Foodion │ 一流シェフ・料理人のプロフェッショナル論。

難しく考えない。今できることをコツコツと。日々の積み重ねが革新を生む

虎白
小泉 功二
『ミシュランガイド東京 2016』(2015年12月末)において、二ツ星から三ツ星に昇格した店は国内で一軒のみ。神楽坂の日本料理店「虎白」だ。料理長の小泉功二氏は神楽坂「石かわ」の創業時から店主の石川秀樹氏のもとで修業を積んだ人物。2008年に「石かわ」の移転に伴って「石かわ」創業の地にオープンした「虎白」の料理長に就任した。

現在、36歳。国内最年少の現役の三ツ星料理人であり、石川氏が代表を務める一龍三虎堂の一員として「石かわ」や姉妹店「蓮」のスタッフからも兄弟子として慕われる小泉氏のこれまでと、仕事観についてうかがった。

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■友人につられて料理専門学校に入学。最初は卵も割れなかった

高校を卒業されて、東京の調理師学校にお入りになったんですよね? 料理にはもともとご興味があったのですか?

小泉氏:
まったくありませんでした。高校時代の友人が学校見学に行くというのでついて行って、そのまま自分も入ることにしたんです。体験入学の調理実習では、卵も割れなかったんですよ。

 

日本料理を専攻された理由は?

小泉氏:
日本人なので、日本料理がいいかなと。最初はまったく何も考えていなかったんです。いわゆる高級店で食事をしたこともなく、味についても何も知りませんでした。ただ、技術を身につけて、それで表現をできる仕事がしたいとは思っていました。

 

卒業後、初めての修業先は?

小泉氏:
八重洲の割烹「おかざき」です。当時は「石かわ」開業の4年前で、石川が料理長をしていました。専門学校の担任の先生と石川がかつて同じ職場で働いたことがあり、先生の紹介で入ったんです。

 

修業は厳しかったですか?

小泉氏:
厳しいのはどの世界も同じですから、僕はあまりそういうふうには感じませんでした。早く技術を身につけてお刺身を切ることができるようになりたい、いろいろな食材に触れたいという気持ちのほうが大きかったですね。

 

お話をうかがっていますと、修業に入った時点ですでに、プロとしての姿勢が定まっていたよう感じます。専門学校時代に、日本料理の魅力を発見されたのでしょうか。

小泉氏:
「料理人として生きていくと決めたからには、あれやこれや考えるより、まずは一生懸命学ぼう」というのが学生時代の心境でした。修業に入るにあたっては、「日本料理に興味があるから、やりたい」というよりは、「自分が何かをすることで、お客さんだったり、店にかかわる方々に貢献できたらいいな」という気持ちが大きかったです。日本料理はいいなと身をもって感じるようになったのは、実際に現場に入ってからですね。今でも日々、発見ですよ。

 

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■「おやっさん」の情熱に心動かされ、「石かわ」のオープニングメンバーに

「おかざき」時代、小泉さんにとって石川さんは頼れる兄貴のような存在だったのでしょうか。

小泉氏:
15歳も上の料理長ですからね。おやっさん(石川さん)は先輩というより、師匠です。「おかざき」の料理人はおやっさんと僕と、もうひとり。学校を出てまっさらの状態の時に、間近でおやっさんの仕事ぶりを見させていただいて、すごいなと思いました。

 

どのようなところがすごかったのですか?

小泉氏:
魂が熱いんです。料理に対して一切妥協をせず、情熱というんですかね、思いがすごく強い。お客さんに喜んでもらうためには絶対にここまでやり遂げるという姿勢が徹底しているんです。例えば、食材を見る目の厳しさ。今もそうですが、おやっさんは食材の状態が少しでも良くなければ、はっきりと業者さんに「これでは扱えません」と言っていました。すると、業者さんも誇りがありますから、次は店の求めているものをきちんと理解して持ってきてくれます。その時にはちゃんと「ありがとうございます。すごくお客さんが喜んでくれたので、またこういうものをお願いします」と伝える。その姿にとても良い刺激を受け、僕自身もそうしてきました。「石かわ」や「虎白」が今あるのは、その積み重ねの結果だと思っています。また、日常的に厨房に立っていると定番の食材ばかり使ってしまうこともありがちですが、おやっさんは毎日いろいろな食材を仕入れては考えたことをどんどん実践していました。型にはまらないところにも、大きな影響を受けました。

 

石川さんの間近でいろいろ教わったんですね。

小泉氏:
それが、おやっさんはあまり教えないんです(笑)。少なくとも、僕の時は手取り足取り教えるということはありませんでした。もちろん、聞けば、いろいろ教えてくれますが、基本的に相手に任せて、自分で考えさせる。任すというのは信頼されているということなので、求められている以上のことをやらなければいけないなという思いはありましたね。

 

「石かわ」の開業について、石川さんから相談を受けることはありましたか?

小泉氏:
具体的な相談はありませんでしたが、おやっさんとはいろいろなことを話していたので、休みの前の日に飲みに行って将来の夢を語り合うことはありました。「こんな店をやれば、たくさんお客さんが来てくれるんじゃないか」と料理や器、サービスについて具体的なアイデアを出し合ったり、「世界に向けて発信していきたい」と理想を描いて盛り上がったり。開業の目処もたっていないのに、「取材が来たらどうしようか。厨房第一だから、撮影に時間のかかるテレビの取材は断ろうか」なんて話も(笑)。楽しい時間でした。

 

「石かわ」開業後しばらくはお客さまが入らず、大変な時期もあったようですね。

小泉氏:
おやっさんは経営についての話はしませんでしたが、苦しい状況はわかっていましたから、自分にできることは何かといつも考えていました。お客さまが来てくれるようにするにはどうすればいいか話し合うために自然とミーティングが習慣化しましたし、「せっかく来ていただいたら、気持ちよく過ごしてもらわなければ」と接客のシミュレーションをふたりでしたりもしました。お客さんがまったく来ない日もありましたから、満席になった日は本当にうれしかった。あの喜びは絶対に忘れないようにしようと肝に銘じています。

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