よい料理人になるには、よい指導者のもとで質の高い修業をすること。そして、たくさん学び、たくさん味見すること

Restaurant Le Gabriel, La Réserve Paris(レストラン・ラ・レゼルヴ)
Jérôme Banctel(ジェローム・バンクテル)

Jérôme Banctel Restaurant Le Gabriel, La Réserve Paris(レストラン・ラ・レゼルヴ)

■オープンからわずか1か月で星を獲得した名店の、努力と戦略

「Restaurant Le Gabriel」をオープンしたときのことを教えてください。

バンクテル氏:
私はこれまでいつも誰か他のシェフのためにメニューを作っていました。ここでは自分のために作るのです。素晴らしい挑戦です。良い結果だったら私が評価されますが、良くない結果だったとしても私の評価になるのです。これまでの働き方とは全く違います。

私はオープンしてすぐに二つ星が欲しいと考えていました。期間を決めて取り組んだのはその時だけです。ミシュランには、オープンしたらすぐに、ここで何がしたいのかを見せる必要があるからです。「まずしばらく様子を見て」などというスタンスではダメです。

オープン前も話し合いに話し合いを重ねて、自分たちの料理を創り上げました。したい料理を実現できるよう、入念に準備しました。2015年1月19日にオープンしたときには既に準備は整っていましたし、メニューも何度も何度も改良を重ねてました。当時は夜もここで寝ていました。

「サンドランス」の新しいレシピを創作していたのは全て私ですが、それでも「サンドランス」で出した料理はこの店では1つも出しませんでした。場所が変わるのだから、料理も変えようとスタッフに言いました。全てここで生まれた料理です。

オープンして1か月弱という早さで二つ星を獲得した時、どんなお気持ちでしたか。

バンクテル氏:
ほっとしました。

スーシェフのフレデリックは7年、もう1人の女性は私と8年半一緒に働いています。彼らのおかげで二つ星をとることができたのです。私1人ではとてもとることはできませんでした。

ある雑誌に、「パリのガストロノミーの未来を築くシェフ」と紹介されていましたが、どのような点が評価されていると思いますか。

バンクテル氏:
私は他のシェフの店が高い質を維持できるよう、長い間、他のシェフの下で働いてきました。そこで良い修業をすることができたわけです。これまで学んできたものを土台に私のスタイルを表現しています。その点が評価されたのではないかと思いますね。長い間シェフのために働いて得た力で、これだけのことができるということを見せたいと思っています。

Jérôme Banctel Restaurant Le Gabriel, La Réserve Paris(レストラン・ラ・レゼルヴ)

■自身のキャリアから生み出された、独自の料理スタイル

バンクテル氏の料理スタイルはどのようなものですか。

バンクテル氏:
私のスタイルはクラシックが土台です。さらに厳選した食材、テクニック、そして日本のエッセンスが私の料理のアイデンティティーを形成しています。

15年前までは郷土の味も取り入れていましたが、今はパリ8区の、インターナショナルな雰囲気に合った料理を作っています。

クラシック、つまり味に重きを置いた料理と、今の時代の感覚。今の料理スタイルは自分のキャリアから形成されたものです。それに私のパーソナリティー、私の好みが特に反映されています。

日本旅行も私の料理スタイルを変えるきっかけになりましたし、料理スタイルとはチームでの日々の仕事の中で生まれるものでもあります。例えばアーティチョークはキャベツに合わせて、バリグール風に。日本のエッセンスとして、ラングスティーヌに桜の塩漬けのジュレとコリアンダーを合わせます。

サーモンの西京味噌漬けは京都の「美山荘」で学んだテクニックです。ラー油や焼き茄子も使いますし、鳩は味噌漬けにしてそばの実と合わせます。日本料理はしません、あくまで土台はフランスのクラシックです。

バンクテル氏は日本がお好きなんですね。

バンクテル氏:
好きです。私はずっと日本に行くことが夢だったのです。初めて行ったとき、3週間滞在して、帰るなり妻に「日本に引越ししよう!」と言いました。妻は「いいけど、まず行ってみてから」と言うので、翌年一緒に行きました。しかし、文化や生活習慣の違いから住むことはできないと妻に反対されました。

残念ながら住むことはできませんでしたが、年2回日本に行って、フランスの食材を日本で紹介したりしてきました。海外の食材が好きなのではなく、日本が好きです。どこに行っても美味しいものが食べられます。魚市場に行ったり、漬け物の漬け方を学んだり、桜の酢漬け、トンブリ、黒ニンニク、柚子コショウ、柚子、和からし、カレースパイス。ここのホテルに来てから2年間行っていないので、4月に久しぶりに行くので、新しいインスピレーションに出会うのが楽しみです。

特に美山荘のシェフとは、「サンドランス」にいた7年前から一緒に仕事する機会があり、この店に来てもらったこともありました。出汁のひきかたを初めて教えてくれたのも美山荘のシェフです。

Jérôme Banctel Restaurant Le Gabriel, La Réserve Paris(レストラン・ラ・レゼルヴ)

■日々の仕事を大切に、良い指導者の下で質の高い修業を積むこと。

良い料理人になるのに大切なことはどんなことですか。

バンクテル氏:
日々の仕事ですね。毎日の仕事は一番大事です。そして良い出会いも大切です。私はミッシェル・ケレヴァー、ベルナール・パコ、アラン・サンドランスなどの良い指導者や、そして私のことを信頼してくれたここのオーナーに恵まれました。けれど、それだけではなくて、良い指導者のもとで日々どのような姿勢で働くかが大事です。私はいつもたくさん働きましたし、それぞれのメゾンとシェフに敬意を払ってきました。たくさん学び、たくさん味見すること、そして良いチームも必要です。

若い料理人に向けたアドバイスは何かありますか?

バンクテル氏:
そうですね、若い料理人に伝えるとしたら、質のいい修業をしなさいということです。

たくさんのメゾンを経験する必要はありません。私は1つのメゾンに10年間いましたが、10年いろとは言いません、けれど5年はじっくり学ぶこと。

履歴書に職歴を1年、9ヶ月、6ヶ月と並べることに価値はありません。そんな短期間では、本当に学ぶべきことは学ぶことができません。自分の目指す道に通じている良いメゾンを見つけること、自分が気持ちよく仕事できる指導者を選ぶこと。「デュカスで働いている」と言っても、何の意味もありません。自分がどう成長したいかが重要です。

バンクテル氏が師の仕事から学んだことは何ですか。

バンクテル氏:
彼らが教えてくれたことは、完璧な仕事がしたい、しっかり味見したい、求めている形そのものを実現したい、と思わせてくれたことです。

ベルナール・パコはいつもキッチンにいました。私は25才で彼のもとに来ましたが、彼を前にすると、まるで自分がまだ何一つできないかのような感じがしました。彼のお陰で、私は真剣に仕事し、成長することができたのです。メゾンを卒業して、初めて私は自分の成長を実感できました。

「サンドランス」に来たときも、これまでと全く違う環境で、一生懸命取り組みました。食事とワインの融合がテーマだったので、たくさん味見しました。グラン・シェフのサンドランスは誰よりも味覚の鋭い人です。彼は味見すると、何を足したらより良くなるかすぐにわかります。素晴らしい実力の持ち主です。

2人のグラン・シェフのおかげで、私は自分のスタイルを築くことができ、今では私は自分がしたいことが明確にわかります。全て彼らのおかげです。

Restaurant Le Gabriel, La Réserve Paris(レストラン・ラ・レゼルヴ)外観

Restaurant Le Gabriel, La Réserve Paris(レストラン・ラ・レゼルヴ)

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+33 1 58 36 60 60
アクセス
42 avenue Gabriel 75008 Paris FRANCE
Franklin Roosevelt駅
Champs-Elysées-Clémenceau駅(メトロ1番線)
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12:00-14:30
19:00-22:30
土曜のみ 19:00-22:30
定休日
なし