イタリアの郷土料理を広めて、イタリア料理業界の活性化につなげたい

PepeRosso(ペペロッソ)
今井 和正

PepeRosso(ペペロッソ)料理を仕上げる

■若いスタッフのモチベーションを上げる環境と指導を考える

リニューアルに合わせてスタッフも新規に募集したそうですね。採用基準はありますか?

今井氏:
まずは、イタリアの郷土料理に興味があることが一番ですね。でも、あえてベテランは採らないようにしています。先ほども言ったように、僕は「イタリアの郷土料理を伝える遺伝子」を増やしたいので、むしろ未経験者くらいの方が教えがいがあるし、伸びしろを見るのも面白い。

今のスタッフの中には、美容師や大学生もいるんですよ。美容師は美意識レベルが高く、手先が器用なので大歓迎(笑)。今いる子は手打ちの生パスタ作りもとても上手なんです。そういった、まったく異業種の人材をあえて入れることで、郷土料理を拡散できるとも目論んでいます。

20代の若いスタッフが多いようですが、サービスや料理はどのように分担しているのですか?

今井氏:
サービスと料理で軽く担当分けはしていますが、全員がすべての技術を身につけてほしいと思っています。店は最大80席くらいは収容できますが、今は40席強くらいの体制にしていて、スタッフは7~8人。もう少し増員したいですね。

僕はサービスマンも料理ができなきゃいけないと思うので、仕込みもどんどん手伝わせて、賄いも担当してもらいます。何年いないとこのポジションにつけないとか、そういう考え方はすべて排除。やる気があれば、何でも挑戦できる職場です。

だからメニューやレシピを考えるのは僕だけど、それはもう一生懸命、惜しみなく教えています。この店では「教え方と情報共有」については工夫してきました。たとえば手打ちの生パスタにしても、最初に手本を見せて、写真や動画を撮らせるんです。

動画ですか?メモではなくて?

今井氏:
メモなんて効率悪いじゃないですか(笑)。各自でできるだけ早く習得してほしいので、動画で撮影して、後で自分のタイミングで勉強してもらいます。手本を見せる時間がないときは、休日や夜中に自分で動画を撮影して「動画をアップしたから見ておいてね」と全員に伝えます。

実は、うちの厨房には、そうした動画を撮る機材をいろいろと仕込んでます。知り合いのカメラマンに相談したりしながら、何十万円もかけて揃えています。

オープン当初からこの方法でずっとやってきて、オープニングのスタッフ教育も、事前に動画を見てもらって勉強してから入店してもらってました。結果として、ランチなどでは僕が店にいなくても大丈夫な体制になっています。おかげで年に2回以上、2週間くらい休みをとってイタリアに行けるようになっています。

イタリアに2週間も?その間、店を休業するわけではないのですね?

今井氏:
「シェフ不在」ときちんと告知はしますけど、いつもどおり営業します。店で「旬のイタリア料理」を提供するためには、イタリア旅行は不可欠ですから。僕も死ぬ気で頑張って休む準備を整えて、スタッフに教えられる限りのことを教えて、あとは任せるようにしています。

それができるのは、自分とスタッフを信用できるかどうか、ということに尽きますね。僕がいない間にできていなかったことがクリアになるなど、それはそれでスタッフ教育につながっています。

また、店の情報はスタッフに各自がそれぞれでFacebookやInstagramなどで拡散してもらっています。強要ではないのですが、イタリアの郷土料理を広めたいという共通認識からであり、それぞれ写真の撮り方や伝え方を考え、工夫するよう努めています。己で考え、動くようなシステムづくりを考えることも、僕の仕事の一つだと思っています。

PepeRosso(ペペロッソ)まかないを食べる様子

SNSや動画を活用した人材教育や情報共有は、若手シェフならではの感性ですね。若い人をやる気にさせる秘訣を教えていただけますか?

今井氏:
今の若い子は、自分のタイミングがすごく大事。そもそもやる気のある子しか採用してないので、最初にきちんと教えて、勉強したいと思ったときに勉強できる環境をととのえてあげれば、あとはそれぞれで努力してくれます。

それから、僕がとても大事にしているのはスタッフの健康管理。とくに毎日の食事が肝心なので、1日2本のバナナと野菜ジュースはほぼ強制(笑)。病院の先生にも相談して食べる時間や量も考えて、人によっては「牛乳と一緒に飲みなさい!」とか指導します。

賄いもパスタとメイン料理、サラダにパンなどたっぷり用意して、全員でテーブルを囲んでゆっくり食べるんです。パスタとメイン料理は、それぞれの担当者に自由に郷土料理を作ってもらいます。毎回、各自で古い文献などを調べて研究発表会のような感じになるので、皆、楽しんでくれていますよ。

今井和正 PepeRosso(ペペロッソ)

■イタリアの郷土料理を広く一般に普及させたい

オープンから2年を経て、郷土料理が定着した実感はありますか?

今井氏:
まだまだ、これからです。郷土料理は見た目が地味で、わかりやすい目玉料理があるわけではないので、認知してもらうまでとても時間がかかるんです。それは2年前のオープンの時から痛感していたことなので、店のホームページも自分でつくり込み、地道に広めてきました。

まずは食べてもらって、「おいしい」「また食べたい」と思ってもらうことが第一。それから「作ってみたい」という人が増えれば世界が広がるので、手打ちパスタ教室にも力を入れています。昨年(2016年)2月には、大きなイベントを開催して盛り上がりました。インカント時代の仲間や知人の料理人も誘って、朝から晩まで、20州の郷土料理を楽しみながら手打ちパスタ教室を行うという企画で、120人もこの店に集まりました。すごく大変でしたけど大好評だったので、次はもっと大きな会場でやろうと構想を練っているところです。

今後、さらに郷土料理のレストランを増やそうという計画は?

今井氏:
僕の目標は「イタリア郷土料理の普及」なので、自分で店を増やすよりも、店を開きたいという人のサポートにまわりたいですね。ただし、手打ちパスタ専門店など特化した事業ならあり得ます。また、現地の食材が手に入らなくて、店で作れない郷土料理もまだたくさんあるので、合法的に輸入できる食材を模索しながら、まずは再現できる郷土料理を増やしていきたいです。

さらに、日本ではあまり知られていないようなイタリアの素晴らしい文化も伝えていきたいので、食材や雑貨の輸入事業も考えています。たとえばサルデーニャ島のカステルサルドの名人が作る美しい編み物細工は、今後は本格的に紹介したいと思っているものの一つ。文化やアートなど、さまざまなアプローチからイタリアとの距離を限りなくゼロに近づけることで、子どもから大人まで、一人でも多くの人たちにイタリアの郷土料理を身近に感じてほしい。そのための努力を生涯をかけて続けていきます。

〈2017年7月某日、旧三軒茶屋店にて取材。同店は2020年1月に池ノ上に移転〉

(聞き手:齋藤 理、文:村山 知子、写真:刑部 友康)

今井和正 PepeRosso(ペペロッソ)内観

PepeRosso(ペペロッソ)外観

PepeRosso(ペペロッソ)

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