大切なのはパーソナリティ。最高の結果は完璧な準備の上に咲く

パレスホテル東京「ロイヤル バー」
大竹 学
パレスホテル東京「ロイヤル バー」 大竹 学

パレスホテル東京「ロイヤル バー」 大竹 学
■お客様の笑顔を見て決めた、バーテンダーへの道

大竹さんは1975年生まれで、就職氷河期の世代ですよね。なぜホテルに就職されたのですか?

大竹氏:
高校のとき、勉強が嫌いで車やバイクが好きだったので、それを買おうと思って、アルバイトでお金をためていました。高校生でしたが、既に工場や印刷会社など色々なアルバイトをしていたんです。

でも卒業を前にして、どんな仕事に就こうかと考えたときには、アルバイトで経験した、流れ作業やデスクワークは向いていないと思いました。それで、どうしようかと悩んでいたとき高校の進路指導の先生に、「君は背が高いからサービス業が向いているじゃないか」と言われたんです。しかも、「君の今の言動は社会では通用しないから、きちんと教育してくれるホテルが良いだろう」と(苦笑)。

ちょうど当時『ホテル』というドラマが流行っていてホテルマンに憧れもあったので、ホテルに就職することにしました。

我々世代のホテリエの方には、バイブル的なドラマかもしれませんね。学校を卒業後入社されたのは池袋にあるシティホテルですが、実際に入ってみていかがでしたか?

大竹氏:
ドラマのようなドアマンとかフロントのような仕事をしたいと思っていたのですが、英語や外国語ができないとダメで。勉強嫌いだった私にはとても無理だったので、レストランの配属になりました。

朝から晩まで稼働しているオールデイダイニングで、ひたすら配膳と下げ物をする日々でした。せいぜいコーヒーや水を注いで回るくらいで、接客という段階までも辿り着けず。働く意味が見いだせず、3ヶ月で辞めようと思いましたね。

ただ、結果的には、辞めなかったんですよね?

大竹氏:
配属後3ヶ月くらいしたある日、とあるお客様が「ヘネシーXO」というブランデーを飲みたいとおっしゃったんです。当時、お酒の知識が全くなかった私には、「ヘネシーXO」がブランデーだということもわからなくて、上司に「へネシーXOってなんですか?」と聞いたくらいです。

それで、上の階にあったバーに取りに行ったんですが、ちょうど夜のピークの時間帯でカウンターは満席。忙しそうでしたので、しばらくカウンターの隅に立って待っていました。

すると、カウンターの端の方に座っていた女性のグラスに、バーテンダーがシェイクしたカクテルを注いだんです。確か、青いカクテルでした。

いまだに鮮明に覚えていますが、そのカクテルに口をつけた瞬間に、女性がすごく幸せそうな顔をしたんですよ。…それを見て私は「これだ!」と思いました。

普段レストランで料理をお客様に出して、美味しいと喜んでもらって、「ありがとう」と言われることもありましたが、それを心から喜べてはいなかったんです。なぜなら、その料理は自分で作ったものではないから。

でもバーテンダーは、お酒や副材料を自分で調合してお客様に提供できる。しかも、対面接客なので、お客様の喜びをダイレクトに受け取ることができるんですよね。

私はもともとお酒を飲むことが好きだったので、好きなお酒を作って提供して、お客様から直接声をかけてもらえるバーテンダーは、すごく魅力的にうつりました。それが、すべての始まりです。

入社して3ヶ月目で、バーテンダーになるきっかけに出合ったんですね。

大竹氏:
次の日、マネージャーのところに「バーテンダーになりたいのでホテルを辞めます」と言いに行きました。上司たちからは、「まだ入社3ヶ月目でお酒の知識ゼロの奴には無理な話だ」と散々叱咤されましたが、バーでの勤務経験がある主任は「せっかく入社したんだし、ホテルにはバーもあるんだから異動希望を出してみたら?」とアドバイスしてくれました。

その日から、勉強して意気込みを見せようと思い、洋酒やカクテルなどの本を買いあさり、ひたすら読み込みました。

そしてお酒の知識も少しついてきた入社2年目のある日、バーテンダーの欠員が出たため、幸運にもバーに異動できることになりました。

パレスホテル東京「ロイヤル バー」 大竹 学

運が良かったんですね。

大竹氏:
そうですね。運もありますが、休憩室などでもずっとお酒の本を読んでいたのでそれを周りの人が見てくれていたのも大きかったんだと思います。そこから、「バーテンダーになりたくて勉強している奴がいる」ということがチーフバーテンダーの耳に入って、「そこまで意気込みがある奴だったら、採ってみようか」と入れてもらえたんです。

入って1週間で後悔しましたけどね(笑)。

そうなんですか?どういうところが辛かったのでしょう?

大竹氏:
1990年代前半だったあの時代、バーテンダーの世界は本当に男社会で、縦の関係が厳しかったんです。最初は夜の仕事はやらせてもらえませんでした。朝8時に出社して、氷を割り、フルーツを切り、ジュースを絞り、ボトルを拭き、酒類などの重い荷物を運ぶ、という細かい下仕事ばかり。夜のオープンまでの準備をずっとしていました。

数ヶ月経つと、少しずつ夜にも入れてもらえるようになりましたが、それでもお酒なんてまったく触らせてもらえません。ひたすら洗い物です。そして、バーバックというサポートの位置に入り、先輩バーテンダーがお酒を作るための材料やグラスを用意する仕事を任されました。

唯一お酒を触らせてもらえたのは、営業終了後でした。深夜に仕事が終わると、先輩に言われたものを作ってみるんです。

「何か作ってみろ」と言われて作りますと、「これ、いくらするの?」なんて聞かれるんですよ。お店のメニューの価格で「カクテルだから1,000円です」と言うと、「これ、1,000円取れるの?ひどいよ」と返されて(苦笑)。そこで、技術や会話力が鍛えられました。

長い下積み時代だった感覚がありますが、お酒の知識や接客など、色んなことを先輩に教わり、バーテンダーとしての良い土台ができましたね。

当時は20歳そこそこで今思えばあのときが一番辛かったですが幸せでした。あの時代があったから今があるんだ、という自負がありますね。

パレスホテル東京「ロイヤル バー」 内観

パレスホテル東京「ロイヤル バー」

お問い合わせ
03-3211-5318
アクセス
東京都千代田区丸の内1-1-1
最寄り駅;大手町駅
営業時間
11:30~midnight
土・日・祝日:17:00~midnight
定休日
---
求人情報
パレスホテル東京の求人一覧