理想の店作りは、時間を惜しまず貪欲に自分を磨いた先にある

パンデュース
米山 雅彦

パンデュース 内観

■前向きに「はい」と言える人に、仕事は与えられる

オープンから12年目を迎えられましたが、当時と今で変わったことは?

米山氏:
オープン時の方が、もっと感性が尖っていて、クリエイティブな発想を大事に、パンを作っていました。今は考えが経営者寄りになっていて、コストだったり、生産性で考えてしまったり。いつか原点回帰したいと思っていて、事業としての基盤は保ちつつ、生産性を考え過ぎず、もっとストーリーを大事に、深みにはまったパン作りがしたいなと。将来的には別ブランドとして明確にすみ分けて、展開していきたいと構想を練っているところです。

これまで色んなスタッフの方を見てこられたと思いますが、成長しやすい方の特徴というのはありますか。

米山氏:
今、関西に4店舗あって、厨房があるのは本店とJR大阪駅の店の2つなんですが、ここのスーシェフを任せている2人がいます。私のもとで長く働いてくれて信頼もしているんですが、パン作りに関しては一番へたくそなんです。生地の状態を見る力はあっても、パンを美しい造形に仕立てる器用さはありません。他のメンバーと比べたら、一定のレベルに達するまで時間を要すると思います。

でも、キツイことも言えるし、一緒に笑えるという意味で、人として信頼しているんです。だから色んなことを任せていける。それから、明るく前向きに「はい」と言える人の方が、仕事をふりやすいですね。そして、一つひとつの仕事の積み重ねが信頼になっていくわけですから。基本的にパン業界の仕事は、「はい」か「イエス」しかありませんけど(笑)、そうやって貪欲に仕事をとっていくことが大事ですね。

あとは、怒られやすい子の方が良いと思いますね。その方が伸びやすいです。全部、気付いたことを指摘してもらえるということなので。要領がいいとか悪いとか、パンを上手に作れるか作れないかは、二の次です。もちろん上手にこしたことはないですが、作るのは周りのスタッフを使えば良いだけのこと。私たちの仕事はものづくりですが、それを作っているのは「人」です。どんな人についていきたいか? たとえパン作りが下手でも、信頼される心構えをもっているかが大事です。

米山雅彦 パンデュース

スタッフを教育される上で大事にしていることは?

米山氏:
長く続けて欲しいと考えてはいますが、厳しいことも、はっきり言うようにしています。君がここを失敗したから、この工程がこれだけ遅れている、と。全部、きっちり説明します。お金に絡めた話もします。

あとは数年前から、入社式をするようにしています。勤続年数の長いスタッフを表彰したり、ご飯を食べたり。また、これまで新人は入社後すぐ各店舗に配属していたんですが、今年から方針を変えて全員で各店舗を回ってから配属する予定です。同期の存在も大事だと思うので。その間に、1回ぐらいパン教室を開いて交流を深めたり。

帰属意識というか。みんなで頑張ろうという気持ちは醸成されますよね。

米山氏:
私の息子が、今年大学生なのですが、彼と同じ年の子が現場に入ることもあります。だからこそ分かるんですが、即戦力になるには数年かかる。それまでは、企業側・店側が責任を持って面倒を見ないといけない。時には、息抜きの場や、先輩と後輩の関係を築ける場、同期の絆を深められる機会が必要です。今も年に2回ほどの定休日には、バーベキューやビアガーデンなど、極力全員で集まる場を作っています。

米山雅彦 パンデュース

■使っているものに責任があるから、きちんと知識をもって選びたい

食の勉強会なども関わっておられますね。

米山氏:
デザイン・クリエイティブセンター神戸「KIITO」が主催する、神戸の食をみんなで考えようというクリエイティブゼミのゼミマスターとして携わらせていただいます。有機野菜の現状や、食品添加物、醤油や塩について、いろいろとその道の権威者の方をお招きして、多様な視点から「食」について学ぶ勉強会です。

私自身、神戸市民ですし、消費者の方にどれだけ食について知っていただくか。最近だとTPPだったり放射能の問題だったり、自分が学びたいことも含めてゼミを開き、一緒に勉強させてもらっています。これまで通算10回ぐらい開催していまして、交渉から日程調整まで全部しているので大変ですが…。

時間もかかることなのに、パワーをかけられる原動力は。

米山氏:
例えば、パンデュースで使っている国産小麦は、北海道や九州から仕入れていますが、フードマイレージ(輸送に要する燃料・二酸化炭素の排出量とその距離を重量で数値化した指標)の観点から見るとどうなのか。また放射能については民間レベルでは判断できないが、果たしてきちんと安全なものを提供できているのか? 食に関わる仕事をしている人間として、使っているものに責任があるので、きちんと知識を持って選びたい。色んなことを知らないといけないと思っているんです。

仕事のこだわりを追求する延長戦上にあるということですね。今後、向かっていきたい方向は?

米山氏:
原材料の高騰など、パン業界が置かれている状況は厳しいです。消費者のパンに対する価格意識なども含め、きちんとした労働環境の中で、ちゃんとしたパンを提供できる店作りをしていきたいです。具体的に言うと、プロデュース事業だったり、BtoBの事業だったり、職人としての大事な部分とは別のところで、効率的に事業基盤を維持できるビジネスモデルを確立していきたい。というのも、それがないと、私が引退した後に、店が続かない可能性が出てきますから。お客様が一人でも来てくださる限り、店は続けるべき。そして雇用をした以上、解散すべきではない、というのが私の考えです。10年後を見据えて、1年1年を大切に、これからも貪欲に前進していきます。

(聞き手:齋藤 理、文:田中 智子、写真:久岡 健一)

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