理想の店作りは、時間を惜しまず貪欲に自分を磨いた先にある

パンデュース
米山 雅彦


■トライアスロンを続けるために選んだ、パン職人の道

パン職人の道を歩まれたきっかけは?

米山氏:
パン屋は朝がとても早いので仕事が終わるのも早いと勘違いしていて。というのも、大学時代に始めたトライアスロンを続けたかったので、トレーニングの時間が確保できる、終業時間の早い職業を選びたかったんです。パン屋の他にも、中央卸市場の選考も受けたりしましたしね。自分のライフスタイルに沿って浮かんだ道です。

最終的にはパン屋に絞って2社から内定をいただき、そのうち1社は「配送から」と言われたので、パン作りからできるもう1社に入社することにしました。それが神戸発祥の老舗ベーカリー「カスカード」です。

■パンの世界を楽しい景色にしてくれた、パートさんの言葉

では全くパン作りの経験がない中で、ゼロから始めたわけですね。

米山氏:
そうですね。実は阪神大震災に見舞われた年が大学卒業の年で、「カスカード」は西宮本社を拠点としたベーカリーだったので入社は無期限延期になって。私も被害の大きかった東灘に住んでいたので実家は倒壊し、家族バラバラで一人暮らしを余儀なくされました。その間に1度だけ、パンを作ったぐらい。実質経験なしです。

結局その後、2ヶ月遅れで6月には仕事を無事始めることができ、セントラル工場で勤務スタートしました。各店舗に配属後は、先輩について基礎からパン作りを教わりました。思い返すと、そこでパートの女性から「君はよくできるね、1週間でそこまで任されている子みたことないよ」と言われて嬉しかったのを覚えています。もともと、自分は仕事ができるタイプと自覚はしていましたが(笑)、パンの世界に飛び込んだ時にその言葉をもらえたから、今まで楽しく働いてこれたと思います。

家庭環境など、職人にもともと向いている素養があったのでしょうか?

米山氏:
父も手先が器用で木材などを使って何でも作れる人でしたし、母親も編み物の先生をしていましたので、不器用ではなかったかもしれません。ですが、向いていると思ったことはありませんでしたね。というのも、私には3つ上の兄がいるんですが、絵画や彫刻など芸術的な才能に長けていて、私の方が優れていたのは体育だけ。祖父も鉄を扱う職人でしたが、「祖父の血は、兄が継いでいる」と家族にも言われてきました。

だからこそトライアスロンという体育会系に進んだわけですし、就職が決まった時も、私が職人になるなんて思いもしなかった両親からは「スーツ買ってあげる」と言われたぐらいです。自分が人より多少器用と気付いたのは、独立してスタッフの仕事ぶりを見るようになってからですから。

■一生続けられる仕事をするために、自分を磨ける次のステップへ

この業界では一般的にどのような段階を経て一流の職人へとなっていくのでしょうか。また、米山さんご自身は、入社後どんな修業を積んでいかれたのですか。

米山氏:
「カスカード」ではまずオーブンから覚えていきました。クリームパンやアンパンがよく出る店だったので、焼く温度や時間がきっちり決まっている分、新人が最初に学ぶ工程に最適だったんだと思います。私が一番長く身を置いた「コムシノワ」は、オーブンを最後の見極め工程と位置付けていましたから、展開しているパンの種類やシェフの方針によって店ごとに異なると思いますね。例えば東京の大規模店では、技巧が求められる織り込み系のパンで一定レベルをクリアした人のみがバゲットなどハード系を任されるところもあります。ちなみに「パンデュース」では、生地作りとオーブンは職人の技量が試される難しい工程と考えているので、任せるのは最後の最後ですね。

「カスカード」には何年ほど?

米山氏:
3年半ですね。店舗に配属されて2、3年ほど経過した頃、店の二番手として店を回すようになり、数字面も任されるようになりました。その時ふと、「3年で一人前になれるような仕事が、一生持続できるわけがない」と気付いたんです。それだけライバルも増えやすいということですから。その時は既に結婚して子どももいたので、将来を考えると「もっとレベルアップしなければ」と考え、次のステップを目指しました。

ご決断されるスピードがいろいろと早いですね。

米山氏:
今思えば、この考えはすごく幼かったと思いますけどね。ただ、阪神大震災に見舞われたことで、スピード感が確実に自分の中で変わりました。もちろん自分とは比べものにならないぐらい人生が変わった人もいると思いますが。私も近所の方や同級生が亡くなりましたし、いつ死ぬか分からない現実に直面しました。悔いが残らないよう、やりたいことはすぐやる、早く結果を出す、という気持ちが根底にありますね。

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