすぐに独立されたんですか?

宮澤氏:
30歳に独立したいと考えていましたが、実際に独立できたのは32歳の時です。
祇園のお店で料理長を任されていた時に、たまたまちょうど良い物件が見つかって、ここだ!と直感的に気に入ったんです。折を見て独立しようという事が頭にありましたから、自分が辞めてもお店に迷惑を掛けないよう、厨房がまわるようにはしていました。ただしそうは言っても突然のことでもありましたから、店の子たちにも「もし皆がまだやめてもらっては困るということであれば、いまのタイミングでの独立は見送るが、どうだろうか。」と率直に話しました。そうしたところ、独立を応援して貰うことができ、そこから3カ月後にオープンすることになったんです。

すべてとんとん拍子に進んだ感じなのでしょうか?

宮澤氏:
それまで鍋や調理器具、器などは買い集めていました。それらを使って食事会を開いたりもしていました。でも開店資金までは用意できていませんでした。開店資金として1000万円借りようと思ったら、その1/3は持っていないといけないということで、300万円は親に頼んで借りました。
ただ、その頃は実家も店を閉めていたので保証人になれる人がいなくて。どうしようかと考えたときに、京都から一旦神奈川に戻った時にお世話になったお店の社長に相談してみようと電話をかけてみたんです。

ずいぶんご無沙汰してたわけなんですが、社長が電話に出るなり「どうした。店でも出すのか?保証人が必要な時は言えよ」と言ってくださって。社長、実はその話なんですと(笑)。
もう本当に感謝ですよね。そういった周りの方のお力添えがあって、2007年に念願の自分の店「じき宮ざわ」を持つことができたのです。

お店ができたときは、もう死んでもいいと思うぐらい満足感がありました。憧れの京都に店を開店することができた、それも32歳でそんな夢のような事ができて幸せでした。
いまオープンしてから10年経ちますが、その幸せがいまでも続いています。

オープンされたばかりの時のことをお聞かせください。

宮澤氏:
店を知ってもらう必要があるのはわかっていたのですが、どうすればいいのかという答えまでは持っていませんでした。その頃はまだ四条烏丸エリアに料理屋も少なく、立地的にはいい場所だとは思っていましたので、まじめにやっていれば何とかなるだろうと。
この場所を選んだのは、料理を楽しみたいと、わざわざ足を運んでくれるような場所ということで、祇園ではなく少し外れたこの場所を選びました。料理にきちんと向き合うお客様に来ていただきたかったからです。

そうしてオープンしてから1カ月ほど経った頃、あるお客様が来店されてブログでうちの店について書いてくださったんです。その時は知らなかったのですが、実は有名なブロガーの方だったようで、そこから予約の電話がひっきりなしにかかってくるようになりました。一時のものだと思ってましたが、それがきっかけで少しづつ常連の方々に好まれるようなお店として、通われる方が増えていきました。本当にありがたいことです。

すごく順調だったのですね。独立したてでお困りになったことはありませんでしたか。

宮澤氏:
実は、お客様とカウンター越しにお話しするのが苦手だったんです。できればテーブル席にして厨房と分けたかったのですが、そうするとダクト設置予算がかなりかかってしまうこともあり、やむなくカウンターのお店になりました。
ですから、家内にそこはきちんとフォローして貰う形でお願いしました。

ごだん宮ざわ 内観

2軒目を出されることになったキッカケはどのようなものだったのでしょうか?

宮澤氏:
これもたまたまですが、店に旅館の女将をされている方が来られて「うちにも遊びにきてくださいよ」っておっしゃってくださり、お言葉に甘えてさっそく翌日遊びに行かせてもらったのです。すると、諸事情で調理場が使われていないことを知りました。その頃、10坪しかないお店で調理場が狭く近くに調理場になるような所を探していたのです。その調理場を貸していただけないかお願いした所、快く承諾して下さり、簡単な仕込み場になりました。
その後、旅館なので宿泊されている方の朝食はどうされているのか聞くと、前日に仕入れたお弁当を出しているということだったんです。こんなに素敵な旅館で、それではあまりに味気ないと思い「うちが朝食を作らせて貰えませんか?」とお願いし、旅館でお料理を手がけさせていただくことになったのです。

旅館さんとはいい関係だったのですが、旅館自体も閉じるということになってしまい、うちとも契約が切れることになりました。しかし、その旅館の調理場にいたスタッフの働く場所が新たに必要ですから、だったらもう1軒出そう!となり「ごだん宮ざわ」をオープンさせることになりました。

「じき宮ざわ」との違いはあるのでしょうか。

宮澤氏:
「じき宮ざわ」の時と同じように、ネットで物件を探してみたらすぐに気に入った物件が見つかりました。初めは定食屋さんみたいな感じで、と思っていたりもしたんですが、やり出すと中途半端にできなくなってしまいました。1軒目の時には予算の都合で使えなかった無垢の木をすべての場所で使ってみたり、店が出来上がる頃には僕がこっちで働きたくなってしまったんです(笑)。

ごだん宮ざわ 宮澤政人 内観

■自分一人でできることなんて、何一つない

そうなると「じき宮ざわ」は誰かに任かせることに?

宮澤氏:
当時、店の2番手として力のある29歳の料理人がいたのですが、彼はもともと店に2回ほど食事しに来てくれたことがあって、その時に履歴書を持ってきた子でした。
僕も若い時、同じことをして「出直しなさい」と言われた苦い経験がありましたから、同じように僕のところへ来る子は絶対雇うと決めていました。誰よりもやる気だけはある子なわけですから。

その彼に「じき宮ざわ」の料理長を任したいという話をしました。ちょうど、僕も祇園の店で料理長を任されたのが29歳だったので、彼にとっていい経験になるのではという思いもありました。

2つお店があるとマネジメントも大変なのでは?

宮澤氏:
そのあたりのことはよく分からないです。そもそも人は自分の思い通りにならないものですし、僕が上でみんなが下みたいな関係でもないと思っています。店を回していく中で、僕一人でできることなんて何一つないわけで、みんなで一緒に学んで成長していきたいと思っています。ですから思いを語ることはあっても、ほとんど怒ったりすることはないですね。

ごだん宮ざわ 宮澤政人 スタッフ

実際にお店で働かれている料理人の方とはどんな話をするのですか?

宮澤氏:
今、僕が感じていることをそのまま話します。みんなにも自分が感じていることを話してもらいます。僕自身、みんなに話をしながら自分に言い聞かせている部分もあります。
人はどんな立場でも自分が自分らしくいられる状態が一番いい状態だと思っていますので、おしつけるのではなく共有・共感することを大事にしています。

これからはどんなことにチャレンジしたいですか?

宮澤氏:
何かをしたいという具体的なプランはありませんが、貪欲に経験を重ねていきながら、この先も自分の限りを尽くしてご奉仕させて頂けたらと思っています。目標や夢など思うところがあれば、ご縁が紡いでいくのではないかと思います。今はとにかくしっかりと足元を見つめ、お客様に自分の感じたことを伝えていけたらと。
あとは、今までたくさんの方々に頂いた御恩があるので、僕がしてもらってきたように次の世代にその御恩を送って行けるように努力していきます。

(聞き手:市原 孝志、文:白石 亜矢子、写真:岡 タカシ)

ごだん宮ざわ 内観

ごだん宮ざわ

ごだん宮ざわ 外観

じき宮ざわ

ごだん宮ざわ 外観 表札

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