フランス・日本の二拠点経営を行うシェフ。目指すは食を通した社会への新しい価値提供、あるいはレジスタンス

KEISUKE MATSUSHIMA
松嶋 啓介

Keisuke Matsushima 松嶋 啓介

■レストランの成功を導いたマーケティングの視点

フランスで独立したのも、日本には帰りたくないという思いからだったのでしょうか?

松嶋氏:
店をもつというのは、日本でもフランスでも大変なことですから、最初は両方の可能性を探っていました。でも、独立を決意した2000年当初はバブル崩壊からずっと経済が停滞していた時期。日本よりもフランスのほうが成功する確率が高いと思えた。
それに日本では、フランス料理を楽しむお客さまは「限られた人たち」。どうやっても少ないパイの奪い合いになってしまう。実は、僕は基本的に、競争はしたくないんです。その点、フランスは必然的に、フランス料理のお客さまの数は多い。しかも、日本の飲食業界の動きを見ていて、「フランスでミシュランの星を獲れば、日本から出店のオファーが来るはず」と思っていました。それで「日本に店を開くのはそれからでいいや」と考えていたのです。

シンプルにマーケティングの視点をお持ちだったんですね。独立の場所にニースを選んだのは何故ですか?

松嶋氏:
ニースは、コート・ダジュールというヨーロッパの代表的なリゾート地の中心都市。山があって海があって、どこか故郷の福岡にも似ていたんですよね。それに世界中から訪れる観光客が多いわりには高級なレストランが少なかったんです。さらに言うと、僕は結婚したばかりだったので、子供を育てるにもいい環境だと思えた。イタリアとの国境が近いのもメリットに感じていました。イタリアにも星付きレストランや魅力的な食材がたくさんあるから、勉強できるかなと。今もよく行くので、イタリア語も少しは話せるようになりました。

3年後には見事にミシュランの一つ星を獲得されて、10年間も維持されました。

松嶋氏:
フランスでは、星付きのレストランで何軒も修業を積んでいましたから、星を獲るには、どんなメニューやサービスを提供したらいいのか、ゴールのイメージがあった。
フランスで星を獲ったのを機に、日本から出店のオファーをたくさんいただけたのは想定どおりでした。それで東京の原宿の明治通り沿いに店を開くことができたんです。

原宿も計画どおりの場所だったのですか?

松嶋氏:
結果的にはそうなりますね。10代の頃から、原宿は憧れの場所でしたから。高校3年生のとき、専門学校の受験で初めて上京して渋谷の明治通りに立った時、いつかこの通りで店を開こうと決めていた。だから日本から十軒以上のオファーをいただいたなかで、今の場所の話が来たときは、純粋に「ラッキー!」と思いました(笑)。

Keisuke Matsushima 松嶋 啓介

■世界で勝負できる人材を育てたい

現在はフランスと日本の両方にレストランがあり、頻繁に行き来される二重生活。想像以上に多忙な毎日だと思いますが、二つの国で店をもち続ける理由は?

松嶋氏:
あえて一言で言うとすれば「人材が集まりやすいから」。まずは日本の店で僕の目が行き届く範囲で育成し、さらにニースの店で経験を積んで成長してもらい、次の出店につなげたいと考えています。こうした人材の育成方法やビジネス展開は、すでにジョエル・ロブション氏が行っているやり方。ロブション氏のレストランは、今や世界中に展開していて、東京から巣立っていった日本人の料理人がたくさん活躍していますからね。自分も、いずれ、日本・フランス以外にも、お店を出して行ければと考えています。

チームとしては、どのように店のコンセプトを共有されているのでしょう? 日本とフランスでは同じなのですか?

松嶋氏:
それぞれ現地で入手できる素材を使ってメニューを考えるので、表現する料理は違いますが、コンセプトは同じです。以前はフランスと日本での店名が違っていて模索してきたこともありましたが、一昨年に店名を「KEISUKE MATSUSHIMA」に統一して落ち着きました。

今は、スタッフ全員にブランドブックを配るようになり、かなり意思統一できるようになっています。ブランドブックとは、店や料理のコンセプトを含めたブランドポリシーや企業理念に加えて、スタッフが持つべき心構えや行動指針などを8頁ほどの冊子にまとめたもの。内容の一部はホームページにも載せています。

フランスやイタリアを旅していて気づいたことなんですが、世界中で人を教育するうえで、宗教以上にすごいものって無い。それなら、教育のために、聖書のようなものをつくってはどうだろうかと考えて、ブランドブックをまとめました。もともとニースで独立する際につくった原案があったので、より具体的な言葉できちんと表現したことで、僕が目指したい方向性がスタッフにも伝わりやすくなったと思います。

Keisuke Matsushima まかない

チームでまかないをいただく。店のメンバーとのコミュニケーションを取る大事な時間。

どんな人材を求めていますか?

松嶋氏:
「フランスに絶対に行きたい」と言い続けるような人がいいですね。僕と一緒に世界で勝負できるような人材を育てていきたいから。料理はまじめな人であれば自然と覚えるものなので、実践で経験を積んでもらえればいい。

たとえばうちのランチは、日本の店では月に1回、フランスでは週に1回変わるので、1年も経験すればかなり鍛えられます。スタッフにとっては、自分の夢のために頑張ることが、僕の店で働くこととマッチできるかどうか?という点が鍵になるでしょうね。

僕はスタッフには、のびのびと楽しく仕事をしてもらいたい。スタッフが楽しんでくれれば、店はうまく回っていくものです。僕自身、ギスギスした環境は嫌いだから、怒鳴るようなことはほとんどありません。何か失敗したとしても、きちんと説明することで何が駄目だったのか理解してもらって、次にうまくやってくれればいい。飲食業はただでさえきつい仕事なので、あまり厳しくするのはかわいそうですしね。

Keisuke Matsushima 松嶋 啓介

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