全神経を注いだ先に、オンリーワンのブランドが生まれる

ホテル ラ・スイート神戸ハーバーランド
檜山 和司
ホテル ラ・スイート神戸ハーバーランド 檜山和司

ホテル ラ・スイート神戸ハーバーランド 檜山和司

■多彩な切り口でお客さまをもてなす、サービスの奥深さに魅せられて。

今やレストランサービス界の重鎮として知られる檜山さんですが、この世界に入られたきっかけは?

檜山氏:
進路を意識したのは、高校を卒業する時。当時は不景気で、国立か有名私立大学に行かないと良い就職は望めなくて、どうしたものかと悩みました。芸術やアートが好きだった私は、先生から「芸大の推薦状を書いてあげるよ」と声をかけられ自分もノリ気だったのですが、親からは「芸術で飯が食えるか」と猛反対されてしまって。

その時に考えたのが「これからはコンピュータが全盛になって、人間の仕事がロボットにとって代わられる時代がくる。でも『衣・食・住』の仕事はなくならないし、人にしか提供できないこともたくさんあるんじゃないか」ということ。そこで目指したのが、フランス料理のシェフ。食べるのも好きだったし、アート気質も生かせるだろうと。

では、まずシェフ志望で調理師学校に。そこからサービスに目覚めた経緯は?

檜山氏:
卒業後は学校の先生の推薦で、大阪の老舗フレンチレストランへ。30席ほどの店でみんながシェフ志望でしたので、誰かはサービスをしないといけない。そこで、不公平がないようにキッチンとサービスが3ヶ月ごとに入れ替わって働いていたんです。
私の人生が変わってしまったのは、その時でした。
サービスを担当していたお客さまが帰られる時に、「おいしかった」ではなく、「今日は本当に“楽しかった、ありがとう”」と声をかけてくださったのです。衝撃で心を撃ち抜かれました。

“おいしい”というのは味覚だけですが、“楽しい”は五感ですよね。おいしいものを食べながら、心温まる会話をして、思い出に残るような時間を過ごせた、それに対して感謝をされたのです。その一言が嬉しくて、私の天職はサービスなのでは?と感じたのです。

キッチンで料理をしている時よりも、おもしろさがあったと?

檜山氏:
とにかく楽しかったですね。単純に料理を提供するだけでなく、「この素材は○○産で今が旬で、このソースと合わせると相乗効果が…つけあわせはこうして召し上がると…」なんてオススメすると、すごく喜んでいただける。シェフのアンバサダーとして、“食べ方と想い”を伝えるのがサービスの役割なのだと気付けたのです。

料理の味だけではなく、豊かな知識や色んな観点からお客さまを喜ばせるというのは、自分の世界も広がるし、すごくおもしろいなと思いましたね。

その当時、銀座の高級フレンチ「レカン」で以前にメートル・ドテルとして勤務されていた方と少しだけ一緒に働いていた時期があるのですが、その方の姿がとにかく格好良くて。お客さまに感謝もされて、チップまでいただける。なんてすばらしい職業なんだ、とすっかりサービス職の虜になりました。

フレンチの老舗で5年学ばれて、次のステップは?

檜山氏:
同じサービスを極めるなら、最高のところで学びたいと考えました。その頃ちょうど、「神戸ポートピアホテル」の最上階に、三つ星レストラン「アラン・シャペル」の日本支店がオープンすると耳にして、ぜひ働きたいと。当時、常連だったお客さまにご縁があり、口利きをしてもらって、アルバイトからスタートしました。

ホテルのサービスは、街場のレストランと違ったことはありましたか?

檜山氏:
違いましたね。まず組織力は当然ながら、サービスの“奥行き”が全く違う。一つひとつのクオリティが高かったですね。

「アラン・シャペル」には、サービススタッフは何人ぐらい?

檜山氏:
ソムリエを入れたら24~5名いたと思います。ダイニングや個室を含めて100席近くあるお店だったのですが、それが満席になるのですから。メートル・ドテルもソムリエも、それぞれ4~5名ほど働いていました。

そんな中にアルバイトで入られたということですが、どういったレベルの仕事から任されていくのでしょう?

檜山氏:
バターやミルクを用意したり、レモンをスライスしたり…雑用係みたいなものです。お客さまとコミュニケーションをとるのは、まだまだ先の話。あとはデイリーワークとして、カトラリーやキャンドルスタンド、シャンデリアなど、毎日何かしらを磨いていました。
それができたら次は、できあがった料理をプラッターに載せて、ダイニングまで運ぶアシスタントウェイター、いわゆるコミ・ド・ランというんですが、その補助を任されます。

このコミ・ド・ランが運んできた料理を受け取り、実際にお客さまに優雅にお出しするのが、シェフ・ド・ランやメートル・ドテルと言われる人たちです。この組織編成をブリガードというのですが、まさに軍隊の組織のようにパシッと決められています。

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■カリスマの姿から学んだ、立ち居振る舞いで人を酔わせるサービス。

最高のサービスを学びたいとフレンチの名門に飛び込んだわけですが、どんなことを心がけていたのですか?

檜山氏:
まず入店した時に考えていたのが、“これだけは誰にも負けない”ことを一つずつ増やしていこうということでした。例えば、気持ちの良いあいさつとか、誰よりも格好良くプラッターを持とうとか。スマートにお皿を下げようとか。

具体的には、どんなトレーニングを?

檜山氏:
「アラン・シャペル」は抜群の眺望で、大きな窓がいくつもあり夜になると全身が映るんです。そこでプラッターを運ぶ時の自分の歩き方を観察して、キレイに見えるようチェックしていました。先輩方もそんな私の姿を知っているので、「今日は95点だ」とか、気にかけてくださる。ヘアスタイルや身だしなみについても厳しい目で見られます。

やはり清潔感がポイントなのでしょうか?

檜山氏:
私は、大事なお客さまとは一生涯のお付き合いをしたい。だからこそ、自分の顔は全面に出して“見て覚えてほしい”という想いがあります。

もちろん、料理に1本たりとも髪の毛を落とさぬよう衛生面への考慮もあります。オールバックでビシッと決めているのはそのためでもあります。
顔を覚えてもらうためのインパクトという点でも、ヘアスタイルは非常に大事ですね。

ハードな生活だったと思いますが、仕事自体は充実していたのですか?

檜山氏:
通常の運用だと回らないぞ、なんて予約状況の時もありましたからね。シェフも意図的に極度な緊張感を演出して、みんな違うスイッチを入れてハイテンションのまま営業に入って。目が回るような忙しさを乗り越えていました。家に帰って布団に入るでしょう。もう布団に溶けるような感覚ですね。身体も脳も120%使っているのでクタクタで、寝た次の瞬間には目覚ましが鳴っていた…というような毎日でした。

でもやればやるほど結果がついてくるので、充実していました。一つできることが増えれば、「じゃあ、次はこの仕事してみるか?」とチャンスも舞い込んで。9ヶ月目には、正社員として採用され、最終的にはマネージャーにまで昇格しました。

何より、良いサービスをすれば、自分に会いに来てくれるお客さまが増えていきましたから、それがやはり一番の醍醐味でしたね。シェフもそれが分かっていて、「大切なお客様は、檜山にサービスを担当させろ」なんて信頼関係が生まれてくるんです。

そうなってくると楽しいでしょうね!

檜山氏:
お客さまの取り合い…というとおかしいですが、ご来店される方は、みんな自分の顧客にするぞという心構えでサービスをしていました。お客さま毎に“記憶に残る食卓”をいかに演出するか、楽しんでもらえる時間にするのかを考えるんです。

それは料理人にはない、サービスならではの魅力かもしれないですね。檜山さんにとってロールモデルとなるような、目標像みたいなものはあったのですか?

檜山氏:
年2回ほど本店から、アラン・シャペル氏とディレクターのエルベ・デュロンジェ氏が来日されるんですが、その立ち居振る舞いが映画俳優のように格好いいんです。

お酒じゃなくて、その優雅な所作で人を酔わせてしまう。その姿を右脳に焼き付けてマネを続けるんです。他にも、ジョエル・ロブション氏など一流シェフの仕事ぶりに触れる機会もあり、色んな方の心構えから、立ち姿、ナイフの使い方を吸収し、檜山スタイルとして昇華させるまで、イメージトレーニングを続けました。

イメージトレーニング!まるでスポーツ選手のようですね。

檜山氏:
あとは、調理場とダイニングを行き来している間も常に各テーブルの進捗状況を把握して、どう動いたら料理がスムーズに運べるか、タスクを効率良く進められるかをイメージしロスをなくしました。そうすると時間が生まれるので、先輩のナイフさばきを横で観察できる余裕もできる。さらに、さばいた後の皿を下げずにこっそり置いておけば、ナイフをどう入れたのか軌跡を辿ることができるんです。そうやって勉強しました。

ほぼ独学なのですね。そもそも教えられたとしても、自分の意識がそのレベルにないと、頭に入りませんよね。

檜山氏:
そうですね。東京のフレンチの名店に足を運んで、カリスマと謳われたメートル・ドテルの立ち居振る舞いや仕事ぶりを見たりもしました。

そうして勤め始めて数年経った頃、年に何度もフランスにいくようなお客さまとも出会い、そんな方々から「この前、リヨンのレストランに行ったんだけどスペシャリテがすごく良くて」「あのメートル・ドテルのナイフさばきが…」と言われても話についていけない。これじゃいけないとなって、フランスに行く決意をしました。

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