すべての職業は好きこそ物の上手なれ。世界にのめり込んだものが勝ち

リーガロイヤルホテル「レストラン シャンボール」
岡 昌治

リーガロイヤルホテル「レストラン シャンボール」 岡昌治

■コンクールをきっかけに、「大阪のソムリエ岡」の名が広まり始める。

そうして日本に帰国されて。

岡氏:
それで帰国後すぐ、フランス食品振興会主催のソムリエコンクールに参加しました。ワインの知識やテイスティング能力、栓の抜き方からデキャンダ等の技術を問われるコンクールで、私はそれが2回目の参加でした。1回目はフランスに行く前。東京で2日間のフランスワイン研修会があって、最後にコンテストがあって、一緒に参加していた先輩と実力試しだと挑戦してみたんです。何とか二人とも予選を通過しました。

それで今度こそ、と帰国後に再び挑んだんです。ベスト6には入ったのですが、ジルベール氏に怒られましたね。当時、審査員長を務めていましたものですから。「私の指導を受けているのに何てことだ」と。その後、3回目の大会も優勝できなくて。結局、80年から6回コンクールに出ましたが、2位が3回、3位が1回、あとは上位入賞。けれども、「大阪に岡というやつがいる」と認知をされ始めた、そんな80年代でしたね。

ある意味、優勝に到達しなかったことで、自分を磨き続けてこられたのかもしれませんね。そういう「飢え」が原動力になることもあるのだと思います。

リーガロイヤルホテル「レストラン シャンボール」 岡昌治

■ソムリエを極めるために、大事なこと。

帰国する頃には、ソムリエの道で生きるという方向性は固まっていたんですか?

岡氏:
そうですね。だんだんです。実は一時期、レストランの統括者や経営層など、マネジメントポジションを目指して、実際に責任者を兼任していたこともあります。でも、会社が「ソムリエの岡」として立ってもらった方がホテルのブランド戦略として良いと判断したんでしょうね。それと何より、本格的にマネジメントポジションに組み込まれていく中で、僕自身がソムリエという仕事に後ろ髪引かれたのもあって。結局は、ソムリエ1本に専念して、その道を極めていくことにしました。

今はソムリエを統括する立場として、教育なども任されています。これからソムリエになりたい方は、どのような勉強が必要でしょう。

岡氏:
ワインだけでなく、他のアルコール飲料や水、コーヒーの知識も必要です。もちろん料理も。それから、ホスピタリティの行き届いたサービス。最近は、コンクールで結果を出すことが前面に出ているように思いますが、やっぱり一番大事なのは、現場の仕事です。コンクールはあくまで自己研鑽のきっかけですから。

それから今は知識を得るのに、便利なインターネットがあります。膨大な情報が手に入るので、どうしても自分は何でも知っていると勘違いしがちですね。古いワインを勉強せず、偏った知識だけで味のジャッジをしてしまったり。一朝一夕でマスターできる職業ではないので、とにかく根気強く、地道に勉強していくことです。

僕らの時代はフランスワインだけ勉強しておけば良かったですが、今は日本にイタリア、ドイツ、スペイン、ポルトガル、アメリカ、カナダ、チリ、アルゼンチン、オーストラリア、ニュージランド…覚えられますか?という話でね(笑)。

ソムリエの方がとうとうと説明される様子を見ると、皆さんどこまでアンテナをはられているのか、感服させられる時があります。

岡氏:
私はテイスティングの時は、「飲む」ようにしています。本来は、色を見て、香りを嗅いで、口に含んで吐き出すのが通常ですが、それだけだと分からないし、つまらない。のどを通りこして、すーっと胃に落ちていくのを感じて、それが良い気持ちだったり、イガイガしたり。さすがに数百種類とかは難しいですが、20種類ぐらいまででしたら、僕は飲んで、味を確かめるようにしています。

テイスティングで大事なのは、知識よりは感覚やセンスなのでしょうか?どのように磨けば良いのでしょう。

岡氏:
大事なのは、感覚や感性ですね。磨くには、ひたすらトレーニングです。例えば、香りにもいろんなジャンルがあります。植物でも草と花の香りは違うし、木になるとまた別の系統です。果物の柑橘類にしてもレモンとオレンジの香りは異なる。又梨と桃は違う。同じ梨でも、洋ナシと幸水では味も香りも違う。そういうものを系統立てて自分の中に蓄積していくんです。

するとテイスティングしていく時に、「このワインは苺の甘い香りがするけど、いったい何という品種なんだろう」とか、「この品種で作られたワインは本来ラズベリー系の香りが出るはずだけど、違う味がする。作り方に秘密があるのか?」なんて、いろいろ分かってくる。

いろいろ仮説を立てられるようになっていくわけですね。リーガロイヤルホテルで働くソムリエの方の教育は、何か特別なことをされていますか?

岡氏:
社内でもトレーニングの機会を設けるようにしています。例えば今5人ソムリエがいますが、彼らが中心となって社員向けのワインの教養講座をやっています。教える方は知識がないと伝えられないので勉強しますし。話し方のテクニックなども強化されます。

ちょっとその言い回しは難しいなとかその場で指摘していく。ウェイターもそうですが、料理の説明をしていると、「この牛肉はポワレしました」とか、すぐ専門用語を入れてしまいがちです。大事なのは“伝わる”ことですからね。

ソムリエに向いている志向はありますか。

岡氏:
アルコール飲料なので、飲める人の方が上達は早いと思いますが、ただ飲めなくても感覚が良い人はいますからね。あとは、社交性。志望者にはワインオタクが意外と多いんですが、お客さまとコミュニケーションがとれないと意味がないですからね。

やはり岡さんのようにウェイターあがりの方が、飲みこみが早い?

岡氏:
僕は大事だと思いますね。特にホテルのソムリエは、コックやウェイターと一つのチームとなってサービスを提供するわけで、総合的にその場を見る力が必要です。ですから、うちのホテルではいきなりソムリエはさせません。ウェイターの仕事を経験してから。料理も含め、多岐のことを学べるホテルは、ソムリエを目指すのに一番良い環境だと思います。

最後に、岡さんの夢を聞かせてください。

岡氏:
サービスって、雰囲気なんです。どれだけハコが立派で、料理もワインも良いモノが揃っていても。働いている人がどう動かすかが大事なんです。リーガロイヤルホテルに入社して44年。一つのことをずっとやってきたのはちょっとした自慢です。ここまできたからには、足腰が立たなくなるまで現場に立ちたいですね。

(聞き手:齋藤 理、文:田中 智子、写真:久岡 健一)

リーガロイヤルホテル「レストラン シャンボール」 内観

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