全神経を注いだ先に、オンリーワンのブランドが生まれる

ホテル ラ・スイート神戸ハーバーランド
檜山 和司

■「もう、死んでもいい」と思えた、フランスの三つ星店での感動体験

檜山氏:
家内にも相談し、お金を貯めて26歳でフランスへ。往復の飛行機代や宿泊費が一番安くおさまる冬季料金の時期に合わせて計画して、食べることにお金を費やせるようにしました。

先輩と一緒に、三つ星レストランを中心に回りましたが、お出迎えのアプローチでまず別世界に連れて行かれる。「あれ?前にここに来たことあったかな?」というぐらい満面の笑みをたたえて迎えてくださるんです。しかも全く嫌みなく。

料理を食べ、一緒に行った先輩と「これはもう帰りの飛行機が落ちても悔いはないな…。」とそんな話をしました。それほどの幸せを感じたのです。このような、もう死んでもいい!と思えるほどの多幸感を3回ほどフランスで経験することができました。
食後酒を楽しんで、葉巻なんかを嗜んで、ふっと時間を見たら、真夜中の1時を回っていた…なんてこともざらにありました。

フランス人にできるなら、自分でもできるんじゃないのか。日本のお客さまにも、そういう至福の楽しみ方があることを伝えたい。
そんな想いが私のサービスの原点にあるのかもしれません。

自費で研鑽のために行かれたということですが、ホテルから補助のようなものはなかったのでしょうか。

檜山氏:
それが…ある時、ホテルがパリのコンコルドホテル&リゾートと提携をしまして。その交換留学制度を使った海外研修第一号に、私が選ばれたのです。もちろん海外研修に行きたい人はたくさんいたと思いますが、「檜山ってやつは、自費で何度もフランスに行っているらしい。そういうやつの方が、得るものは大きいんじゃないか」と声が上がったみたいです。

受け身ではなく、自らアクションを起こしている人の方が学ぶ姿勢があるだろうということですね。研修期間は、どのぐらい?

檜山氏:
3ヶ月間と短かったですが、十分良い経験ができました。フランスでは、日本語と英語ではいっさい話さないぞと決めて、現地のスタッフたちにも「英語で話しかけないでくれ」とお願いしました。最初は、フランス語で話しかけられたら頭の中で日本語に変換して返事をするのですが、3ヶ月も経てば、自然とフランス語で考え、フランス語が口をついて出るようになっていました。

やらざるを得ない環境に身を置くと、自然と身体が覚えるものですね。フランスと日本のサービスの違いで、感じたことはありますか?

檜山氏:
日本人の方が几帳面で仕事は丁寧かもしれませんが、やはりフランスは“演出”がうまいです。抑揚があって、見せ場をとことん盛り上げる。人前でのパフォーマンスに長けています。
もう一つ優れているのは、ふところに入るタイミング。日本人は「失礼します」なんてかしこまったコミュニケーションからスタートしますが、フランス人はいつ距離が近付いたのか分からないぐらい、ふっと自然に心に入り込んでくる。

あいさつを交わす数秒から十数秒の間に、相手の表情や仕草、身のこなし、服装や持ち物の手入れ具合なんかを見て、「どんな仕事や性格の人だろう」「どんなことをしたら喜んでくれるんだろう」というのを素早く読み取って、おもてなしの仕方を考えるんですね。

その後は、どのようなキャリアを?

檜山氏:
「アラン・シャペル」を辞める気はなかったのですが、ちょうどフランスの研修から帰国した頃に、アラン・シャペル氏が急死されて…。1年は喪に服す意味で、お勤めしてから次のステップへ移ろうと考えました。

そんな時、ちょうど神戸の「神戸ベイシェラトンホテル&タワーズ」に、フランスの三つ星レストラン「ラ・コート・ドール」のロワゾー氏が、日本初支店をオープンする話が舞い込んできました。当時はマネージャー職に就いていましたが、もう一度サービスから学びたいと思い始めていた時期だったこともあり、職位を下げて一スタッフとして飛び込みました。
立ち上げから関わらせていただいたのですが、フランスの「ラ・コート・ドール」出身のジャン・ジャック・ブラン氏と山口浩シェフがダブルシェフで指揮を執られ、ロワゾー氏も来日して厨房に立つこともありました。
私を含め、フランス語を話すサービススタッフも多く、刺激と学びの大きい日々でしたね。

ホテル ラ・スイート神戸ハーバーランド

お問い合わせ
078-371-1111
アクセス
神戸市中央区波止場町7-2
地下鉄「みなと元町駅」から徒歩4分
JR線「神戸駅」より徒歩10分、JR・阪神線「元町駅」より徒歩15分
営業時間
チェックイン15:00〜24:00、チェックアウト12:00
定休日
無休(全館貸切日除く)