「食」は、人との繋がりを生み出す。そこに国境も限界もない。

KIHACHI 創業者
熊谷 喜八

KIHACHI 創業者 熊谷喜八

■もっと世界に目を向けていける日本づくりに貢献。そして自身の野望も

顧問とは言え、今も精力的に活動をなされていますよね。今も先頭に立って前に進むとなると、体力的な問題はございませんか?

熊谷氏:
いや、もうきてますよ(笑)。
でもね、今も夢中になることがあるからね。香港マキシムグループというのがあってね。彼らは今、中国本土に1,260店舗持ってるんですよ。香港を中心に、中国本土、台湾とかアジアでやってるでしょ。

私はもともと世界6大都市を攻めようと思っていたから、彼らの船に乗って、一緒にこれから世界の激戦地なるアジア戦略を見てみたいと思って。
香港マキシムグループは、いいんですよ。若いしね。グループの上層部はいろんなところで勉強していて優秀です。

では、次のステージとしてはそこに全力を注いでいこうと?

熊谷氏:
今、日本に顧問をしてる会社があるんですが、毎年ヨーロッパに行って工場を見たりすると、今自分が担当している会社が太刀打ちできるか心配になる。まだちょっと弱いところがあったりするんだよね。

先日訪問したオランダにある豚の解体工場なんかは、その工場に毎日6万頭の豚がいるんです。今日屠畜するのが2万頭、冷却中が2万頭、今日解体が2万頭と…。この豚を余すところなく製品にして、各国の業者と商談していく。彼らは世界地図を見ながら、どこを攻めようかを考えている。日本の自治体で毎日6万頭供給できるところなんてありませんね。

日本は、少子化の問題が上手く解決しても結果が出るのが30~50年後でしょ。政府の35万人の外国労働者に対する考え方もまだはっきりしない。

成長もなかなかできない中で、その様な事がどんどん解決出来ないと、日本の経済は停滞してしまうのではないかな。だから、海外で稼げる能力を持っている会社以外は元気がなくなってしまいそうです。外国人労働者を増やすにしても彼らに日本語を習得させることも大事ですが、受け入れる私達も世界語である英語を話さねばなりません。世界で英語が通じない国はとても少なくなっています。

昔、日本では明治維新が起きた。でも、本当は今、考え方の平成維新を起こさなきゃいけないんですよ。欧米の人たちは、昔も今も、技術や物、思想で世界制覇をしようと真剣に考えている。日本の偉い人に、そんな人は少ないのでは?と思います。

せっかく自治体を動かせる力のある人たちですら、自分の代で可もなく不可もなく過ごし、冒険的な革新しようとする人が少ない。大局を見据えた世界観をもってくれない。日本の30年先、50年先、語ってくれる人物の登場に期待しています。

世界を見ていると、毎年、ヨーロッパの国際展示会や工場の視察等を通して、イライラするんですよ。…いえね、日本人にその能力がないなら我慢しますが、あるんですから!!!料理人のレベルも世界のトップレベル、フランスの星付きレストラン十数店舗のシェフは日本人です。

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熊谷さんから見ると、歯がゆさがあるんですね。

熊谷氏:
日本の農業技術なんてすばらしいですよ。地方都市で例えば岩手県なんて、本州で一番大きい県でしょ。過疎化も進んでるからそういうところを整理して、大農地とか大畜産農場とか作り、生産性を上げ、品質管理をし、加工品の開発、世界販売戦略なんて考えて頂きたいものです。

それと並行して、街はもっと開放してあげなきゃいけない。地方都市は車社会なのに、街の中心部や駅前含めて駐車場が少ない。容積率、高さ制限を大幅に緩和し、駐車場の義務化、道路の拡張、緑蔭スペースのある舗道の設置等を進めて欲しいものです。
今後も、そういう地方の再生とか、被災地の食がらみの支援などをやっていきたいですね。

地方の若い人たちにも、自分の持ってる物差しで考えるなと伝えています。自分たちでつくったものをね、世界の物差しで見たら私達の商品、考え方等はどこにいるんだろうどのレベルだろうって。東京だけ見ていてもだめです。全世界に目を向けてほしい。ここにいるとしたら、この力、商品力でどうしたらそっちまで行けるんだろうって。そういう考えを持ったら、地方であろうが、山の中であろうが成功するんですよ。

歯がゆさを感じるからこそ、実際に動かれているんですね。

熊谷氏:
私が若かったら自分でやるんだけどね。さすがに72歳にもなるとね。でも、気持ちはありますよ。

では、今の夢というのは世界に向けた食のビジネスを?

熊谷氏:
食に関しては、先ほどお話しした香港マキシムグループと出来たらやりたいと思っています。アジアをずっと攻めたかったからね。

アジアってね、安くて美味しいお店がいっぱいあるんですよ。そんな場所で私たちの理想や考えが、どこまで通じるか。それがお菓子なのか料理なのか、それとも違うものなのか。何かチャレンジしてみたくなります。

そして、今顧問をしている会社には、世界に出ていきなさいと。極端な話、青森のりんごとか、もはや日本で売るなと、全部世界に出して、世界の中の2%の民族の日本の中でなく100%と商売しようといつも言ってるんです。高知の柚子も世界中で売るようにお手伝いしました。

日本人だから、やっぱり日本を良くしたいじゃない。地方が良くなんなきゃ日本の再生はないと思うんですよ。

熊谷さんの今後の夢は?

熊谷氏:
夢というか、これからアジアの経済が大きく変動すると思います。その機の食がらみお手伝いが出来たら良いなと思っています。

世界の人口の40%近くはアジアにいます。中国も日本も少子高齢化。インドはあと3~4年で人口が中国に並ぶと言われている。富裕層も多い。インドのシリコンバレーなんていったら、億万長者がたくさんいる。インドネシアの人口も2億人いるんですよ。ベトナムは知識層のレベルが高い。タイ人は勤勉だし、手先が器用。だからヨーロッパの高級ブランドも工場はベトナムかタイが多いですね。そしてインドネシア、マレーシア、ミャンマー、フィリピンを含め人件費が安い。尚且つ、急速に欧風化している。これからの10年、20年、世界経済の台風の目となりそうです。

これから世の中にはばたく若い方々は、そういう世の中の流れがどう変わっていって、どんな可能性が生まれ、その層に対してどういう戦略を立てるかが成功への道につながるので知る必要があります。

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目の前のことだけでなく、どう変わっていくのかを見据える必要があるわけですね。

熊谷氏:
今となっては、料理人5%経営者95%の私は、そう考えます。
フードビジネスほど面白いものないと思っています。私は天皇皇后陛下の目の前で料理を作りました。自分の仕事を、直にそんな方々に見ていただける仕事なんて、なかなかないですよね。

それに、美味しいものを作ったらお金を払ってくれるうえに、頭まで下げてくれる。
いろいろと満たされていくと、人間の最後の欲って“食”になります。だからこの“食”を通して、ものすごい人たちとの繋がりが広がるんですよ。その道を極めれば極めるほど、そういう人たちと繋がることができる。

自分の世界を大きくしよう!と、若い人に伝えたい。ましてや今なんて、世界は近くなっているんだから、行こうと思えばすぐに出ていけるんだから。

世界を魅了する上で、大切なことは何でしょうか。

熊谷氏:
中身が大事。高級でなく、一流を目指す。レストランだったら、味はもちろん、サービスしかり、全てに感性が磨かれていることが大事です。それと、そこでしか味わえない世界を作り上げる事かな。

お金がないって言ったって、世界の東京ですから。それだけの層はいますし、成り立ちますから、中途半端な値段を付けなくていい。でも大型店は難しいので小さめに少数精鋭でね。

もちろん、ウン万円払って「高い!」と思われちゃダメ。2万円、3万円払っても安いなって思われるような、そういう価値観のあるものをつくれるようにならないと。そんな簡単なことではない?…でも、実際に、今もそれを実現している人は、若い人でもいますよ。すごいシェフは、いっぱいいる。会いにいけばいい。

世界という物差しで測った時に、高いレベルであれば日本の山の中でも、パリでもロンドンでもニューヨーク等、どこでも通用します。

昔は世界が遠かった。1975年に、アルパッジョンの料理コンクールで、私は優勝しました。コンクールが始まって以来、料理では初の日本人による受賞です。このことは、フランスの新聞には大きく載っていたのですが、日本ではニュースにもならなかったんです。

今は違いますよね。例えば、「世界のベスト〇〇レストラン」のようなものに選ばれたら、世界中に広まって、それこそ世界中から食べに来る。日本の山の中だろうがなんだろうが、来るんですから。

この国の料理技術は、それくらい自信を持っていい。だからこそ、一流に昇り詰めるということが、これまで以上に面白くなっていると思う。とても高い山だけど、若い方にはぜひ、世界を見据えて進んでいって欲しいですね。

(聞き手:齋藤 理、文:半村 幹雄、写真:清水 知成)

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