当たり前を当たり前にやり遂げてこそ、次のステップが見えてくる

L'ATELIER de Joël Robuchon(ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション)
関谷 健一朗

L'ATELIER de Joël Robuchon(ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション)関谷健一朗

■日本に戻ってから、さまざまな変化を経て今

東京に戻ることになった理由は何ですか?

関谷氏:
パリの「ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション」でスーシェフを勤めて5年くらい経ったころ、「東京の店でシェフをやってくれないか」と言われたのがきっかけです。もしこの話がなければ、戻ってきてはないですね。

フランス料理を作りたいという思いが僕の根底にありますし、フランス料理を作るにあたってフランス以上の国はあり得ない。自分のやりたいことをするには、フランスという環境でしかないと思っていましたから。

でも一方で、キャリアのステップとして日本でチャレンジするのもいいんじゃないかと思い、帰国しました。

久しぶりに日本に戻ってきて、違いはありましたか?

関谷氏:
パリと日本では、味の強弱が違いました。塩分が強いとか弱いとか調味料の味のことではなくて。煮詰め具合や、炒めたり焼いたりするときの火の入れ方が違うからだと思います。火を入れることは食材の水分を抜き、味を凝縮させることですから、その微妙なニュアンスが違うのでしょう。パリのほうが、メリハリが強いと感じました。

戻ってきてから数年は、日本とフランスとの食材のギャップに苦しみました。同じように作っているのに、なぜ同じにならないんだろうと。だから、想定内の味が作れるという安心感から、フランス産のものを使っていましたね。

今から考えると逃げていたんだと思います。でも、最近は、食材を探しにいろいろなところに行くようになり、日本の食材も使うようになりました。

日本の食材を使おうと思うようになったのは、どうしてですか?

関谷氏:
コンクールに出るにあたり、自分の料理を見つめ直したのがきっかけです。深く考えていったときに、お客様に食べてもらうには「ごちそう」を作らなくてはいけない。そこに行きつきました。

ごちそうという言葉は、漢字で書くと「御馳走」です。「馳走」とは馬に乗って、いろいろなところの食材を探して持ってきて、もてなすという意味。それを知り、自分のできる「ごちそう」とは、国内外問わず、いいものを探してもてなすことだなと思ったんです。そういったことがきっかけとなり、日本のいいものを探すことへとつながっていきました。

L'ATELIER de Joël Robuchon(ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション)料理
写真:店舗提供

料理を作るうえで気をつけていること、重要視していることは何ですか?

関谷氏:
この店で出す料理は、すべて僕に一任されています。もちろん、ロブションのチェックは受けますが。そのときに、何より重要視しているのは、ちゃんと説明ができる料理を作ることです。

きれいだから、なんとなくという料理は作りません。なぜこのソースなのか、なぜこのつけ合わせを添えているのかまで、すべてに理由がある料理を作っています。こうして突き詰めることで、結果的に料理の完成度も上がります。

こうした考えはロブションも同じです。たとえば、ロブションの料理に、薄い生地に玉ねぎとベーコン、黒トリュフをのせたタルトがあるんですが、これに使っている食材にもちゃんと理由があります。黒トリュフは地中に埋まっているものだから、同じく地中で育つ玉ねぎを合わせています。また、黒トリュフはかつて豚が探し当てるものだったので、ベーコンを合わせているんです。このような彼の思考が、僕はすごく好きですね。

あとは、フランス料理の枠は絶対にはずしたくないという信念を持って臨んでいることです。僕の作りたいものは、ほかでもないフランス料理なので。特別なルールは設けていませんが、フランス料理は、「気候」「風土」「伝統」がある文化なので、それらが皿からイメージできるように心がけています。

L'ATELIER de Joël Robuchon(ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション)関谷健一朗

■自分を高めるためには、常に何かに挑戦すべき

コンクールにも積極的に出場されていますが、コンクールは関谷シェフにとってどういうものですか?

関谷氏:
コンクールに出ることで、マイナスになることはひとつもありません。結果がよくなかったとしても学ぶことは多くあります。

店をやりながらコンクールに出ることは大変ですが、僕は案外飽きっぽい性格なので、同じことをずっとやっていると飽きてしまうんです。だから、自分にとってプラスになることを、毎年挑戦しようと自分の中で決めていて。そのひとつの形が、コンクールに出ることです。

それから、勉強する姿勢を、身をもって部下へ見せる意味もあります。「勉強しろ、勉強しろ」と口だけで言っても伝わらないですから。

コンクールに出るといっても日々の仕事の延長線上にあることですから、いつも作っている料理が評価に値するものであるということを部下に示すというのも、コンクールに出るひとつの理由です。

昨年は、ソムリエの資格も取得されたと聞きましたが?

関谷氏:
資格は単なる結果でしかないので、そこまで重要視はしていませんし、それを使ってどうこうしようと思っているわけではありません。でも、勉強をして経験知識が増したことで深く掘り下げて考えられるようになり、料理を考える上で僕にとってはプラスになりました。

料理単体ではなくワインとのペアリングもイメージできるようになりましたし、ワインベースのソースに使うワインの意味や役割もわかるようになりましたしね。

30代になって自分を成長させるって難しいので、自分を追い込んでプレッシャーをかけて何かにチャレンジしていかないと、上にはいけません。良くも悪くも、店には僕のことを怒ってくれる人がいないので、外の人に怒ってもらう、評価してもらうことは必要です。常に何かにチャレンジをして、向上心を持ち続けたいですね。

L'ATELIER de Joël Robuchon(ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション)外観

L'ATELIER de Joël Robuchon(ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション)

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