シャルキュティエという職業を、食肉に親しむ文化を、 100年後もその先もずっと継承していきたい。

METZGEREI KUSUDA
楠田 裕彦

■失敗した理由を自分で見つけられたら、それが成長になる。

そのためにも、後継者を作っていきたいですよね。ご指導される上で、大事にしている方針などはありますか?

楠田氏:
失敗した時は、「なぜ?」と聞くようにしています。原因を理解していないのに叱っても仕方ないですからね。失敗というのは、経験上、痛みとして必要です。でも理由を分かっていないと何度も同じ間違いをしてしまう。教えられたことだけやっていると、不測の事態が起きた時にコントロールできない。自分で感じて考えないといけないんです。なので、途中で「今、どう思いながらやってる?」と聞くようにしています。

「感じて考え、自分のモノにする」。そのために、楠田さんが修業時代に実践していたことはありますか?

楠田氏:
修業時代毎日ものすごく怒られていたのですが、次は絶対に怒らせない、何も言わせないというモチベーションが湧き上がって、何が悪かったんだろうかと、ノートに色々書き留めて、原因の分析と対策を練っていました。

自分で理由を考えて、見つけて、その失敗を全部埋めていったら成長になりますから。だから若い子たちには、失敗した理由を考えて、復習するように口を酸っぱくして言っています。

■職人の個性や作家性が出るのが、この仕事の面白いところ。

どういう人が、シャルュキュティエに向いていますか?

楠田氏:
レストランシェフの方とよく話しますが、彼らは仕込みがあって闘う時間が合って、アウトして、また仕込みをして闘って…常に展開があります。一方で私たちの職業は、ずっと仕込みが続く地味な仕事です。長い時間かけて、勉強し続けるので、知りたい、理解したいという研究心を保てる人じゃないと成長が見込めないのではないかと思います。

この仕事の面白いところって何でしょう?

楠田氏:
やはりさまざまな風土のもと育った素材が、形を変え、こんな風になるんだ、という驚きや感動に、魅力があるのではないかと思います。

素材となる豚や鶏、野生の肉というのは、すべて体質が違います。ヨーロッパの伝統的な製法では、安定剤や保存料などを極力使用しません。塩やスパイスだけで、素材の旨みを最大限に引き出してあげなければならない。すると、並外れた能力を持ったたんぱく質の強い豚もいれば、そうでないのもいる。それを目効きして、どう調整していくか。安定製品ではないから面白い、というのはあります。

素材選びや製法によって、それぞれ職人の個性や作家性が色濃く出るわけですね。

楠田氏:
そうですね。まさに五感…と一言で言えるほど簡単ではないのですが、その五感を磨き続けて精度を高めていかないと。「こんなの出来ちゃった」という世界じゃないですから。私は幼稚園に入る前から肉を触ってきているので、も40年以上、肉と向き合っています。でもそれでも、「一定のクオリティを保った理想の味をコンスタントに生み出す」ための感覚的なものを掴めたのは、つい最近です。

最後に、シャルキュティエを目指す方へのメッセージをお願いします。

楠田氏:
私の店で修業する子たちは、みんないずれはここを卒業して、海外に渡ったり、自分の店を持つぞ、という志を持って働いています。自分の足で歩けるようになるには、色んな経験を積むことはもちろん大事ですが、まずはとにかくやり続けること。

少なくとも5年以上は修業期間だと思った方が良いです。ヨーロッパでもマイスターを取得するまで7年ほどを要します。やり続けて考え続ける職人になれば、必ず花開くと思います。

そして、技術だけではなく、人としての筋道をどうするか考えるのも大事です。店の売上が低かったのなら、経営的な目線でアイデアを出す。同じ目線で参加することで、将来自分の店を開いていく時にも大きなヒントになるでしょう。

ハムやソーセージを食卓に並べて、家族みんながそれを楽しく笑顔で食べている風景が、私にとって一番うれしいことです。それを提供するのが、「メツゲライクスダ」です。シャルキュティエという職業や、自家製ハムやソーセージの専門店が日本の生活に当たり前のように根付いた文化を生涯をかけて築き上げるのが私の使命と考えています。

(聞き手:市原 孝志、文:田中 智子、写真:逢坂 憲吾)

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