レストランサービスは世界一楽しい仕事。この魅力を若い人たちにも伝えたい

レストラン アロム
岡部 一己

レストラン アロム 岡部一己

■口の肥えた顧客から教わったサービスの基本

それでも1年くらいで、次の修業先に移られたのですね。

岡部氏:
やはりフレンチで仕事をしたくて。「マキシム」時代の先輩たちに「給料は安くてもいいから修業先を紹介してほしい」と相談していたんです。それで3店面接を受けて決まったのが、「ペリニィヨン」グループです。

銀座の本店は、1984年に4人の一流サービスマンが共同で創業した、フレンチと洋食を提供する店。大企業の社長や政治家や芸能人の顧客も多い、知る人ぞ知る隠れた名店でした。現在では経営者も代わり、銀座の店は洋食部門の「ドン・ピエール」の本店となっていますが、当時は「銀座ペリニィヨン」と「京橋ドン・ピエール」の2本柱で、他に支店も構えるレストラングループでした。

そこで、師匠と呼べるような方には出会えました?

岡部氏:
創業者の1人だった明永正範さんです。5年前に他界されてしまったのですが、当時はグループの会長で、上品な立ち居振る舞いや落ち着いた人柄はサービスマンとしても人としても尊敬する方でした。

一流のレストランで豊富な経験を積まれていた明永さんは、「マキシム」が大好きで、おそらく僕が「マキシム」出身ということもあって、とても可愛がってくださいました。

ペリニィヨングループでの仕事はいかがでしたか?

岡部氏:
本当にいろいろな経験をさせていただきました。最初は「銀座ペリニィヨン」に配属されたのですが、1ヵ月ほどで「京橋ドン・ピエール」に異動になったんです。「ドン・ピエール」でも口の肥えた常連のお客さまが多かったので、上司よりもお客さまに怒られて、多くを教わりました。

「なんで右から料理を出すんだ」「ワインは利き手で注げ」「そんな説明もできないとは何事だ」……基本的な所作から言葉づかいに至るまで、こと細かくおしかりを受けてました。

それからペリニィヨングループは「お客さまに対してノーはない」のが基本方針だったので、ワガママなご要望でも何でも全てOK。それがすごく大変だけど、面白くもあったんです。メニューにないもの、たとえばカツ丼や素麺を求めらたり(笑)。そういうときは、うまくお願いして、シェフにいかに気持ちよく作ってもらうかも大事な仕事の一つなんです。

「パンがまずい。そこの三越のジョアンで買って来い」なんて言われて、走って買いに行ったこともありました。今だから言えますけど、社長の車でお客さまを次に行く店までお送りしたことも何度もありましたね。ですが、それでもそういったワガママなお客さまからは、相当以上の対価をいただけましたし、教わることも多かった。ふり返ればいい時代だったと思います。

レストラン アロム 岡部一己

■お客さまの「ありがとう」の一言をいただく意味

当時、サービスの仕事で一番楽しかったことは?

岡部氏:
その日のお客さま全員が笑顔になってくれたということに、すごく喜びを感じていました。6年間勤めたうち、最初の4年ほどは初代支配人の藤岡崇喜さんと働いていたのですが、藤岡さんは常連のお客さまに集中するタイプでファンも多く、たくさんの顧客をお持ちだったんです。

藤岡さんが一つのテーブルに集中しているときは、僕が他のテーブルの全てを見てまわるようなこともたびたびあったのですが、忙しいのは慣れていたし、結果的にうまく店がまわってお客さま全員の笑顔を見られれば、「今日もうまくいった!」という達成感がすごかった。この頃は、毎日が充実していましたね。

その後、藤岡さんから二代目支配人を引き継いだそうですね。

岡部氏:
支配人は2年ほどやらせていただきました。集客と売上を落としてはいけないという物凄いプレッシャーのなか、最初は、二点に集中して力を入れようと決めていました。

一つは、とにかく初代支配人の藤岡さんの個性が強くて店のカラーの一つにもなっていたので、それまでのお客さまの足が遠のかないように、1年間は藤岡さんのサービスを徹底して真似ること。その結果、その1年間にいらっしゃらなかったお客さまは2組だけでしたね。

そしてもう一つは、店の開業当初より調理場を仕切っていた鈴木正幸シェフの存在を前面に出すことを意識しました。

それはどんな意図があってのことですか?

岡部氏:
「ドン・ピエール=鈴木シェフ」というイメージを世の中に広めたかったんです。

だからテレビも雑誌もメディアの取材は全部受けるようにして、シェフに出てもらいました。店の評判を上げたかったというのもあるけど、シェフのモチベーションを高めることで、より一層良い料理を作って欲しかった(笑)。

お客さまのわがままを通すために、客席に出てもらったり、お見送りをしてもらいました。とにかくお客さまとの直接関わって頂く時間を多く作りました。

そしてお客さまから「次はアレを食べたい」と特別な料理をリクエストされると「シェフを呼んできます!」と連れてきちゃうんです。お客さまにもテレビや雑誌で見るシェフに直接会えれば喜んでもらえるし、シェフも喜んでいるお客さまから直接リクエストされると絶対に断れない。そんなリクエストがスムーズに通れば、僕の仕事も楽になる。じつは腹黒いんです、僕(笑)。

なるほど!お客さまだけでなく、一緒に働くスタッフも気分よくなってもらうというわけですね。腹黒いかもしれませんが、プロフェッショナルですね(笑)。

岡部氏:
サービスはもちろん、調理場のスタッフだって、お客さまから直接「ありがとう」と言ってもらうのが、一番のモチベーションアップにつながるんです。僕がどれだけうまく伝えても、お客さまからのその一言には絶対に勝てない。だから支配人になってからは、より黒子に徹して若いスタッフにもできるだけお客さまに接してもらうように意識していました。

レストラン アロム 外観

レストラン アロム

お問い合わせ
03-6228-1449
アクセス
東京都新宿区袋町3番地 神楽坂センタービル1F
都営大江戸線 牛込神楽坂駅徒歩3分
東京メトロ 東西線 神楽坂駅 徒歩5分
東京メトロ 有楽町線・南北線 飯田橋駅 徒歩6分
JR線 飯田橋駅(西口) 徒歩7分
営業時間
ランチ 11:30~15:00(13:00L.O.)
ディナー 17:30~22:00
ワインバー 22:00~26:00
定休日
なし