よい料理人になるには、よい指導者のもとで質の高い修業をすること。そして、たくさん学び、たくさん味見すること

Restaurant Le Gabriel, La Réserve Paris(レストラン・ラ・レゼルヴ)
Jérôme Banctel(ジェローム・バンクテル)

Restaurant Le Gabriel, La Réserve Paris(レストラン・ラ・レゼルヴ)内観

■仕事の完成度を追求し続ければ、成功は向こうから来る。

料理人として成功するために大切なことは何ですか。

バンクテル氏:
まず前提として、料理とは、喜び、分かち合いの仕事です。皿に料理を盛りつけて差し出すのは喜ばしいことです。私は心を皿に乗せて差し出しています。情熱を持って、素晴らしい食材を探し、色彩豊かに美しく盛りつけ、火入れと味が完璧であるように仕上げること。

そのために、良い修業を積み、毎日一生懸命仕事に取り組み、チャンスや、良い出会いに恵まれること。成功するために必要なことはたくさんあります。

フランスの名も知れないところにも、才能のある料理人はたくさんいます。刺激し合い、発信し、チームに完璧さを求め、仕事の完成度を追求し続ければ、成功は向こうから来るものです。

しかし、若い人たちは全部を今すぐ手に入れたがるので、これらのメッセージを伝えるのに苦労します。

いきなり三つ星に行って何もかも得られると思わないこと。入ってすぐに、新作を自分が創作したい、もっといいポストに就きたいと要求し、通らないと怒る人がいますが、グランレストランに入る前に2つくらいメゾンで働き、十分力をつけることが必要です。

疲れていたり、不満のある若いスタッフがいたらどうしますか。

バンクテル氏:
「休むとしたら、ずっと後、定年退職のときだね」と言います(笑)。

今は働かなければなりません。たくさんたくさん。私は長時間は寝ません。それでも朝起きたときはいつもワクワクした気持ちで職場に来ます。

若いと学ぶべきことがたくさんあり大変ですが、乗り越えていけると信じること。仕事はいつかは成就します。なので、疲れていても、「大丈夫、大丈夫、よし行こう」と思うことです。

私もかつてはそうでした。辛いなと思う日はありました。けれど、気を抜いてはいけません。難しいときもあって当然です、一番下から始めて一番上を目指すのですから。

毎日早起きすることも、同僚との関係も、長時間働くことも大変ですし、うまくいくよう心を払ってもうまくいかないこともあります。それでもまた次の日に来て続けることです。諦めないこと、続けることです。いつかは「よかった」という日がくるのです。

私は日本に行き、寿司の修業を見て驚きました。キッチンで7年間働いていても寿司には触れないんです。私はいつもこの例を引用します。なぜかと言うと、若いスタッフは来てすぐに「自分の料理」を作りたがるからです。

自分の料理を創作する前に、ちゃんと料理できるようになることです。ソースが作れること、味付けできること、それができた上での自分の創作です。美しい盛り付けができても、それを調理するのが違う人だったら意味がありません。

肉の火入れがちゃんとできて、ソースを美味しく仕上げることができたなら、あとは皿に盛るだけです。1つ1つの段階をしっかり踏んで、付け合わせも火入れも、肉も魚もできて、前菜もできて、一通り修業を済ませて初めて「料理ができる」と言えることになります。若い料理人が全部をできるだけ早く終えようとしてしまうことが残念です。急ぎすぎる人は修業の機会を失っています。

Jérôme Banctel Restaurant Le Gabriel, La Réserve Paris(レストラン・ラ・レゼルヴ)

■日々の仕事を通して、常に前進できるよう努力する

働く店を決めるうえで大切なことは何でしょうか。

バンクテル氏:
それぞれの料理人にとってぴったりの場所を探すことです。それらを探すことも、シェフの仕事の中に含まれています。ぴったり合わないところで働き続けて、怒って料理を辞めるのはもったいないことです。

私と働きたいと言ってくれる料理人も、私がしたいことと、彼がしたいことの間でズレがあれば、私か彼のどちらかが不満を持つことになります。なので、彼のしたいことに合っていて、彼が力を十分発揮できるレストランのシェフに連絡し、彼を紹介します。

とても優秀な料理人が是非私について来たいと言ってくれたのですが、彼はダイナミックなので、5人でしているような私のキッチンには合わないと思いました。なので、向かいの「ローラン(Laurent)」のシェフに連絡をしたのです。うちはたったの34席ですが、「ローラン」はもっと大人数で動きがあり、彼はとても気に入って、今では副料理長にまでなりました。

ぴったりマッチする場所が誰にでもあります。そういうところを選んで働くことが大切です。

料理のインスピレーションは、やはり食べ歩きなどから得るのでしょうか。

バンクテル氏:
いいえ、他の人の料理を見ると自分のスタイルに影響が出るので、好ましくないことです。雑誌や他のレストランよりも、人との会話や旅から学ぶものの方が多いです。例えば、日本との出会いは私のスタイルを築くのにとても大きな影響を与えました。

どこに行っても学ぶものはあります。他の料理人と話すこと、食材を見ること、キッチンでたくさん試作をすること。そして自分のシニアチュールを築き、自分のスタイルを維持することが大切です。ここは三つ星二つ星が集中しているエリアですが、その中で自分のアイデンティティーを維持しなければなりません。

新作ができたときには、やはりうれしい気持ちになりますか。

バンクテル氏:
まだ嬉しく思ったことはありません。でも、次の作品で嬉しい気持ちになるかも(笑)

自分の料理が完成したと感じることはありません。変えていくことが好きなのです。アーティチョークも鳩もホタテもオマールも美しい一皿だと思っています。全てを美しい一皿に仕上げたい。メニューに載ってる料理全てが最高のものであるようにしていきたい。

今のところは、まだもっと伸びしろのある料理があります。簡単なことではありません。たくさん働いて、たくさん考えて、たくさんの食材に出会って。料理というのはその時々の瞬間が大事です。

アイデアが浮かび、試作を重ね、話し合い、それを実現していきます。日々の仕事を通して、常に前進していけるよう努力するのです。

Restaurant Le Gabriel, La Réserve Paris(レストラン・ラ・レゼルヴ)外観

Restaurant Le Gabriel, La Réserve Paris(レストラン・ラ・レゼルヴ)

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