目標に向かって強い信念と行動力で突き詰めていくAUTODIDACTE(独学者)

Restaurant La FinS(レストラン ラ フィネス)
杉本 敬三

Restaurant La FinS(レストラン ラ フィネス)テーブルセット

■1日客数8人限定。少数精鋭のチームで理想の料理とサービスを提供

現在のチームは3人。少数精鋭という印象です。

杉本氏:
まさに、そのとおりですね。以前はホール担当のマネージャーやソムリエの資格を持つサービスマンもいたのですが、できたての料理をできるだけ早くテーブルに運んでほしいという僕の思いと、サービスとしての情報提供をお客さまにきっちりとしていきたいというサービスマンの気質に温度差を感じ、思い切ってホール専任者をなくしました。

今の従業員は、調理経験7年の女性と5年の男性の若い2人。僕を含めた3人で朝から仕込みに集中し、営業前にホールのセッティングを準備して、営業中は僕を中心に全員が厨房とホールを行き来しています。

ワインはボトル売りをされないというのは本当ですか?

杉本氏:
セラーには僕自身が選んだ1300本ほどのワインがありますが、すべてグラスで提供しています。基本は4杯8000円~1万8000円の設定で、お客さまの好みやワインのクラスやコンディションに合わせています。

最高で1人15杯くらい用意しますし、一般的にはボトルでしか売れないようなハイクラスのワインも開けますので、ワインに関してはかなりリーズナブルだと思いますよ(笑)。

僕はフランス滞在中にワインにもはまり、ブドウ栽培からワイン醸造などができるオノローグ(Oenologue)の仕事もしていたので、生産者の知り合いも多いんです。

料理に合わせるワインを選ぶときも、生産者の顔を思い描きながら、その個性や嗜好をイメージすることも多いので、一般のソムリエの方とは少し違うアプローチかもしれませんね。例えば、ラム肉が大好きな生産者は、ラム肉に合うワインを作っていたりします。不思議とね。

料理とお酒のペアリングって、絶対的なものではないと思うのです。組み合わせは無限にあるし、味覚だってそもそも主観的なものですからね。だからこそ、そういうアプローチのほうが、料理をより楽しめるのでは、とも思っています。

独立して6年目を迎え、今の心境をお聞かせください。

杉本氏:
今がいちばん楽しいですね。1日の客数を8人に限定してから、リピーターが9割を占め、新規のお客さまを受けにくいのが悩みどころではありますが、やりたいことがやれているし、買いたいものも買えていますから(笑)。

ディナーのコースは1人2万2000円の1本に絞り、毎日、全国からよりすぐって仕入れた食材を前に当日のメニューを考え、僕自身のオリジナリティを表現した料理を作り出すことを楽しんでいます。

食材に関して言えば、入手可能な中で、最上級の品質のものや希少価値の高いものを仕入れることに力を入れていて、今はそれがほぼ実現できています。たとえば魚介類は全国各地の60ほどの業者と取引があり、それぞれが自信をもってすすめてくれる、特別に品質の高いものだけを選んでいます。

器などの什器も作家に特注しているものが多く、この夏には、待望のオリジナルのクロッシュが完成しました。料理の個性に負けないモダンで迫力のあるクロッシュがほしくて、銅作家にお願いしたものです。外側は純銀製で中は黄金色の真鍮。一つ一つを叩きながら作られた、手づくりならではの質感のある球体がとても気に入っています。

最後に、今後の目標を聞かせていただけますか?

杉本氏:
僕の料理を通じて、日本のすばらしい食材をもっと広く世の中に知ってもらうことで、日本の生産者の応援をしていきたいですね。

たとえば、生産者がとても苦労してつくったり、探し出した品質の高い食材は、できる限り高価で買い取るべきだと思うのですが、一般には必ずしも正当に評価されているとは言えません。そのためには僕自身が食材の知識をさらに深めていくことも必要だと思っています。

また、僕ら30代の料理人が子どもの頃は、テレビ番組の『料理の鉄人』や漫画の『美味しんぼ』を始め、メディアの世界で高級料理や高級食材を題材にしている企画が少なくなかったのですが、今話題に上るのはB級グルメのことばかり。

本質的なことを伝える料理文化や品質の高い食材が縁遠くなるほど、食の業界は先細りになってしまうのでは、と危惧しています。業界が盛り上がれば人材も増え、競争力が激しくなり、活性化して発展につながるはず。そのきっかけづくり、発信の仕方も考えていきたいですね。

(聞き手:齋藤理 文:村山知子 写真:刑部友康)

Restaurant La FinS(レストラン ラ フィネス)内観

Restaurant La FinS(レストラン ラ フィネス)内観

Restaurant La FinS(レストラン ラ フィネス)

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