当たり前を当たり前にやり遂げてこそ、次のステップが見えてくる

L'ATELIER de Joël Robuchon(ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション)
関谷 健一朗

L'ATELIER de Joël Robuchon(ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション)生ハムを切り取る関谷健一朗

■ジョエル・ロブションという人物と、彼のもとで働くということ

関谷シェフから見て、ロブション氏はどんな人でしょうか?

関谷氏:
ロブションの料理は考えつくされていると感じます。一皿作るのに、使える食材は2~3つと限られていますよね。主役の食材に、引き立てる食材が少しあってというように。

だから、最終的に皿にのった食材は、厳選されているのです。その足し算、引き算の追求が、ロブションのすごさ。基礎的な技術や知識はきちんとあったうえで、流行にも左右されません。

そして何より、彼は僕の人生を変えた人です。フランスにいたときはスーシェフまでやらせてもらっていますし、5年近く経ったとき東京の店をやってくれと言われて、帰国したわけですしね。

彼によって僕の人生は変わりましたね。そういう意味で、僕にとっては恩義がある人です。

部門シェフから始まりスーシェフ、シェフというように、確実にステップアップをしていますが、その理由をご自身はどう考えていますか?

関谷氏:
ロブションのフィロソフィーをリスペクトしているという前提ですが、ロブションの考えとまったく同じである必要も、向き合う必要もないと僕は思っています。けれど、見ている方向は同じであるべきです。そういうことは、気をつけてきましたね。

実は、僕は料理のレシピはさほど重要だとは考えていません。食材の質が違えば、できあがりの味は違ってしまいますから。それよりも、その料理の背景を知ることのほうがはるかに重要です。そのほうが、その後に何かしらが身につくことにつながると思っています。そうした背景をしっかり理解して作っていたことも、ロブションは見ていたんじゃないでしょうか。

それと、コミュニケーションが取れることも、理由のひとつにあると思います。フランスで働くことで、フランス人的な考え方もできるようになりましたしね。フランスにいたという経験は、僕の強みです。さまざまなことを見て聞いて、目には見えないところもちゃんと感じてきているので。

L'ATELIER de Joël Robuchon(ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション)関谷健一朗

■若手を育てながら、自分もステップアップしたい

若手への指導はどうされていますか?

関谷氏:
料理を作るのが僕であろうと、新人であろうと、お客様は同じ金額を払うわけです。「新人だからおいしくありません」ということは許されません。ですから、そこを甘やかすことはしません。

部下の動きは、料理をしながら常に見ています。気がついたことがあったらその場で注意することも、あとから伝えることもあり、そのときどきです。でも、その人が嫌いだから怒っているわけではないことは、強調しておきたいですね。

僕が一番嫌なのは、できるはずなのに、さぼる人です。さぼると、それがまわりまわってお客様にまで影響します。それは許せません。いろいろな若手を見てきましたが、のびる・のびないというのは、やはりあります。のびる人というのは、掃除をしっかりやる人返事ができる人。幼稚園で教わりそうな当たり前ことですが、スタートはそこからだと思います。

料理は、難しいことをしてできあがるものではありません。いい食材があって、適切な処理をして適切な味つけをする。当たり前のことを、忠実にすることが、すごい一皿になったり、おいしさを作り上げたりするのです。こうした当たり前が積み重なって、実力もワンランク上がるわけですから。

ご自身の今後の展望についてはいかがですか?

関谷氏:
まさに、そういったことを考える年代になっていて、どうしようかなあと思っています(笑)。この仕事について17~18年経ちますが、これからのほうが長いですからね。

独立についてはよく聞かれますが、こればっかりはタイミングですからわかりません。ただ、フランスに戻りたいという気持ちは、今はあまりありません。フランスにいたら絶対に作っていないな、思いついていないなという料理を今日本で作っているので、もし海外に行くならば、別の国のほうがいいですね。経験するならば、別のところで学びたいです。

料理自体を将来どうしたいかで言うと、僕自身のカラーがある料理を作れるようになりたいと思います。世界の名だたるシェフの料理は皿を見ただけで誰が作ったものかがわかるものです。もちろん、僕はロブションが作った料理はひと目でわかります。そんな料理が一皿でも二皿でも作れるようになりたいです。

ところで、これまでの話で、何度となく語学の大切さを強調されていますが?

関谷氏:
僕自身は日本でのキャリアが2年ちょっとしかありませんでしたが、フランス語を話すことはできた。もし僕と同じような人と、日本での経歴は輝かしいけれどフランス語が話せない人がいたら、フランスでは確実にコミュニケーションの取れる前者が採用されるんですよ。僕が採用する立場でも同じですね。

人それぞれだと思うので、料理の技術よりも語学を身につけなさい!とまでは言えませんが、僕自身は、語学は非常に重要だと思っていますし、実際に非常に役に立ちました。

偉そうに聞こえたら嫌なんですが、フランス料理をやっていて、フランスに行ったことがないとか、フランス語が話せないとかは、僕の中ではあり得ません。僕自身は、しゃべれないとは絶対に言いたくありませんね。

たった2か月でフランス語の読み書きができるようになった理由は、生きるために必要だったからですよ。フランス語は、自分が好きなことをやるための武器だった。それをさぼると好きなことができなくなる。だから、必死になって勉強をしました。

最後に、料理人を目指しているがんばっている人へ、メッセージをお願いします。

関谷氏:
辞めないで続けることが大事だと思います。この仕事はゴールがありませんし、息切れしても誰も助けてくれませんが、やったらやっただけ返ってくる仕事です。

続けていれば、過去を振り返ることもできます。実際、僕自身も「どうしてあんな 料理を作ったんだろう」と反省したり、逆に「あのときのあの料理をもう一度作りたい」と思い起こしたりすることもあります。こんなふうに振り返って次に生かせるのは、続けているからこそですから。

料理だけでなく何においても同じですが、楽しいと感じられるまでには時間が必要です。僕だって「楽しい!」の域にはまだ達してませんよ。

(聞き手:齋藤 理、文:荒巻 洋子、写真:刑部 友康)

L'ATELIER de Joël Robuchon(ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション)カウンター

写真:店舗提供

L'ATELIER de Joël Robuchon(ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション)外観

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