便利でない場所にこそ、心豊かに生きるヒントがある

villa aida(ヴィラ アイーダ)
小林 寛司

小林寛司 villa aida(ヴィラ アイーダ)

■地元の食材を生かす調理法を知り尽くしたシェフたちとの出会い

イタリアでの4年間の中で、自分の考えが大きく変わるような出会いや出来事はありましたか?

小林氏:
色んな店を転々とする中で気付いたのは、どの店のシェフも、自分たちの地元の食材が一番だと思っていることです。

例えば日本では、牛肉なんかだと一定の品質基準に応じて、全国や世界からランクのいいものを集めて料理をしますよね。

ある北イタリアの店で、「この地方の肉はどこよりもおいしい」と教わって、その知識をもって南イタリアの店へ行き、「北の肉を使わないのですか?」と聞いたところ、「いや!、うちの地元の肉が一番おいしいから!」とあたりまえのようにシェフが言うのです。どこの店に行ってもそれは同じでした。

その地元の食材をもっとも生かす調理法も熟知しているんでしょうね。地産地消の意識が高いということでしょうか?

小林氏:
意識というか、そもそも地産地消なんて言わないんですよね。それがあたりまえなのだと思います。それと、“ないものをわざわざ使わない”という考えがあると思います。

例えば、お菓子でアングレーズソースという卵とバニラと牛乳で作るソースがあるのですが、ある地方ではレモンの皮をたくさん入れて作るんです。「バニラも買えばあるのに、使わないんですか?」と聞くと、「それは違う。この地にはない高価なものをわざわざ入れる必要はない」と言うのです。そこで私は、地元にある食材で、工夫して作っていくことが大切なのだと、教えられました。

実はその時は、「そういうものなのか」と思っただけだったのですが、それが帰国後に自分の店を開いた時に、大きなヒントになっていくのです。

なるほど、後に効いてきたわけですね。ちなみにイタリア修業の最後の店は、当時三つ星だったレストランだったそうですが、どのような経緯で?

小林氏:
その店の料理スタイルや食材への向き合い方に惹かれて、「ここで学びたい」と門を叩きました。ナポリ湾の南側に位置する小さい町にある、南イタリアで初めて三つ星を獲った40席ほどのリストランテです。

野菜やハーブは自家農園で作ったものを使い、チーズなどは昔から付き合いのある農家から取り寄せたものを使って伝統的な南イタリアの郷土料理を洗練されたスタイルで提供していていたお店でした。

夏にいっぱい獲れたトマトは水煮にしたり、乾燥させてスパイスにしたり。旬の時期に収穫した素材を色んな加工法で仕込んで、1年かけてずっと使い続けているんです。

自分たちで大切に育てた素材を使って、最上のものを提供する。今の「ヴィラ アイーダ」の原点のスタイルがあったお店なのですね。

villa aida(ヴィラ アイーダ)テーブルセット

■生まれ育ったまちに、本場イタリアの料理を味わえる店をオープン

日本に帰国後は、どのような歩みを?

小林氏:
まずはどこかのイタリアンで働こうと、知人の紹介で話を聞いてみたり、求人で探したりしたのですが、どれもピンとくる店がなかったんです。それでもう自分でお店を始めようと思って和歌山に戻ったんです。幸い実家が兼業農家でしたので、畑の一部をつぶして店を構えることにしました。それが今の場所です。

1月に帰国したのですが、8月には着工して12月にはオープン。両親が賛成してくれたのも大きいですが、かなりスピーディな立ち上げでしたね。

25歳で独立というのも、なかなか勇気のいるご決断だったと思います。オープン後の反響は?

小林氏:
はじめの3年は順調でした。田舎なので、新店ができたら地元の方たちも、「1回は行ってみようか」となりますから。ただ、3年ほど経った頃に客足がパタッと止まったのです。当初は、イタリアから輸入した食材を使って、星付きレストランで学んだ料理を出していたのですが、最初は物珍しさから来てくれたお客さんも、徐々に足が遠のいていくのが分かりました。

やはり土地柄的に、ディナーに5000円以上をかけるのは、受け入れてもらいにくいのもあったと思います。そして何より本場のイタリア料理へのなじみのなさが大きかったですね。エスプレッソを出すと、「量が少ない」「濃い」と。パンもハード系ではなく、柔らかくて甘いバターロールが好まれるわけです。

本場のものを提供して勝負するのが、なかなか厳しかったのですね。その問題は、どのように打開していったのですか?

小林氏:
資金的な問題もあって、イタリアから食材を仕入れるのがしんどくなってきて…そこで初めて、地元産のトマトやキュウリに目を向けるようになったんです。

その時、イタリアの修業時代のシェフたちが、地元の食材にこだわっていた意味がやっと頭の中でつながったのです。同時に、「ああ、今まで自分は何をしていたんだろう」と目が覚めた思いでした。

自分の思い描いた店ができる嬉しさのあまり、技巧に寄った派手な料理ばかり突き詰めていました。よくよく思い返せば、イタリアで修業したお店はすべてが郊外にある店でしたが、どの店も車で1時間以上かけてお客さまがわざわざ足を運んでいました。それは、その地ならではの食材を生かした、そこでしか味わえない料理があるからだったのです。

villa aida(ヴィラ アイーダ)メニュー

villa aida(ヴィラ アイーダ)外観

villa aida(ヴィラ アイーダ)

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